消費者と企業の間に横たわる深い溝。そして、それを乗り越える方法
私達が新商品やサービスを開発する時、おそらく、誰もが強く想うことがあります。
「お客さんは、きっと分る」
お客さんは、この新商品のよさがきっと分ってくれる。
そして、この商品は、お客さんに愛されるだろう。
自分が関わる商品に思い入れをもつ自体は、極めて健全ですし、大切なことだと想います。
そして、ともすると、想いはこのように続きます。
商品企画段階では: 世に出せば、きっと分る
初期の販売苦戦段階では: 使えば、きっと分る
ユーザーからクレイムを受けた段階では: 使い込めば、きっと分る
........
商品が売れず撤退する段階では: 実は分っていなかったということが、そのうちきっと分る
(....最後は半分冗談です)
共通するのは、"We are only one"、つまり「我々は唯一の存在である」という信念であり、想いです。
私も新商品の企画や立上げに長年関わってきましたし、プリセールスで色々なお客様に価値を説明して回ったので、同じ信念を持ってやってきました。
しかし、顧客の立場からすると、全く違う様相が見えてきます。
それは、消費者でもある私達が、世の中に氾濫する様々な商品に対して取る行動を考えると、わかると思います。
ともすると、以下のように思うことはありませんでしょうか?
何がいいの?どこがいいの?
みな同じじゃん
欲しいものは、特にないし
共通するのは、世の中に氾濫する商品に対して、"You are one of many"、つまり「選択肢は、他にも沢山ある」という醒めた視線です。
例えば、1年間に、日本国内で新発売される清涼飲料水。
何種類あると思いますか?
実に、2,000種類以上あります。
それぞれの商品は、それこそMBAを出てマーケティングを究めたプロフェッショナルが、ユーザーインタビューや市場調査などを駆使して企画して、世の中に出しています。
しかし、私達が思い出せる清涼飲料水は何種類くらいあるでしょうか?
恐らく十数種類程度なのではないかと思います。
消費者から見ると、選択肢は非常に沢山あるのです。
興味深いのは、同じ人間が、ある時は企業側の立場にいて、ある時は消費者の立場にいて、全く違う思考方法をしがちであることです。
このようなことを考えてみると、顧客の立場に立つ難しさと同時に、顧客の立場に立つための心得が、少しわかってくるような気がします。