日本に新たな国際化ムーブメントを
来る5月13日、14日に第2回 Slush Asiaが開かれる。以下、去年の記事を再録したい。
日経産業新聞 6/25/2015
去る4月24日(2015年)、東京のお台場に忽然と巨大なドームテントが出現した。テントの中ではサーチライトが飛び交い、大音響の音楽ビートに合わせて次々とスターが舞台に登壇する。まるでロックコンサートの会場のような雰囲気だが、これは実はベンチャーの祭典だった。登壇者は、DeNA創業者、LINE前社長、フィランドの世界的ゲーム会社CEO、日本の著名なベンチャー育成家、などベンチャー界のスターたちだ。そして、イベントはすべて英語。集まった3000人の参加者のうち30%は海外から駆けつけたという。スタートアップ(創業間もないベンチャー企業)が事業案を競い合うピッチイベントには50組のグループが参加したが、アメリカ、台湾、中国、イギリスなど海外からも多く参加した。
実は、このイベント"Slush Asia"は、フィンランドで開かれているヨーロッパ最大級のベンチャーの祭典、"Slush"の初のアジア開催であった。Slush(スラッシュ)は、フィンランドのベンチャー関係者が、辺境の地で敢えて世界的なベンチャーの祭典を開こうと始めたものだ。2008年に初めて開催された時の参加者は200人だったが、去年は何と79カ国から13,000人が駆けつけたという。フィンランドの首相も参加し、巨大なメイン会場ばかりでなく、ヘルシンキ市内の至るところでパーティーが開かれ、街中がお祭りの熱気に包まれる。
Slushは、「スタートアップにとって世界に踏み出すための入口なのだ」というビジョンがある。キーワードは、「世界」「若者」「ボランティア」だ。まず、最初から世界を相手にしている。人口500万人ほどのフィンランドは、元々世界市場を相手にする国民性だ。二番目に、イベントの運営から参加者まですべてが若い。「若者の若者による若者のための」運営が徹底されている。運営では多くのボランティアが主体的に動く。ボランティアの若者は、普通なら会えないような政府要人や世界的に有名なベンチャー起業家、事業家と直に接することにより、一生の進路を左右するくらいの刺激を得る。
縁あってSlushに参加していた日本の著名なベンチャー育成家が、「これは単なるイベントではなくムーブメントだ」と確信し、「アジアでもSlushを開こう」と思い立った。フィランランドと日本の仲間たちが「Slush Asia第一回を東京で4月に開催しよう」と決めたのは今年1月だったと言う。たった3ヶ月という無謀な計画にも拘わらず次々とイベントのプロ、スポンサーやボランティアが集まったのは、主催者の炎のような情熱によるものだ。私も、微力ながらスポンサーを紹介し、年長者代表として当日はステージにも立った。ボランティアは英語の堪能な若者を中心に300人も集まった。関西などから自腹で駆けつけた人も多かったという。まさにムーブメントとなったのである。
このイベントに参加したある新進気鋭のベンチャーキャピタリストが大いに触発され、この2ヶ月後に英語主体の国際ベンチャーイベントを東京で開いた。20人のスピーカーが集い、50社のスタートアップがアジアから飛んで来て、600人の参加者があったという。
実は、私のアドバイスにより、大阪市では国際イノベーション会議「ハック大阪」を2013年から毎年開いている。海外から登壇者を呼び、大阪市長も含め登壇者がすべて英語でスピーチする意欲的な試みだ。いずれこれが関西でのムーブメントになっていくことを期待している。
日本の若者が世界に向けてベンチャー振興を進めていけば、日本の未来は明るい。