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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

世界的なリーダー不足?

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先週のEconomistは、欧米の政治経済情勢がこう着状態なのを表して、日本化が進んでいると指摘し、失われた20年で大震災が起きても決断できるリーダーがいない日本だが、アメリカと欧州はどうするのか、という課題を投げかけている。まあ、最大の皮肉の対象は、日本のようだが。

さて、またまた為替介入だ。アメリカの債務超過問題などを踏まえて、急速な円高が起こったのは事実で、為替の乱高下は経済活動にとって決して望ましいことではないのも確かだ。だが、東北震災以降2度目の介入、何故必要と判断しているのか、私には理解できない。

そもそもリーマンショックで急速に進んだ時以降、全く手を打たずに現状の水準を均衡水準として定着させてしまったのは政府の責任だ。そして、復興のために物資の導入が必要な部分もあるのだから、円高を利用してどんどん備蓄を増やせばよいではないか

大体日本が輸出国だというのは既に幻想だ。確かに国際競争力があるのは製造業かもしれないが、これとてかなりの部分で力を失いつつあり、だからこそ為替が問題となっているのであって、為替で一喜一憂しなければならないような産業だとすれば、いずれにしても長持ちはしない。産業構造、或いは産業の在り方を変えることが必要なのではないか?

そもそもGDPで見ても、製造業の比率はずいぶん昔に30%を下回っている。だから円高で本当に困るのは経済の一部で、逆に海外から輸入をしている分野などは却って助かるのだから、円高即悪ではないはずだ。

更に言えば、もちろん欧米諸国全体が経済的に苦境に至っているので、今後何が起こるか分からないが、今円高に振れているのは、過去の経験から何となくこのような先進国の困難の状況では、対外債務を抱えていない日本が安全そうに見えるということであって、実態とかい離しているということだ。

現実には、世界中で圧倒的に巨額の国家負債を抱え、しかもこれに年金の積立不足を含めると実際の負債額は2倍に膨れ上がる、つまりいわゆるストックベース或いはバランスシートベースでは、世界最悪の財政状況なのがわが国だ

その負債が国民の個人金融資産で賄われているから何とかなっているので、このままの財政支出を続ければ3-4年でその国内吸収力が限界を超え、結果として海外に依存せざるを得なくなるのは明白だ。そうなったら、こんなに財務状況の悪い国の国債を、今の金利で買ってくれるところなどなく、あっという間に国債が暴落、結果として円安に振れる、と考えるのが常識的だ。

この時の円ドル水準は、アメリカが相応の政治経済的な安定を確保しているという前提に立てば、1ドル200円も不思議ではないので、十分に日本の技術力が弱くなった製造業でも一部は競争できる状況になるだろう。と言っても、実は重要なのは為替ではない。やはり世界に自信を持って売って行くことのできる品質の製品を作ることだ。そうすれば為替に一喜一憂する必要はないのだから。

一番心配なのは、やはり政治や経済がその場しのぎなことだ。上記のように、大局的な考え方なく、円高即介入、本当の国際競争力を考えない価格競争主義、避難・産業生活基盤再構築・帰還と復興という段階的な考え方とグランドデザインを持たない通り一遍の震災復興策、まさにEconomistが指摘する通りリーダーシップ不在だ。残念ながら、この状況を打破できる人材はわが国には当面出てこないように感じる。電力会社の社長の首を取ったり、役所の幹部を更迭すれば、日本の将来の絵は描けるのだろうか?

 

 

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