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ビジネスの現場で実践できるマーケティングと経営戦略をお伝えしていきます。

思い込みによるマーケティングは怖い

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皆さん、「シニア・マーケティング」と聞いて、最初にどのように感じますか?

「お金と暇はありそう」
「介護関係のこと?」
「団塊世代だよね?」
「とりあえず字だけは大きくしておこうか」
「でも、実際は儲からないでしょ」

恥ずかしながら、私はこんな感じでした。皆様はいかがでしょうか?

昨日、株式会社シニアコミュニケーションの山崎社長の講演を伺いました。マーケティングの話として非常に勉強になりましたので、ちょっと長くなりますがご紹介します。

株式会社シニアコミュニケーション「シニアのことが世界で最もわかる会社」を目指して2000年5月に設立され、2005年12月にマザーズに上場した会社です。

1000社以上のクライアント企業へのシニア・マーケティングに関するサポートやコンサルティング、共同開発、投資などをビジネスとしています。

シニア・マーケットに対する市場調査を行う一方で、市場調査の限界も熟知しています。たとえば、市場調査では全体の方向感は分かりますが、細かい方向付けは指し示してくれません。実は、ビジネスではその細かい方向付けが大切な点です。この辺り、全く同感です。

そのため、シニアに直接アクセスできるように、シニアを対象としたメディアを作りました。例えば30万部でカラー印刷したフリーペーパーで、アルバイトを活用して百貨店等で50代以上に配布したそうです。このような様々なメディアを展開することで、シニアの実像を把握し、実践的なサポート力を付けています。

山崎社長のお話を聞いて痛感したのは、現実と数字を十分に理解した上でマーケティングを行う重要性さと、思い込みによるマーケティングの怖さです。

実際、冒頭に挙げたような先入観でシニア市場に商品やサービスをマーケティングし、うまくいっていないケースも多いようです。

いくつか例を挙げてご紹介します。

■■「倍化年数」という数字があります。総人口に対する65歳以上の高齢化率が7%から14%に上昇するのに要した時間で、高齢化社会に進むスピードの指標です。

米国の場合は、これは71年(1942→2013年)です。
これに対し、日本はわずか24年(1970年→1994年)でした。

世界の中で、まさに日本は高齢化社会の先頭を走っており、世界も日本に注目しています。

まさに先日のエントリーにもある「課題先進国日本」ですね。

ちなみに、韓国の倍化年数は20年(2000年→2020年)です。最近になって出生率が急激に低下している韓国では、日本を上回るペースで急激に追いかけています。実際、シニアコミュニケーションでも、韓国に現地法人を作ったところ引き合いが多いそうです。一人っ子政策を行った中国も、急な勢いで日本を追いかけてきます。

■■日本では2003年1月時点で成人人口の半数が50歳以上になりました。2025年には全人口の半数が50歳以上になります。

実は消費構造がガラっと変わるのが50代です。子供の独立、定年、趣味を始める、などが契機になります。

たとえば、肉を買うケースを考えてみると、
30代では、「うちの子供達はいっぱい食べるから、安い肉を沢山買おう」
50代では、「我々夫婦はあまり食べられないから、少なくてもいい肉を買おう」

となります。昔はこの30代的な伝統的家族が過半数でしたが、現代は少数派になっていますし、企業側も対応が必要になってきます。

■■60代のマーケットは「夫婦の距離感マーケット」とも言われ、「適度に距離を保とう」とします。これはリフォームで顕著に現れるそうです。

たとえば、なぜ夫婦別寝室なのか? 今まではリビングは妻のモノでした。定年後、夫がいつもリビングにいます。従って、妻として自分だけの居場所が欲しい。それが自分の寝室である、ということのようです。

夫が書斎を持つことに対して妻が寛容なのも、妻が自分の居場所を持ちたいという理由の裏返しのようです。(これは全体の傾向であり、夫婦別寝室は絶対駄目という夫婦ももちろんいます)

■■時間消費の意識:お金をかけても有意義にその時間を消費したい、ルーティンな家事などには時間は消費したくない、と考えます→これが自動皿洗い機がシニア世代に売れた大きな理由です

■■本物志向の意識:シニア世代は、「本当にそうだろうか」とまず疑ってかかります。たとえば、「これだけお金をかけているのだから高くなっているのだろう」と考え、マス広告には踊らされません。

これは、会社で50代後半の部長や役員等の諸先輩方を見ていると、よく分かりますね。確かにお客として考えると、一筋縄ではいかない人達ばかりです。

■■山崎社長によると、逆説的になりますが、『実は「シニア・マーケット」というものはない』とのこと。

これは「ヤング・マーケット」という概念が現代では役に立たないのと同様です。通常、我々が若者向き市場を考える場合は、「ヤング・マーケット」と一括りにするのではなく、市場をセグメント化して考えます。たとえば、アキバ系とか、サーファー系等です。

それがシニア・マーケットになった途端に、何故か「シニア」で一括りする傾向にあります。実はもっとセグメント化されている、というのが山崎社長の持論です。これは膨大な情報と経験に裏打ちされているからこそ言えることでもあると思います。

確かに、一筋縄で行かない人達が均質の市場を形成していることはありえないですね。

 

今回の話を伺って、改めてマーケットの現実を、生の声や数字で十分に理解してマーケティングを行う重要さ、理解しないで思い込みでマーケティングを行う怖さを実感した次第です。

ということで、最初の質問に戻りますが、シニア・マーケティングの第一印象、

「お金と暇はありそう」
「介護関係のこと?」
「団塊世代だよね?」
「とりあえず字だけは大きくしておこうか」
「でも、実際は儲からないでしょ」

約1時間の話を伺って私はだいぶ変わったのですが、皆様はいかがでしょうか?

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