就業規則を改定
昨年の春に自社の就業規則見直しの検討を始め、夏にはほぼ原案を書き上げましたが、その後、会長・総務と議論を続け、新宿労働監督署に質問に行ったりして修正と関係者の説得を重ね、ようやく先日OKとなり、4月1日から新しい就業規則が施行されることになりました。
就業規則というと、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」の項目が直感的にイメージしやすく、それさえ書いておけば、他は都度ルールを決めて運用すれば良いのでは?と考えてしまいがちですが、実際は、「全社に対する告知」は全てこれに含まれるという感じであり、要するに、自社でのルールは全て書く必要があり、さらに労働監督署に届け出なければなりません。従業員が10名未満の場合は届け出の必要がないため、就業規則を作らなくても問題はないのですが、ルールがない会社は基本的にないと思いますので、何らかの形で作るものだと言えるでしょう。
就業規則で経営側が一番気になる点は、やはり従業員あるいは退職者との間で何らかの揉め事になった際に、会社側の主張のよりどころとなる点でしょう。日本では労働者が圧倒的に保護されていますので、会社側としては揉めた際に経営存続の危機まで心配して規則を明確化しておく必要があります。とはいえ、労働基準法に違反する内容の就業規則は作れませんので、労働基準法を十分理解した上で、自社の経営に合う形でルール化することが大事です。
もっとも、日本の労働基準法は「労働時間」を完全に基準としたルールであり、創造的な仕事にはとても当てはめにくい内容です。基本的には、働いた時間分は必ずお金で払う必要があり、「働いた時間=会社にいた時間」とみなされます。創造的な仕事では、時間と成果は全く比例しませんので、本来は会社にいるかどうかではなく、何を生み出せたかが評価されるべきなのですが、そのような就業規則は認められません。裁量労働制が後付けされましたが、あまりにも対象が限定的で、IT関連ではほぼ適用できないものです。同様に、時間外手当支給対象外とできる管理監督者の基準もほぼ経営者並と、一般的なリーダークラスには適応できないものでしょう。
経営者側、とくにオーナー側としては就業規則に求めることは、前述したように経営リスクの回避であり、さらに従業員への労務の明確化でしょう。一方、従業員側は自分たちの権利の明確化を求めていると考えがちですが、実はそれと同じくらい、「自社の品格」の表現としての役目を求めているということが、このところのメンバーたちとの議論で見えてきたことでした。
質の高い人材を集めるためには、「仕事の内容の魅力と同時に会社の品格が重要であり、それを表すものが就業規則だ」というイメージです。どれだけ仕事の実績や内容で魅力を語っても、自社の就業規則がボロボロでは胸をはって採用活動もできない、ということです。
この1年間でもっとも苦労したのが、この両方の立場の満足でした。経営側は「そんなに細かいことまで国に縛られるのなら、従業員に対しても厳しい縛りを設けなければ釣り合わない」と受け取ってしまいますし、従業員側は「きちんと労働基準法に準拠した上で、自社ならではの魅力が欲しい」と考え、雇われ社長である私はどちらの立場も良く理解できるだけに、どちらも満足できる状態にしたかったのでした。
おかげで、社労士の試験も結構な点が取れるのでは?と思うほど、様々な情報をよく調べましたし、理解した上で落としどころを考えたおかげで、どちらの立場から意見をいわれても対応ができるようになりました。
さて、就業規則自体は国の基準に則り、さらに自社の現状にも合う状態に何とかまとまりましたので、次はきちんと運用し、成果を出すことが肝心です。日本の労働基準法では、時間に対して必ず報酬を出さなければなりませんから、報酬を遙かに上回る利益が継続的にあることが前提です。日本では海外のように、あるプロジェクトが終わったら関係していたメンバーは解雇、という運用はできません。どんなことがあっても決めた報酬を支給し続けなければ倒産するしかないのです。全員が創業者で従業員は一人もいないという創業時点は無理が利きますが、従業員を雇い始めたら絶対に利益を出し続けなければ会社は存続できません。幸い、自社の製品はIT製品・ゴルフ練習場向け製品とも市場で良い評価を得て、この先も良い見通しができている状態です。4月からの新年度は、新しい就業規則をベースに、ますます品格のある会社として胸をはって成長していきたいものです。