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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

日本ってそんなに悪くないかも!

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今週は遅れて日曜日になってしまったが、簡単にコメントする。

少し古いエコノミストに、日本の「失われた10年」についての記述があった。バブル後のいわゆる「失われた10年」に続いて、その後の10年もアメリカの成長の半分のペースで成長している、要は成長力を失った社会というイメージについてだ。

だが、ここで面白い指摘がされている。確かに成長率は低いが、国民一人当たりのGDPで言えば、日本はアメリカやユーロ圏よりも伸びているというのだ。つまり、日本の現状は急速に進行する高齢化によるもので、全体としての成長率は落ちているが、決して全面的に悪いということでもないということになる。

例えば、確かに国の債務も残高としては群を抜いているが、ただその原因は何か無駄使いをしたからというものではなく、基本的には年金や社会保障のコストの増加によるものだ。そして、その財政構造の基盤となっているのは税制だが、この観点で言えば日本は先進国でももっとも税負担率が低い経済構造を維持している

もちろん、ある程度年配者が社会の中心にいる現状からすれば、増税はなかなか国民のコンセンサスとならないが、これは現状デフレが金融資産を大量に保有する高齢者にとっては実質的な経済成長と同視されるからだ。この状況が進めば財政構造を改善するために税負担を増やす余地は他の先進国の経験を前提とすれば、まだまだいくらでもある、ということになる。

とすれば、もはや財政構造が人口構成などの特殊事情からではなく、経済社会構造に基づく変革不能なものになっていると見られる欧米と比べて、日本はまだ改善の余地はあるということになる。もちろん、そうは言ってもGDPの倍の水準にある負債比率は簡単には改善できないし、このまま年金や健康保険の負担を何も変えずに継続していくことも出来ないが、今きちんと戦略的に対応すれば何とかなる可能性があるということになる。

今年は、大震災から始まりどうもあまり明るい話題がない一年だったが、上記のような議論はなかなか決め手はないとは言え、このような新たな視点に勇気づけられ、一歩ずつ前進していく努力を新たな年に向け国民が力を合わせて進めることが出来ればと考えている。

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