「裸足の国でいかに靴を売るか?」を考えると、新製品販売で陥ってしまう罠が見える
よく言われることですが、住民が全て裸足で歩いている国を見てどう考えるか、という話があります。
「ダメダメ、この国では靴の潜在需要が全くない。ニーズがないんだから」と考えるか、
あるいは、
「この国ではもの凄い需要がある。だって誰も靴を履いていないんだから」と考えるか、
この違いは、もの凄く大きいのです。
現状肯定の人は前者の発想を、創造的なマーケティング志向の人は後者の発想をします。
そして、オバマ次期大統領が"Yes, we can"と言っているように、世の中のパラダイムが大きく変わっている現代、私達には後者の発想が求められています。
ここで、私達が注意すべきことがあります。
「それでは、裸足の国でいかに靴を売るのか」ということです。
そもそも「靴」という概念がない国で、
「この靴は100%完全防水、全くムレません。デザインも秀逸です。あなたにお似合いですよ」
と言っても、恐らくほとんどのお客様の反応は「?????」という感じで、ほとんど売れないのではないでしょうか?
なぜなら、お客様の頭に「靴」という概念がないために、そもそも靴を履かなければならない必然性を感じていないからです。
どうすべきでしょうか?
例えば、次のように言うと、どうでしょう?
「あなた、いつも裸足ですよね。ほら、あなたの右足、石ころを踏んで怪我をしていますよね。痛いでしょう?遠い道を歩くのに時間もかかりますよね。実は靴を履くと、道端の石ころやゴミで足を怪我することもありません。とても歩きやすくなるので、遠い道でも全く疲れないんですよ」
この言い方は、裸足の国におけるお客様にとっての「靴」という利便性(「ベネフィット」と言われることもあります)を説明したものです。
裸足の国では、前者のアプローチは「製品志向型販売(プロダクト・セリング)」、後者のアプローチは「価値訴求型販売(バリュー・セリング)」です。
面白いのは、靴が既に日常品になっている国では、前者のアプローチは「価値訴求型販売(バリュー・セリング)」になり得るということです。
つまり、「製品志向型販売(プロダクト・セリング)」か、「価値訴求型販売(バリュー・セリング)」かは、販売形態そのもので決定されるのではなく、その市場のお客様が決定する、ということです。
「価値」というのはお客様が決める訳ですから、考えてみるとこれは当然のことです。
よくグローバル企業で陥りがちなのは、他の地域で成功した製品をそのまま持ってきて「価値訴求型販売(バリュー・セリング)」をやっているつもりでも、市場の実態と乖離していて、実は「製品志向型販売(プロダクト・セリング)」になってしまっている、という点です。
この罠を避けるためには、どうすればよいのでしょうか?
改めて言うまでもありませんが、まず市場のお客様の課題を理解すること。
そして、その課題に対する自社の価値を考え、その価値をご提供し、メッセージとしてお伝えすることです。
この逆の順番で、自社の価値を考えてからお客様の課題を考え、その課題に対してセリングをかけるアプローチは、たいていの場合、失敗します。
そしてこれは、グローバル企業に関わらず、全ての企業が陥る罠でもあります。
肝に銘じておきたいことですね。