知識活用までの工程を分割したモデル
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火曜日はナレッジマネジメントフォーラム2010で講演をさせて頂いたが、当日は自分の出番の前に他の方のいろいろな講演を聞く機会ももてた。その中で私にとって印象的だったのは、野中先生の基調講演とマツダの小林さんからの事例紹介から沢山の示唆を得た(これについてはまたいつか別途書きたい)
野中先生の講演ではSECIモデルを引き合いに
- これからはこのSECIの中の「S(Socialization)=共同化」プロセスが特に重要
- SECIのサイクルを高速に回転させることが企業競争力の強化に繋がる
と主張されていたのが特に私の記憶に残っている。でその話を受けて夕方の私のセッションでちょっと触れたのだが、組織内でSECIのサイクルを回転させるというのは言葉では判りやすいが具体的にどうすれば良いかは非常にイメージしにくい。
我々が一般的にナレッジマネジメント関連のコンサルティングを行う際にはSECIのサイクルをもう少し細分化したモデルを使ったアプローチを取っていることは前に書いたが、他にもう少しシステム屋よりな視点に立ったモデルも考えられる。それが以下の図である。
ナレッジマネジメントに取り組む場合に「知識を活用しろ」「情報を上手く使え」と言うだけでは難しいだろう。我々は「知識を活用する」「情報を上手く使う」にはいくつかの前工程があり、この前工程を理解せずにただ闇雲に進んでも失敗をすると思っている。
- 増やす工程
まず最初に情報を増やす工程がある。実は組織において知識を管理・活用しようとした場合、まずは暗黙知である知識を形式知の情報に転換をしシステムなどで扱える形式する必要がある。その後この情報を集めて増やすのである。
さらに細分化するなら、組織の中の構成員の頭の中に眠る知識を表出化させて情報に変換する部分と既に表出化している情報を収集してくる部分にも分けられる。組織においてKMに取り組む場合に表出主体とするか収集主体とするかについてもよく考えたほうが良い。 - 貯める工程
次に収集し表出化させた情報をきちんと蓄積をする必要がある。昔と違い情報の保管に際しての容量面での制約は少なくなったのでこの「貯める」という工程については安易にどんどんと蓄積をしていくだけの作業になりがちであるが、この際に単に貯め込むだけではなく、情報の重要度や内容によって分類・評価し古い情報は適時にメンテナンスを行って更新したり削除するなどといった適切な管理を行う事が重要。
最近だと正しいアクセス権を付与して管理することも求められる。 - 届ける工程
最後に情報を届ける工程がある。情報を使うのは人であるので、この工程は、情報と人とを結びつける工程だとも言える。
情報発信側にたって重要な情報を必要なメンバーへ届けるという配信という手法と、情報受信側にたって欲しい情報のありかへそれを求める人を誘うという誘導の2つのアプローチがある。この2つのアプローチを上手に使い分けないと、最後の情報活用に繋がらない。
明日はこのモデルにあてはめていくつかの組織を分析した結果について紹介する。
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