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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

AIIBーうまく協力は出来ないのか?

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中国を中心としたアジア投資銀行構想について、覚書の調印が行われたようだ。日本のマスコミは、アジア開発銀行との競合とか、中国の支配などという論調で警戒感を示している。

もちろん、そういう意図がないはずはないと思うが、何でも批判的に捉えるのではなく、うまく協力する方向を考えてみる必要性もあると考える。その点、政府やアジア開発銀行の関係者が冷静なコメントをしているのは、逆に評価できる。

ただ、気になるのは、新聞記事では分からないが、中国は韓国や豪州には参加を要請したようだが、日本に要請したかどうか定かでない点だ。もし本気で金融システムに変革をと思っているのであれば、バブルの崩壊などを経験したわが国の協力も仰ぐべきではないかと思う。

良く、中国を称して国家資本主義と形容し、共産党の一党支配や言論の自由などに対する引き続き存在するかに思われる制約から、自由主義圏と比較しての遅れを指摘する声がある。

もちろん異教徒を絞めつけたり、言論を統制したり、香港で大規模なデモにつながっている行政責任者の選定に事前に関与したりという点は、改めていくべきだと思うし、資源獲得のため急成長で有り余る資金を投じて、途上国の関心を買う手法が適切だとも思われない。

だが、一方で、欧米型のキリスト教をベースにする自由主義、資本主義があくまで世界の一部に機能するものであり、それ以外の社会システムを持った国の人口がはるかに大きく、そして世界の経済などに占める力も増していることを念頭におけば、中国の存在を単純に否定することは出来ない。

まして、欧米の金融資本主義は既に機能不全を起こしていて、これを機能回復する先行きが見えているわけではなく、更に言えば民主主義の基本のように思われてきた議会制度も、国民との乖離が各国で目立ってきている。

また、フェイスブックが起爆剤となって急速に進んだ北アフリカの民主化も、その結果として新たな課題が山積であることなど、異なる文化に基づく社会システムと欧米流の制度が必ずしもすぐにうまく溶け合うものではないことは証明されつつある。

AIIBは巨額の資本金をベースに、アジアにおいてこれから急速に進むと見込まれるインフラ整備に資金面で貢献しようというものだ。審査能力や環境への負荷などを心配する向きもあり、これは今後整備していけばよいが、このような分野も、日本が大きく貢献できる領域だと思う。

更に言えば、国際金融の場面においても、世界銀行やIMF、IFCなどの機能不全、官僚化を指摘する声は高まっており、単に敵対勢力という見方をするだけでなく、虚心坦懐にどうすれば途上国のニーズに応えることが出来るか、考え直すことも求められる

そして、恐らく日本が一番貢献できるのは、インフラというものの持てる意味や長期にわたる経済への影響について、どう考えるかを伝えることではないか?

いろいろな統計があるし、それぞれ仮定が異なるので、明確に指摘できないにしても、恐らく日本は世界でもっともインフラが整った国だ。そして、今ですら、更にインフラ整備をしようとしている。

もちろん途上国においては、道路や鉄道を含め、基本的なインフラがないところもあるので、これを整備する必要を否定するものではない。しかし、わが国は、この膨大なインフラを国債を発行し、国民の負担の下に設置してきたのであり、これが世界最大の負債比率にもつながっている

国債が高い貯蓄率に支えられ、国内で消化されているから、今のところ何とか回っているが、これから高齢化が進む中で、医療保険や年金の制度が想定したような形で機能するか心配なのも事実だ。

私は、戦後のこのようなインフラ整備の一部は間違いだったと思うし、そのお陰で今度は引き続きメンテナンスに多大なコストを負担しなければならない一方で、年金すらひょっとして受け取れないかもしれない国民は不幸になる可能性が高いと思っている。

だから、単にプロジェクト自体の審査とか、或いは環境への負荷などということだけでなく、そもそもインフラというものをどのようなスケジュールで、どのような財政計画に基づいて作って行くべきなのか、わが国の失敗の経験を生かすという形で協力をすることも出来ると考えるのだ。

更に言えば、ウォールストリートを中心とした、或いは米国を中心とした国際金融のシステム自体に、新たなモデルを提供するということだとすれば、それこそわが国が戦後発展していた時代の、わが国独自のモデルも一つの参考になるはずだ

これからは、中国やインドを含めたアジアはもちろん、アフリカやイスラム圏、更に中南米を含めた現状の途上国が世界の中心になる時代だ。その中で、様々な相違点はあるとしても東アジアの国家として、歴史的にも文化的にも多くの共通点を持つ中国とわが国が、一緒に経済面では協力をして、世界の発展に資するという図式も全く考えられないわけではないと思うのだが、如何だろうか?

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