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田坂広志さんの最新仕事論

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労働法制の大改革で、「ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外制度)」を巡る議論が起こっています。

これに対して、NBonline『2007年を斬る:「働く」って何だっけ?』で、田坂広志さんのインタビューが掲載されています。

現在、平行線になっている議論に一石を投じる内容でしたので、一部引用させていただきます。(尚、一部の言い回しを省略しています。詳細はリンク先を参照ください)

--(以下、引用)---

表層的な傾向で言えば、欧米の「報酬観」というのは、2つの報酬、「給料や年収=ペイ、インカム」「役職や地位=プロモーション、ポジション」を軸にとらえている。

日本人の報酬観はどうかと言うと、これら以外の目に見えない「4つの報酬」を重視している。第1に「働きがいのある仕事」。第2に「職業人としての能力」。第3が「人間としての成長」。第4が「良き仲間との出会い」。

日本人は元々お金をもらえるから頑張るという文化ではなかったが、無理やりに「報酬はお金だ」と叫んでいる。ところが実際にはそれほどお金をもらえず中途半端なまま。気がつくと今まで自分たちを鼓舞していた日本的な労働の価値観を希薄化させた。 今までメーカーの現場などでは「カネのためにやってるんじゃないんだ」「俺はこの製品に命を懸けているんだ」と誇らしく言っていた社員が、成果主義が導入され、「こんなに安い給料でこき使われたんじゃ、やってられない」と言い出すという具合に、意識のスイッチングが起こった。

「プロフェッショナリズム」の復活をきちっとやらなければならない。自分の商品価値を上げるために腕を磨く、という欧米的な労働観の間違った解釈としてのプロフェッショナリズムではない。近江商人の心得「売り手よし、買い手よし、世間よし、三方よし」や、住友家訓の「浮利を追わず」等、お客様の笑顔を見るために努力するとか、すごいプロフェッショナリズムがあった。これを復活させることを同時にやらないと、非常に危うい状態に向かってしまう。

また、これから徒弟制が復活する。例えばファストフード店などでは、マニュアル化が徹底された結果、経験が少ない若手でも組織の中で即戦力になるんだという意識が社会的に強まり、若手は自信をつけ、多くの企業で、「若手をもっと活用しよう」「若手のやる気を引き出せ」ということが叫ばれるようになった。 知識を身につけているなんてことは当たり前になったので、現在はマニュアル化では競争にならない。どうなるか。例えば、気持ちよく挨拶するといったマインドサービスができるかみたいな方に向かっている。単なる知識を超えて、深い知恵とか言葉にすることが難しい間合いとか、経験を積むことでしか得られない何かの方に戻ってきた。

これがメンターとかコーチングが流行る背景。間もなく「師匠」という言葉が復活し、洗練された徒弟制が復活すると思う。若手にすれば、少しぐらい知識を身につけただけでは全然プロとして活躍できないと感じる時代になり、年輩から見れば若手を管理するのではなく、師匠として本当に高度な知恵を伝承できるかがマネジャーやリーダーとしての資質になる。

お金という報酬はゼロサムゲーム。働きがいとか、腕を磨くとかいうことはプラスサム。報酬観を深いところでとらえ直すと全く違う世界が見えてくるはず。

私が「働く論」をずっとやっている理由は、我々は素晴らしいことをやっているんだという感覚をもっとしっかり持つべきだと思うから。だから、「甘えるな」というのではなくて、私は「ご自身がやっているお仕事に、もっと誇りと自信を持たれたらどうですか」と言いたいのです。

--(以上、引用)---

かなり長文の引用になりました。

田坂さんの快著「仕事の思想」のエッセンスが、さらに最新の話題も取り込んで詰まっているインタビューです。

最近、改めて働く意味を考えて始めた方は、是非この記事のご一読をお勧めします。

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