プロジェクトK統括の方から、「霞ヶ関維新」の話を伺う
昨晩、「真の戦略国家を構築する『霞ヶ関維新』の断行」という講演に参加しました。
これは、私が同窓会役員を務めている多摩大学大学院同窓会が主催する「セカンドステージ大学院」企画による講演会です。
プロジェクトKとは、現在の中央官庁の構造的欠陥に危機感を持ち、その改革を目指す20-30代の若手公務員を中心とする集まりです。2003年に結成、様々な活動を続けています。
その最新の活動と提言は、「霞ヶ関維新」(英治出版)という本にまとまっています。
講演されたのは、現在、内閣官房知的財産戦略推進事務局・参事官補佐で、NPO法人プロジェクトK統括も担当されておられる遠藤洋路さんでした。遠藤さんご自身34歳、1997年文部省(当時)入省の若手官僚です。
オフレコ的発言も多かったので、ここで全てをご紹介することはできませんが、中央官庁の方が、ご自身の問題を謙虚に見つめられ、損得勘定を棚上げして、国としてのあるべき姿を真摯に考えておられることがよく分かりました。
プロジェクトKは活動を始めて6年間、様々なことを提言してきました。
提言当初は「これは実現無理では?」と思われたことも、今年8月30日の総選挙で民主党が大勝し政権を取った結果、実現しつつあることも多いことが改めて分かりました。
その一つが、「政務3役」による予算承認です。
従来の予算は、官僚が直接大臣に説明し、大臣がそのまま了承する、という形でした。
しかし、大臣は様々な業務も抱えているため、予算案に書かれた様々な内容まで把握できませんでした。このため、ほぼ官僚の言い分が通っていました。
民主党になり、大臣、副大臣、政務官の「政務三役」が予算を検討する形になりました。(三役とも与党政治家の担当です)
具体的には、官僚はまず政務官に予算案を説明し、政務官がそれを大臣・副大臣と協議して決定する、というプロセスになります。言い換えると、官僚は大臣に予算を説明する機会がなくなり、意志決定に関われない状態になりました。
ある例では、政務三役から、「予算維持、昨年比5%減、昨年比10%減の3つの案を提示するように」と官僚に指示が出され、3つの案を提示した結果、10%減の予算が省庁案となった例が紹介されました。
従来の官僚主導では、昨年度予算に上積が基本だったので、これは大きな変化です。
プロジェクトKで提案してきた統合戦略本部の考え方も、菅直人さんが責任者を務める国家戦略局で一部ではありますが実現しています。
また、今まで知りませんでしたが、国家公務員は各省庁での採用であり、日本国の採用ではなかったのですね。いわば、例えば文部科学省という株式会社で採用されたようなものです。確かにこれでは、「国家利益を考えるべき」という理想を掲げながらも、省庁利益を優先してしまいがちになるのもやむを得ないかもしれません。
この部分の人事制度刷新も、メスを入れるべき部分としてプロジェクトKで提案され検討中です。
このような改革、まだ始まったばかりです。初めての試みですので、試行錯誤もあるでしょう。例えば政務三役による予算承認も、手間と時間がかかってなかなか進まないのが実態とのことです。
しかし、目先の結果に目を奪われ、「ほら、やっぱりダメだったじゃないか?」と言って止めることがないように、試行錯誤を繰り返し、PDCAを回して継続して改善を続けていっていただきたいと願っています。
また、中央官庁にも、このような気概を持った方々がいると知り、うれしく感じるとともに、私達国民も文句を言うだけではなく主体的に何をなすべきなのだろうか、と考えさせられました。