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ネットは利他的だ。…少なくとも日本では

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ここ数年間、「ネットの本質は利他である」と考えています。

18世紀、アダム・スミスは「国富論」で「個々が自由に利己的な行動を行えば、マーケット・メカニズム(=『神の手』)により全体で調和が取れ、効率的な配分が実現する」とし、ここに市場システムの概念が登場しました。

一方、利他主義(altruism)という考え方は、19世紀にオーギュスト・コントが利己主義に対して作った言葉で、「他者の幸福や福利を考える行為が社会をうまく運ばせる」という考え方です。

言うまでもなく、ネット上では、オープンソースやニュースグループ、知識交換コミュニティに留まらず、様々な場面で利他的活動が起こっています。

欧米では、エリック・レイモンドが「伽藍とバザール」で述べているように、利他的活動の原動力は「名声である」との考え方が主流のようです。

社会学者のピーター・コロックは、これをさらに一歩進めて、「協調的オンラインコミュニティで必要なのは『対話の継続性』『自己同一性(Identity)の継続性』『過去の対話の知識』『貢献度を目に見えるようにすること』『グループの境界を明確にすること』であり、「将来お互いに会うこともなく、個人特定や過去の対話の記録がなければ、協調的オンラインコミュニティを創造し維持させるのは難しい」と述べています。

しかし、日本のネット上での利他的行動はちょっと違うような気がします。

例えば、何かとお騒がせな匿名掲示板「2ちゃんねる」では、全体ではなく一部のスレですが、利他的行動が発生しています。

数年前に2ちゃんねるのパソコン初心者サポート掲示板の実際の書込みをサンプルにして統計を取ったことがあるのですが、質問者と比較すると、回答者はハンドルを付けないで回答する傾向が極めて強いことが分かりました。(有意水準1%)

コロックは「互恵利益の期待が協調的オンラインコミュニティの成立条件である」としていますが、2ちゃんねるのような匿名掲示板では将来の互恵利益は期待できません。ディシやレッパーが示したような内発的動機づけにより利他的行動が起っている、と言えそうです。

実は海外では、2ちゃんねるのような巨大な匿名掲示板は存在しないようです。

匿名コミュニティがこのような巨大な規模に成長するために必要となる「利他的行動」自体が、日本以外では成立し得ない、ということでしょうか?

もしかしたら、2ちゃんねるのような巨大匿名掲示板の存在自体、ネット社会における日本の持つ素晴らしい可能性を示しているのかもしれません。(但し、2ちゃんねる上での誹謗中傷や犯罪的行為は、許すべきものではありませんが)

海外のマーケティング戦略や手法をそのまま日本に持ってきてもなかなかシックリいかない多くの原因の一つは、例えばこのようなところに隠されているように思います。

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