歳末にあたり、市場の流動性とパターン化を考える
11月から徐々に盛り上がってきたクリスマスの雰囲気も、12月26日にはすっかりなくなり、大晦日になりました。
これが1月1日になると、歳末気分も一掃されて、新年祝賀の雰囲気になります。正月に見るテレビにも新しいCMが多く目に付き、新しい年を迎えたことを実感します。
12月24日から1月1日まで、わずか9日間で、世の中の雰囲気がこれだけ二転三転する訳で、考えてみるとすごいことですね。
これは日本独自なのでしょうか?
日本人は、過去のことをすっぱり忘れる気質ですが、これは地震や台風、火事等の災害に多く見舞われながら、過去のことを引きずらずに立ち上がるということを繰り返しながら身に付けた気質である、という説もあります。
日本人のこの切り替えの早さは、マーケティングの観点で見ると、非常に流動性が高い市場を形成しているとも言えます。
一方で、年末にこれだけ切り替えが早くできる理由は、そのパターンがある程度ルーチン化しているからではないでしょうか?
確かに、クリスマスの後にいきなりお盆がきて、その後正月になる、なんてことはありえません。
笑点の最後には必ず大喜利が来て、水戸黄門では8時36分に由美かおるの入浴シーンがある、というお約束パターンが定番として定着する市場でもあります。
従って、市場に定着するためには、ある程度のパターン化も必要になります。
実際、消費者もその定番パターンを楽しんでいます。
例えば、クリスマスはケーキとシャンパンで祝い、大晦日には年越し蕎麦を食べて、正月はお屠蘇をいただいて初詣に行く、といった感じです。
間違っても、クリスマスは寿司と日本酒で祝い、大晦日にはパスタで年越しし、正月は七面鳥を食べてアラーにお祈りする、ということにはなりません。
従って、流動性が高いから、と言って、いきなり新しいモノを訴求しても、受け入れられるかどうかは未知数です。この辺りが、日本市場の難しいところかもしれません。
ちなみに、日本市場でこの新しいパターンを作って成功した例が、バレンタイン・デーです。
モロゾフが1936年2月12日に「バレンタインデーにチョコレート」という広告を出したのが最初で、1958年2月にメリーチョコレートが新宿・伊勢丹のバレンタインセールでチョコを発売し、翌年「女性から男性へ」ということでハート型チョコを発売したのがきっかけで徐々に浸透していったようです。
これが世の中に定着したのが1970年代ですので、新しいパターンが定着するのには時間がかかるということですね。