中古者の価値
中古車の価値
12年間、32万キロ乗ったトヨタ・カローラが遂に壊れてしまいました。エンジンはまだまだ快調だったのですが、足周り(車軸)がとうとう壊れてしまったのです。
ここウィスコンシンの道路はどこも凸凹で、"Pothole"と呼ばれる大きな穴がいたる所に開いており、まるでオフロードを走っているような気分になります。運転しながらコーヒーカップを口に傾けると、振動でこぼれたコーヒーが服を汚すので、細心の注意が必要になります。第二次世界大戦当時から修復がされていないガタガタの舗装道路(?)もまだあちこちにあり、そんな道路を100キロ以上の速度で走るため、エンジンよりも先に足周りの方が壊れてしまいます。僕のカローラはすでに車軸部品を一通り取換えたのですが、さすがにこれ以上この車にお金をかけるのは無駄かもしれないと思い、愛車を手放すことにしました。
業者に連絡するとすぐにレッカー車がやってきて、カローラを引き取っていきました。レッカー車に積まれる愛車の姿を見ていると、12年間一緒に過ごした思い出が、走馬灯のように蘇ってきました。
業者も商売なので絶対に損はしないでしょう。それでも壊れたカローラを10万円で買ってくれたのです。タダで持って行ってくれればそれで充分と思っていたので、「さすが日本車、さすがトヨタ車、32万キロ走っても値段がつく!」と感心してしまいました。やはり買うなら日本車に限ります。
中古者の価値
車がまだ新しいうちは、ディーラーや中古車販売業者から「おたくの車を売りませんか?○○年式の○○車なら○○万円で買います」などというメールや電話がしょっちゅうやってきます。しかし10年落ちくらいになると、そのような連絡は少しずつ減っていきます。これは車だけの話ではなく、人にも当て嵌まるようです。
リンクドインに登録していると、リクルーターから転職の誘いが来ます。リクルーターは謂わば中古者(?)販売業者のようなものなので、常に転売できる中古者を探しているからです。しかし僕の場合、50歳を過ぎて年を重ねるとともに、リクルーターからの勧誘がだんだん減ってきました。
以前は無視していたリクルーターからの勧誘ですが、勧誘が減ってくると逆に気になるもので、まるで自分の中古者としての価値が無くなってきたような感じがするのです。そのため自分の中古者としての価値を確かめるために、最近は気になった求人の話をリクルーターに聞いてみる事が多くなりました。
ところで、自動車は昔に比べて性能が格段に良くなったにも拘わらず、価格はそれほど変わっていないと思いませんか。性能の向上に比べれば、むしろ価格は安くなっているような気がします。どうやらこれは求人募集にも当て嵌まるようで、ワンクラス上の会社のワンクラス上の求人でさえも、提示される給与が今までの給与水準よりも低いことがよくあります。どうやら企業は経費を削減するために、空いたポジションを同等の待遇で埋めるのではなく、むしろかなり低い待遇(安い給与)で埋めようとしているような気がします。
「僕は日本人(日本者)だけど・・・」と言ったところで、トヨタ車のようなブランド力も信頼性もあるわけではないので、あまり意味がありません。仮に性能が良くても買い叩かれるのが無名のポンコツ者の宿命なのでしょう。
リクルーターの価値
自分の中古者としての価値(相場)は大体が検討がついています。今貰っている給与はその価値以上であることも自覚しています。では中古者販売業者である(フリーランスの)リクルーターの価値はどうでしょうか。残念ながら10年前と比べてずいぶんと下がっているようです。僕の知り合いにも二人ほどフリーランスのリクルーターがいますが、二人とも今の生活は厳しく、10年前あれほど羽振りが良かったのが、今では嘘のようです。
リクルーターが人材を企業に紹介して転職が決まった場合、今でもリクルーターは転職者の年収の15パーセントから30パーセントの手数料を企業から貰えるそうです。例えばもしリクルーターがエンジニアを一本釣りして1000万円の転職を成功させたら、それだけでリクルーターは企業から200万円貰えるのです(20パーセントの場合)。年間4~5件の一本釣りに成功すれば、それだけで十分生活ができます。リクルーターは中古者販売業者と書きましたが、もしかしたら漁師に近いかもしれません。
フリーランスのリクルーターの生活を厳しくしているのは、インターネットの求人サイトです。今ではリンクドイン、インディード、モンスターなど、様々な求人サイトがあります。さらに、ある企業向けのサービスなどは、そこに求人情報を送ると、自動的に50以上もの他の求人サイトにその求人情報を掲載する、などと宣伝しているところもあります。もちろん企業も自身のサイトに詳細な求人情報を載せています。インターネットで簡単に求人情報が手に入り、しかもそのまま応募ができるので、リクルーターの存在価値が無くなってきました。
また企業もリクルート部を自社内に作り、リクルーターを社員として雇うようになりました。高い手数料を外部のリクルーターに支払うよりも、社内のリクルーターに給与を支払った方がきっと安上がりなのでしょう。
価値が下がっているのは、ポンコツ車(者)だけではないようです。