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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

原発はストレステストの前にやることがあるのでは?

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いくつか思いついたことを書こう。

まず、少し前に野党の自民党が、郵政改革法案に賛成の意向とあった。要は、民営化をもう一度行政主導型に少し戻すということだ。与党に亀井氏がいて、彼が強力に推進したから、こんな方向性になったが、亀井氏が政権離脱をした今、どうなるのだろうか?

もともと民主党自身が、この考え方に全面的に賛成だったとも思えない。確かに、郵政民営化であまりに効率運営だけが独り歩きすると、郵便局がなくなって困る地域も出てくるなどの懸念はあるだろう。しかし、そのような個々の問題点は民営化のもとでも、微修正をしながら対応できる。

ましてや一方でTPPのような議論をしているところで、このような逆行する話が正当性を持ちうるのか?どうも全くバランス感覚を欠いた議論とした思えない。更に言えば、一旦分割したシステムを再統合するのにどれだけのコストがかかるか、そして本当にそれがトラブルなく機能するのか、民間銀行の例を見てもあまりに社会的コストが大きすぎると感じる。

国民新党のドタバタは、全く笑止千万だ。議員数が少ないとは言え、与党の一員であり、様々な場面で論壇にも登場する一政党が、国会における最重要課題への対応に関して統一的に対応できないだけでも、そもそも政党としての正当性が疑われる

ましてや、意見が食い違ったところで、それぞれが政党として対外的に異なる意思表示を行うなど、まともな組織ではあるまじき行為。民間企業ならガバナンスの不存在と弾劾を受けるはずだ。

実際は民主党でも同じようなことが起きており、政党ガバナンスの確立が求められているわけで、私の関与する構想日本でも継続的にこの必要性やそのための政党法の制定を提案しているが、多くの政治家は、政治の自由は制限されてはいけないと主張する。何も政治の自由を制限すると言っているのではなく、民間企業や社会の通常に存在する団体ですら、一定の基準に服するのだから、助成金を受け無税で寄付を受けている政党が、一定の規律に服するのは当然だというだけだ。それとも政治の自由は、企業などの結社の自由とか国民の社会生活の自由より優先するとでも言いたいのだろうか?

さて、原発の再稼働が議論になっている。稼働のための新たな基準が突然のように制定されようとしている。確かに、例えば防御壁を高くするとか、補助電源を用意するとか、一定の対応を取れば今回の地震・津波に相当する被害には対応できそうだ。

だが、問題が三つある。まず、このような対策が今すぐ取れるわけではないということだ。だから計画があれば良い、というのは本当に国民の命を大事に考えているのか?次に、ではこの基準を超える災害が発生する可能性はないのか、という問題だ。もちろん全知全能の人類ではないのだから、一定の想定を持って対応するしかないのだが、これがある程度十分な水準なのか?最後に、これだけ揃えていれば、相当想像を絶することが起きても、今回のようなことにはならないのか、ということだ。

ここで、明らかになってくることがある。つまり、今も福島で何が起きたのか、何が今起きているか分かっていない、そしてすべての放射能被害が終結したということでもなく、いつまで危険がどのように広がるのかも示されていない、ということだ。

つまり原発は、一旦福島のような事故が発生すれば、そもそもコントロール不能であることが明らかになっているのだ。だとすれば、如何になんらかの想定を持って対応するとしても、想定を超えた事態は周辺住民などの身体・生命の危険につながるということだ。

だから、まずは福島で起きていることなどについて、明確に事実が示され、更にその防御策についての確実性が示された上で、初めて稼働の基準が議論されるべきであり、相変わらず現地の情勢に関する情報すら全く出てこず、国民に対するアカウンタビリティが果たされていない状況で、このような議論をすること自体、ファッショと言っても過言ではないと考える。残念ながら、菅政権に続いて野田政権も、国民の命を全く無視しているとしか思えない

もうひとつ重要なことは、何故そんなに稼働を必要とするのかだ。確かに電力が足りないのは困る。国民生活や産業の活動に大きな影響を与えるだろう。だが、不便ではあったが昨年の夏も冬も、我々は乗り切ったではないか?その経験も踏まえて、もっときめ細かく、どの程度まで我慢すれば、何とかなるのかそうでないか、きちんと整理して国民に示し、もしどうしても不足があるというのであれば、次の対策を考える、というのが筋道ではないか?

 

 

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