ぶれない
久しぶりに製品関連の話題です。不正接続検知システム:IntraGuardianを中心とする、安価な製品群を、昨年後半から販売活動をまじめに開始し、大体300台くらい販売しました。ブランド力もない状態で300台というとなかなかすばらしい成果、と言えるかも知れませんが、価格が安く(59,800円)、ハードの仕入れもあり、1台あたりの利益が少ないので事業としてはまだまだ、とも言えます。
むしろ成果として挙げられるのは、
・多くのお客様と知り合えたこと
・販売店様とのつながりができたこと
・販売関連の経験ができたこと
でしょう。
社内でも直接関与しているメンバーたち以外からの応援も増えつつあり、やると宣言して一生懸命がんばっていれば応援者も情報も集まってくる、というところです。
さて、そんな中、「値段も安いし、いっそのこと量販店に流してみては?」という話題が立ち上がり、実際にある量販店様にメンバーが説明に行きました。なかなか面白い製品なので前向きに考えてくださったのですが、いくつか製品自体に要望をいただき、さらに、直接仕入れるのではなく、流通業者を紹介するのでそこを経由して欲しい、と言われました。
流通業者様にもメンバーが説明に行き、同じような内容の要望をいただきました。
要望はどちらかというと、パッケージの体裁関連が中心で、化粧箱・説明書・製品筐体など、多少なりともお金をかけなければならないものがほとんどです。また、サポート体制や、納期などもなかなか厳しい要求です。メンバーが具体的にそれぞれの課題に対応するにはどのくらい費用がかかるかなどを調べてまとめました。
一番の課題は、マージンの問題です。流通業者と量販店それぞれで*割のマージンが必要と言われました。製品価格とハードの仕入れを考えるとほぼ何も残らなくなってしまうのです。もともとそういうルートを想定した値付けではなかったので仕方ないのですが。
これらの課題整理結果を持ち寄り、ミーティングを開催しました。量販店ルートは購入していただくお客様には手軽さもありますし、量販店ルートでの製品の要求の勉強などにもなりますのでとても魅力的です。しかし、2段階のマージンを考えると最低でも8万円程度の販売価格にしないと商売になりません。また、量販店のルートができたとしても、それだけでたくさん売れるようになるわけでもなく、さらに販促活動に経費をかけなければルートができただけになってしまうでしょう。
さまざまな意見を交わした後、今急いで量販店ルートのために値段を上げるべきではない、という結論を出しました。
昨年、本格的に製品販売に取り組む際に、59,800円という値付けに関して議論しました。99,800円でも良いのではないかという意見もありましたが、最終的にメンバーが、「ブランド力もない中、注目してもらうには、値段のインパクトも欲しい」「情報セキュリティ製品は高いものばかりで、直接利益につながらないものにお金をかけられない中小企業にも導入できる価格にしたい」という思いを貫き、59,800円にしました。その後、販売店を増やそうという段階でこの値付けでは利幅が少なくて難しいという壁にぶつかりましたが、実際購入いただくお客様は1台だけというよりは、複数セグメントで使うので数台から数十台、大きいと数百台という単位で購入いただけるので、それなりに利益は残る、ということで、賛同いただいた販売店様も徐々に増えてきました。
ここで量販店ルートをターゲットに価格を上げてしまうのは、この方針を曲げることになってしまいます。これまで購入いただいたお客様、注目してくださっているお客様、販売店様それぞれの思いを裏切ってしまうかも知れないのです。お客様目線ではなく、完全に自分目線で値段を上げてしまうことにるからです。
私はそんな商売はしたくありません。もちろんメンバーがメシを食わねばなりませんから、利益も重要ですが、応援してくださっている皆様を裏切ってまで利益を追いたいとは思いません。目の前に、何となく良さそうな話があると、ついつい本質を見失って流されそうになるものですが、ぶれずにきちんと続けることもまた非常に重要だと考えています。
この先、性能・機能をUPしたバージョンも予定しています。その際には多段階のマージンが必要なルートでも問題ないような値付けも考えなければと思っています。しかし、今まで59,800円だったものとたいして違わないのに値段を大幅に上げるようなことはしたくないということで、まずは今のまましっかり進めよう、ということにしました。
当社は技術者集団ですから、自分たちで技術的に解決・改善することは絶対にできるはずです。そうやってさらに良いものにしてから価格の見直しや製品体系の見直しをすれば良いと考えています。その際にも当初の想定を裏切るような判断は決してしてはいけないと思っています。
世の中の変化に追従もしくは先取りすることも大切ですが、「ぶれない」ことも大切です。特に信念のようなものは、そう簡単に曲げてはいけないと思っています。