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田坂広志講演「目に見えない資本主義」

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昨晩、東京駅近くの丸善本店で行われた、田坂広志先生の講演に参加しました。

この講演は、田坂先生の最新著「目に見えない資本主義」の出版記念講演会です。

講演と本の内容は非常に奥深く、私の文章力では十分に伝えきれませんが、あえてまとめてみます。

 

世界経済危機のまっただ中にある2009年1月に行われたダボス会議に、Global Agenda Councilのメンバーとして田坂先生は参加されていました。

そして、世界最高の知性を持つ賢人たちが議論をしている様子から、話が始まります。

「これからの資本主義に何が起こるのか?」

田坂先生が内心期待していた議論は聞かれませんでした。

しかし、ある宗教家が語った次の言葉、

----(以下、引用)----

毎朝、テレビをつけると、CNNのニュースが流れ、誰もが、こう語っている。
「この危機は、いつ終わるのか?」と。
しかし、私は、これは問いの立て方が間違っていると思う。
我々が問うべきは、別な問いではないか。
「この危機は、我々を、どう変えるのか」
その問いをこそ問うべきであろう。
この危機は、いずれ終わる。
しかし、この危機が終わったとき、もし我々が何も変わらないのであれば、
この危機の中で、多くの人々が味わった苦しみは、
すべてが無駄であったということになる。

----(以上、引用)----

本には書いていませんが、この発言に対して聴衆は万雷の拍手だったそうです。

この危機が、我々をどう変えるか、我々はどう変わるべきか。

この先にあるのは、従来型の資本主義ではなく、進化した資本主義であり、下記の5つのパラダイム転換が起こります。

・「操作主義経済」から「複雑系経済」へ
・「知識経済」から「共感経済」へ
・「貨幣経済」から「自発経済」へ
・「享受型経済」から「参加型経済」へ
・「無限成長経済」から「離宮環境経済」へ

そして、この5つのパラダイム転換の結果、生まれる価値観は、かつて日本型資本主義と日本型経営が大切にしてきた懐かしい価値観に他ならない、としています。

「なるほど、私達がまさに今、経験しているのは、そういうことだったのか」とよく分かりました。

特に、『「享受型経済」から「参加型経済」へ』について、先生は次のように説明されました。

・参加型経済は、資本主義のあり方や社会のあり方を根本から変える。
・それはイノベーションのパラダイム変換が起こるからだ。
・なぜイノベーションのパラダイム変換が重要かというと、それは人々の幸福観に関わるからだ。
・人々が幸福観を感じるのは、完全な社会や理想の社会だからではない。
・社会変革に参加することの意味を感じ取るからだ。(オバマのメッセージのように)


 

ここで私は、ごく最近自分に起こった、とても幸福を感じた二つの体験を思い起こしました。

 

一つ目は、先週金曜日のブロガー会議です。

先週のブロガー会議では、IT業界で全く立場が異なるオルタナティブ・ブロガー10名が集まりました。

そして、ITの将来がクラウドでどのように変わるのか、そして変えていくべきなのか、それぞれが知識と知恵を出しながら、徹底的に議論しました。そして、懇親会では旧知の友のように語り合いました。

酒がほどよく入った、終電間近な帰りの電車。

何故か今までにない不思議な高揚感と幸福感を感じました。

 

そして二つ目は、その翌日と翌々日の土日。

週末の二日間、私が事務局長を担当している合唱団で、朝から晩まで夏季強化練習を行いました。

合唱が大好きな人達がインターネットを介して集まった、年齢・職業・立場が全く異なる50名の団員からなる団体です。

合計練習時間は二日間で15時間を超えたでしょうか?しかし10月の紀尾井ホールでの公演を控え、この15時間は、私達にとってかけがえのない時間でもありました。

打上げでは、あれだけ歌を練習した後なのに、皆でまた歌いました。

「みんな、合唱が本当に好きなのだ」
「4年前に合唱団を立ち上げ、ここまでやってきてよかった」

涙が出そうになりました。

帰りの電車では、再び金曜日に感じた高揚感と幸福感を感じました。

 

「この感覚は何なのだろう?」

幸福な週末が明け、一人で考え続けていた一つの回答を、田坂先生のご講演でいただいたような気がしました。

実はこれらは、自分達一人一人が主体的に参加している、とても小さな社会変革だったのかもしれません。

 

講演終了後、いつものサイン会があり、田坂先生と握手させていただきました。田坂先生の手はとても柔らかく、温かく感じました。

握手一つでも、人柄が出るのだ、ということがよく分かりました。

とても元気をいただいた、素晴らしい講演会でした。

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