オルタナティブ・ブログ > プログラマー社長のブログ >

プログラミングでメシが食えるか!?

新製品の実績はどうやってつくるのか

»

先日「ソフトウェアの問題と騒ぎ」で「実績のある製品でないと選ばれない」と書きましたが、「新製品はどうやって売れるようになるのか?」という疑問を誰もが持つことでしょう。

ソフトウェア製品では多くの場合、開発することは比較的簡単な場合が多いものです。もちろん、アルゴリズムを考えたりする苦労や、複雑なユーザインターフェース・多くの帳票など実質的に工数がかかるケースもありますが、少なくとも、ほとんどの場合はそれ相応の工数をかければ作り上げることはできます。基本的には、作ることより売ることの方がはるかに難しいものです。

製品の販売・稼働実績を作るためには、購入して使ってもらう必要があります。しかし、実績のない製品はなかなか選択してもらえません。使ってもらえないので実績ができず、実績がないから売れない、ということで、いつまでも売れないのです。

実績がない製品を使ってもらうポイントは以下のようなものでしょう。

・他に選択肢がない
・他より断然価格が安い
・無償で渡し、評価してもらって、安心した上で購入してもら
・知り合いなどもともと信頼関係のあるところに使ってもらう

これらのポイントに当てはめられない製品は開発してもそう簡単には売れないとも言えると思います。

私の勤務先では「2015年度上期業績」で紹介しましたが、受託開発を中心としたビジネスから製品開発販売にシフトしました。当然、最初はどの製品も実績がない状態でしたが、それぞれ使ってもらうためのポイントは明確にありました。

ProDHCP
 もともとはオープンソースのDHCPサーバでの不満を解決する相談を受け、フルスクラッチで開発したので、最初からその案件で使ってもらうことが決まっており、実績は最初から作れた。

IntraGuaridanシリーズ
 「こういう製品があれば売れるはず・売りたい」と知り合いから相談があり、開発したのでニーズがあることは分かっていた。競合製品に比べ価格を圧倒的に低く設定したので、実績がなくても入札案件などを中心に使ってもらうことができた。もともとはシンプルな機能だったので実績がなくてもそれほど心配はされない製品だった。その後徐々に多機能となり、今ではかなりのプロジェクトになった。

Ethdelayシリーズ
 自分たちがネットワークシステムを開発する際に必要で開発したもので、せっかく作ったから製品化しておこうという程度で、販促もほとんどしなかったが、こちらも技術系の数が出ない製品にもかかわらず安価だったこともあり、使ってもらえた。

他の製品もそれぞれきちんと使われる背景はありましたが、実績を作るのはとても大変なのです。製品は開発することより売ることの方が難しいと言われるのはこのためです。さらに、売ったらおしまいではなく、販売後もサポート体制を維持し、長く使い続けられる状態を続けることも簡単なことではありませんし、数が出る製品であれば出荷販売体制も大がかりになります。

多くの経営者が下請けから脱却したいと考えていると思いますが、技術力が足りなくて脱却できないのではなく、売るためのノウハウがないから踏み出せないのだと思います。下請けは仕事さえ見つけられれば収入の目処が立ちますが、開発販売は売れなければ収入はゼロです。一方で下請けは元請け以上にはまず儲けられなかったり、動いた分しか収入にならないのに対し、製品は売れればいくらでも稼げますし、自分たちで事業の舵取りができますし、自分たちの力を表に立って示すことができます。

実績がないうちは販売後に様々なトラブルにも遭遇することでしょう。最大限の誠意を見せて迅速確実に一つ一つ対応するしかありません。そうやって数々の稼働実績を積む度に製品が一人前に育っていきます。もちろん、製品によってお客さんの課題を解決することで喜んでもらえます。産みの苦しみを乗り切れるかどうかが製品開発販売の最初の大きなポイントでしょう。

Comment(0)