またまた万年筆のメンテナンス
万年筆の話題の続きです。
「万年筆のメンテナンス」でモンブランの149のメンテナンスをした話を書きましたが、書き味がどうも気に入らず、自分でペン先調整もしたりしても納得できず・・・
「萬年筆研究会【WAGNER】 表定例会@水道橋」というのに参加してみました。万年筆好きの集まりで、調整士も数名参加していて、会員になればペンクリニックもしてもらえます。普通は万年筆の分解などを自分でやるなど言語道断!と言われそうですが、この会では、ちゃんと仕組みを知って、できそうなら自分で楽しみ、無理なら調整士やベテランに相談しましょう、という感じで、なんでも分解しないと気が済まない私向きです。
正直に「書き味が気に入らないから自分で調整したけど、まだ気に入らない」ということで149を見てもらうと、今はペン先がこうなっているから、こうすると滑らかになるよ、と教えていただけ、目の前で雑談しながら丁寧に調整してもらえました。ベテランがやっているところを見るのはとても勉強になります。
その後、万年筆オタク話、カメラオタク話、そしてなんと!ロードバイクオタク話(彩湖で走っている人や、なんと元実業団の選手も!)まで花を咲かせ、上の写真の、ラストの講演まで聞いて閉会まで居座ったのでした・・・。
ペン先はこんな感じに仕上げていただきました。引っかかりはとても少なくなり、大満足です。一度見れば自分でもそれっぽくできそうな感じですが、せっかく念入りに仕上げていただいたので、これはこのまま使います!
さて、調整士さんの机の上にはいろいろな道具があり、私は先日自作した工具を持っていって、そんな話題でも盛り上がったのですが、次はこの工具を作りたいと思い、現物をじっくり見てきました。
早速、翌日には工作開始!前回は1mm厚の真鍮板をカットするのがとても大変でしたので、ハンドニブラーを購入しておきました。これは楽ちん!
こんな感じで、それほど反らずに、割とまっすぐカットできます。
このハンドニブラーはフランス製なのですねぇ。Amazonで適当に評判と価格から選んだのでした。
大体形になってきました。
この工具はこんな感じに使います。ある万年筆のピストン部分を外すのに使います。工具はまだ完成していないのですが、目的は果たせるので、先に万年筆のメンテナンスを進め始めてしまいました。
メンテナンスするためにはペン先側も外しますが、こちらは工具なしで外せました。この万年筆はセルロイド製で、ネジ部分はシェラックで接着されているので、無理に回すとセルロイドが割れます。ドライヤーで適温に温めながら、優しく回して外します。
この万年筆はピストンのシールにコルクを使っていて、さすがに古くて乾燥して小さくなってしまっていて、ほとんどインクを吸い込めない感じですし、保持しておくこともできませんでした。これをゴム製のOリングに交換するのがメンテナンスの目的です。とりあえず、Oリングは注文したので、分解できるところまでで作業はストップ。シェラックで接着する代わりに、シリコンオイルで防水して、何度でもメンテナンスできるようにして組み立てておきます。
さて、工具も一応仕上げました。前回作った上の工具に比べると難易度はかなり高いです。まあ、材料や工具が揃えばそうでもないのですが、自宅にあるものでという意味では、どう作るかも悩むところなのです。1mm厚以上だとカットができませんし、小さな工具では削るのも穴を開けるのも大変なのです。
金属を磨くのは大好きなので、リューターを使って切り口やエッジも丁寧に仕上げました。ピンが1本あるのがこの工具のポイントです。ここをピストンの穴に引っかけて回します。
なんの図面も書かずに、適当に真鍮をカットして現物合わせで作った割には、なんとなくまともそうに出来上がりました。
さて、まだOリングが届かないのですが、良く考えたら、注射器が同じような物なので、ゴムシールをつかえるんじゃないか!?と閃き、手持ちの注射器から2.5mlの物がピッタリでしたので、ゴムシールをベルトの穴開け機で貫通させてピストンに装着しました。ゴムを綺麗に丸く抜くのはカッターなどでは難しいので、ベルトの穴開け機も意外なところで役に立つ物です。ベルトの穴開け機ももちろんもともと持っていたものです。
注射器はなんとこんなにたくさん持っていました。以前、ゴルフクラブのグリップ交換を自分でやるときに、溶剤を注入するのに必要で買ったのですが、送料無料にするために適当にサイズ違いをたくさん買ったのでした。ガラス製も興味本位で買ったのですが、あまりにも精密にできていて大事にしまっておくだけです。。まあ、こんなに持っていても使うことはまずないだろうと思っていましたが、まさか万年筆修理で役立つとは・・・。
こんな感じに、サイズもピッタリです。シリコングリスを塗って滑りをよくしておきます。
さて、なんとなくまともに使える状態にできそうなので、今度はペン先のメンテナンスも。これは前回と同じ感じです。
美しいペン先です。本当は真ん中がプラチナメッキだと思うのですが、古くてはげてしまっています。
ちょっとペン芯に対してニブが飛び出すぎた状態ですが、この後直しました。このペン先はクーゲルと呼ばれる上側にも飛び出たまん丸のポイントがついています。薄くて柔らかいペン先です。
さて、ようやく万年筆自体の紹介ですが、1950年代の初期型モンブラン146です。雑誌で分解方法が紹介されていて(ペンクリニックで対応していただいた方が記事を書いているのです!)、分解してみたいと思い、仕事で頭がつかれている状態で、夜中にオークションでポチッと落札してしまったのでした。セルロイドボディで、ピストンも複雑な仕組みとコルク栓。セルロイドボディは割れやすく、縮みやすいと、なにも無理してそんなに古い万年筆を使わなくても・・・と思うところですが、この時代のペン先は柔らかで独特の書き味を持つものが多いと言われています。まあ、私の場合はどちらかというと書き味より「分解してみたい!」という思いの方が強かったのですが。
シェラックでの接着は温めれば外せるのですが、温めすぎるとセルロイドが溶けますし、温めが足りないと割れます。さらに、一度適当に修理されていると、強固な接着剤を使われて二度と外せない状態ということもあるようです。普通はオークションではなく、ビンテージ万年筆専門店で買いましょう。私のは幸い変にいじられていなかったようで、無事にメンテナンスできました。疲れた頭ながらも「ピピッ」と来たのですよね〜。オークションの写真はボケた小さい物で、本当に博打でした。落札してしまってから届くまではかなり後悔していたくらい。。
さて、ペン先は噂通りとてもしなやかです。書いていて気持ちいいですね。線の太さもかなり自由に変化させられます。インクの出は良すぎです。昔のインクは粘度が高くて出が良く作られていたとか。
時代も太さもばらばらのモンブラン・マイスターシュテック。ペン先の太さ・硬さも全く違います。
146のように太さの変化をつけようと思っても、149,144ではほとんどできません。インクの出る量も多いので、濃い文字になりますが、乾くまでかなり時間がかかります。まあ、最近は国産万年筆でも柔らかいペン先のモデルもいろいろあって、わざわざビンテージ物を苦労して使わなくてもこういう文字は書けるのですが、趣味ですから手間暇かけるのもまた楽しいのです。
萬年筆研究会で皆さんのペンを書かせてもらって、すっかり泥沼にはまった気分ですが、書けば文字も上手くなりますし、工具作りも楽しめるという、一石二鳥の趣味ですね!?