検索エンジン万能教には辟易
「検索エンジンを導入してキーワード検索で社内の文書がすぐに見つかるようになれば、社員のレベルがあがって知的活動に繋がるでしょ」
最近ナレッジマネジメント関係で顧客を訪問していてこういうことを言われることが増えた。いや、さすがにそれはない。というか言いすぎだ。
例え話で説明しよう。社員に会社のなかの全ての事が書いてあるぶ厚い辞書を渡したとする。知りたいことは巻末の「あいうえお順の索引」ですぐに引けるようになっている、さて辞書を貰った社員はこれを使って会社の中の全ての事を知るだろうか、というかそもそも忙しい中ぶ厚すぎる辞書を積極的に引くか?
もうひとつ。新入社員への研修でいきなり全ての社内文書を1冊にしたマニュアルと目次を渡して、以降それを使って勉強しろというような企業があるだろうか、そしてそんな教育をされた新入社員はちゃんと体系化したルールや知識を身に着けることができるだろうか?
確かに検索エンジンは便利なツールだ。会社の膨大な文書情報の海から目的のものを捜し出したいときにはキーワード検索は強力なツールだ。ただ万能ではないし使い方にはコツがある。
目的の社内文書を捜し出すときに使うキーワードを何にするか。社内文書は往々にして1ファイル内の文章が長く多数のキーワードを保有する。また自社名や主力製品名などは、ほとんどの文書に登場しており絞込みには使えない。目的の数文書にたどり着く為には適切なキーワードを選ぶことが大切で、この適切なキーワードを瞬時に思いつくためには、経験(慣れ)だけではなく教育や支援機能(絞込みキーワードの提案機能やナビゲート/レコメンデーション機能)が必要だ。そして何よりも検索される側の文書をある程度は整理・体系化しておかないと検索エンジンの導入効果は限られる。
文書の整理・体系化にはそれなりの手間とコストがかかるので、それを嫌がる人が楽をしたいが為に冒頭のような発言をしていることがある。検索エンジンを売る側としてもこういう人は要注意だ。例えば40代以上の年配の方でそれなりにITリテラシーもあって自分でもGoogleなどを活用している人が検索エンジンベンダーの宣伝文句をそのまま信じてこういうことを言っているケースがよくあるのだが、こういう人ほど検索エンジン導入後に手のひらを反したように
「ウチの会社の検索エンジンは使えない。関係ない文書ばかり出てくる。人に聞いたほうが早い。」
なんて非難を始めたりする。
我々が検索エンジンの導入を相談されたときには必ず、検索エンジンの限界、効果を発揮しやすい使い方、他のツールとの使い分け方、そして検索エンジン導入前に社内文書管理として最低限やっていただくこと(文書の種類ごとの保管場所は明確化する、最終成果・完成物と作成中の文書は分けること、などなど)を説明するようにしているが、これらをどうしても理解してくれない人もいる。
そういう時は丁重に辞退するのもひとつの方法なのだろうなぁ。