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英ボーダフォンの株主総会にて

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London_056英ボーダフォンの株主総会が、25日、ロンドンにあるQueen Elizabeth II Conference Centreで開催されました。この日は、日本の株主総会に相当する Annual General Meeting (AGM) に先立ち、株式の特別配当に関する決議を行うための Extraordinary General Meeting (EGM) もあわせて開催されました。その模様は、ウェブキャストで見ることができます。

http://www.vodafone.com/agm2006/

ところで、このAGM/EGMの前日までに、英ボーダフォンをめぐり、2つの動きがありました。まず、この5月に欧州部門のCEOに任命されたビル・モロー氏が、同社を退社しアメリカに帰ることが発表されました。その理由は、「家庭の事情」と言われていますが、こういうケースでは、その言葉どおり、というのは少ないようです。ビル・モロー氏は、ソフトバンクとのジョイント・ベンチャーにも関わっていますが、これにも影響してくるのではないかと思われます。

もう1つは、AGM/EGMに先立ち、英ボーダフォンの大株主である機関投資家の一部が、「アルン・サリーンCEOの再任を拒否しよう」と呼びかけたこと。同CEOの経営手腕に信頼が置けない、というのが、その理由でした。結果から言えば、サリーンCEOは、再任されましたが、10%の反対票と、5%の棄権があり、85%の支持しかえられませんでした。他の役員が、90%台の支持で再任されたことを考えると、それなりに批判票が多かったと言えます。また、役員の報酬に対しては、反対・棄権をあわせると20%の批判票が投じられました。「経営陣にイエローカードが示された」と、こちらの新聞では報じられています。

London_057 また、ボーダフォンの日本事業の売却については、"昨年からの(日本の)ビジネスの建て直しは順調にいっていた。相対的に競争力を得ていたことから、ソフトバンクから、とても魅力的な評価が与えられた"と説明しています。こうやって、株主に説明しなければならないことを考えると、英ボーダフォンには、できるだけ高い価格で日本事業を売却する責任があったとも言えます。

機関投資家は、各議案に対して、事前に投票を済ませていることもあり、株主総会に出席している人のほとんどは、個人の株主、それも、お年寄りが多く見られました。それでも、質疑応答では、かなり厳しい質問や意見が投げかけられました。特に、昨年から、英ボーダフォンでは、経営陣の内粉が、たびたび報じられていたこともあって、「役員会が機能していないのではないか」という指摘もありました。これに対しては、「役員会は機能しているし、すべての役員はサリーンCEOを全面的にバックアップしてきた」と何度も繰り返していました。

ただ、今回の株主総会を最後に8年間会長を務めたマクローリン会長が退任、また、22年間同社の経営に関わってきたジュリアン・ホーン・スミス氏も引退することなどを見ると、サリーンCEOが、内紛に勝利して、役員会を掌握した、と見ることができると思います。

株主総会後には、株主たちにサンドイッチなどの軽食と飲み物が振る舞われ、役員たちと歓談する場が設けられました。そこで、サリーンCEOに、ソフトバンクとのジョイント・ベンチャーについて伺ったところ、「現状では、満足している」とのこと。このジョイント・ベンチャーをどうやって活かしていくかについては、携帯端末の共同開発・共同購入、ブロードバンドや固定電話におけるソフトバンクの経験をフィートバックさせる、IP電話などの新技術における協業などをあげました。ただ、コンテンツの協業については、あまり重要視していない、という印象を持ちました。

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