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Pandoraのある世界とPandoraのない世界

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吉川さんのエントリーでも紹介されている日本のソーシャル・メディアの一覧図ですが、なかなか興味深いですね。日本は音楽系Webサービスが(米国と比べると)弱いとの指摘がされており、なるほどと思いました。ところで、吉川さんは「ユーザが書いたイラストや絵(2次創作を含む)を中心としたソーシャルメディアは日本独自なものだと思う」と書かれていますが、これについては異議ありです。ソースはdeviantArtです(関連エントリー)。まあ、私もごく最近まで知らなかったですけどね。

さて、日本で音楽系ソーシャル・メディアが弱いという話題に戻りますが、ピアプロやニコ動などでボーカロイドのオリジナル作品投稿サービスという点では十分素晴らしいと思うのですが、やはり、市販のCD音源を使った作品がほとんどないのが厳しいところです。

欧米ですとCD音源を使っている代表的な音楽ソーシャル・メディアとしてはCBSに買収されたlast.fmとか、PANDORA(韓国の動画投稿サイトとは関係ありません)などがあります。また、live365.comなどというインターネットラジオを簡単に始められるサービスもあります。

これらのサービスの特徴は、ネットのソーシャル性を活かしつつ、ちゃんと権利者に適正な対価が回っているところです。米国では、SoundExchangeというCD音源の権利処理組織があり、事前の登録と料金の支払いだけですぐにネットラジオを始められます(関連エントリー)。従来型ラジオのように局側が選んだトラックを流すだけではなく、ユーザーの好みに応じてアルゴリズムで選曲する方式もありです。PANDORAはこの方式ですね。日本で同じようなことをやろうと思うと、原盤権を所有する権利者との個別交渉が必要になり、まったく現実的ではありません。

PANDORAは現時点では日本向けにはサービスを提供していませんが、昔、試した時には非常にナイスなサービスでした(関連エントリー)。自分の好みのタイプの音楽を指定すると、その系統の音楽のCD音源を選んでかけてくれます。トラックを評価したり、スキップしたりすることで、パーソナライズが進んでいき、ますます自分の好みに合うようになっていきます。たとえば、Bill Evansチャンネルというのを選ぶと、静かめのジャズを選んでかけてくれます。ピアノトリオだけかけるかというとそうでもなくて、ギタートリオがかかることもあります。このバリエーションがミソで、自分の好みの範囲内だが初めて聞いたというような音源を発見する機会も多くなります。PANDORAは、AmazonやiTuneでアフィリエイト販売をやっていますが、コンバージョン率はかなり高いでしょう。

権利者側としても全く損にはならないと思うのに、なぜ、日本ではできないんでしょうね?

ところで、米国の権利者側としてPANDORAをどう考えているかを表わす興味深い事例として、米BMI(日本のJASRACのような団体)がPANDORAのオフィスを尋ねた時の記事がBMIのサイトに載っています。この記事を見る限り、権利者もPANDORAのようなサービスは歓迎しているように見えますね(米国では)。

Comment(2)

コメント

吉川@ナレッジです。
 deviantArtは私も知りませんでした。2000年からあるのですね。結構歴史があるようで今では栗原さんが紹介して下さったように2次創作も結構登録されているようですが、これが最初からだったのかどうか、今オリジナルと2次創作の割合がどれくらいなのかが気になるところです。
 負け惜しみではないですが、日本のピアプロだとかpixivは最初から2次創作中心で進んだのは特徴だと思っています。これは多分にコミケというベースとなる文化の有無が響いていると思ってます。

 ところで今の日本のUGC(というかネットのコミュニティ)の一角には車載動画というジャンルがあるのですが、これって日本独自なんでしょうかね。それとも車文化は輸入したものですから欧米ではもっと車載が進化しているのか、最近はそんなのも気になったりしています。

栗原潔

一般にアマチュアによる版権キャラベースの二次創作のことをFan Artと呼ぶようです。Wikipedia(US)のFan Artの項目を見るとわかりますが、それなりにカルチャーとして確立しているようです(ちなみに、Wikipediaにはdojin(同人)の項目もあり)
クリエイターの層の厚さ等で考えると日本は先を行っているのかもしれませんが、deviantArtを見ると、マレーシア人とかメキシコ人とかで結構ナイスな二次創作ものを描いている人もいます。この世界も、思ったよりも「フラット化」しているようです。

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