ロタリーとイギリス映画
最近のイギリス映画には面白いものが多いのですが、その理由は、ロタリー(Lottery)という宝くじにあります。
ロタリーというのは、スーパーの店頭などで買える1口1ポンドの宝くじで、6つの数字の組み合わせを予想するものです。毎週水曜と土曜日に抽選があって、予想した数字が6つとも当たると数百万ポンド(数億円)の賞金がもらえます。
このロタリーの収益の一部は、文化的な事業に寄付されることになっていて、現在建設中のサッカー場ウェンブリー・スタジアムなどの建設費にもあてられています。 そして、この寄付金は、イギリスで製作される映画にも投じられています。これが、最近のイギリス映画に面白いものが増えていることの要因の一つとなっています。
たとえば、以前紹介した「ベッカムに恋して」(原題:Bend It Like Beckham)には、約100万ポンド(2億円)の資金がロタリーから提供されましたが、この映画が全世界であげた興行収入は、その35倍にものぼったそうです。 どの映画にロタリーの資金が提供されるかは、UKフィルム・カウンシルという政府の外郭団体が決めますが、映画の企画を吟味するセンスは良いようです。
といっても、ロタリーの資金が提供された映画がすべてヒットしたわけではありません。たとえば、サッカーのイングランド代表監督が主人公のギャグ映画「Mike Basset: England Manager」には、210万ポンド(4億2000万円)のロタリーの資金が与えられましたが(もちろん総製作費はもっとかかっています)、全世界での興行収入は360万ポンド(7億2000万円)にとどまっています。
まぐれでワールド杯の予選を勝ち抜いたマイク・バセットという架空のイングランド代表監督の話で、私の好きな映画の一つです。最近は、テレビ版も放映されていますが、イングランド以外の国の人で、わざわざこれを見たいと思う人はあまりいないんじゃないかとも思います。
[参考] Tha Guardian G2 "The UK film industry", November 14th, 2005, pp.4-5.