XML熱
「木構造トラウマ」「名前空間嘔吐」「モデル近視」、なんだか物議を醸し出しそうな単語ですが、計算機科学分野の著名な学会であるACM (Association for Computing Machinery)の雑誌CACMの7月号に掲載されている、XML Fever (by Erik Wilde and Robert J. Glushko)という記事からとったものです。生誕10周年を迎え、当初の期待を超えるほどの普及を見せたXMLですが、大学でXMLに関する講義を行っている筆者らが、自己の経験から、XMLが思ったよりも簡単ではないことを、様々な病気に喩えて解説しています。例えば、ご存じのように、XMLは情報を木構造で表現しますが、そのモデル化には複数の手法があり(XMLそのもの、DOM, InfoSet, XPath, PSVI, XDMなどなど)、開発者に混乱を招いています。これが「木構造トラウマ」だそうです。
個人的には、最近は、XMLのスキーマも文書そのものも、ツールやライブラリが自動的に生成することが多くなり、ここであげられているような細かな難しさの多くは、それらの道具が隠してくれるようになってきたと思いますが、様々な意図でXMLを使うユーザと、相互運用性が十全に確保できているといえない関連仕様が増えていることが、このような問題を引き出していることは確かだと思います。XMLのこの先の10年で、療法が確立し、よい方向に変わっていくといいのですが。
この記事の最後は、「XMLはオープンで計算機処理しやすい情報符号化の形式として、大成功を収めたが、情報の分析とモデル化の難しさは、今後もなくならない問題である」というコメントで締めくくられています。全く同感です。