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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

フローとストックを分ける

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 企業内コンテンツ管理への意識がこのところ高まっている。日本版SOX法などの影響もあるのかもしれない。さてナレッジマネジメントとして企業内コンテンツ管理に臨むときの第一歩はコンテンツの棚卸であるのだが、この棚卸作業の際に我々が良く使う視点のひとつが情報の種類をフローとストックに分けるというやり方である。

 企業内にある知識やコンテンツを一覧に書き出しそれを特徴別に整理分類する作業が棚卸作業であるが、この時にコンテンツの属性ごとにフローとストックに分類するのである。ちなみにこの考え方は、システムを構築するときにマスターとトランザクションを分ける考え方から来ている。例えば情報系システムの場合、、連絡やニュースはフローである。そして規定集やマニュアルといったものがストックの代表的なコンテンツである。

 最近はフロー系コンテンツの種類も数も以前より爆発的に増えている。そしてストック系のコンテンツもこのところの文書化の流れに沿って、規定集やマニュアル以外にポリシーだとかガイドラインといったような名前でより大きな範囲、細部にわたって作成・蓄積され始めた。{参考過去のエントリー「企業内コンテンツ管理~増え続けるマニュアルと手続集」}
 そもそもひと昔前は、企業内のナレッジといえばストック系の情報のことをさしていた。レポート・報告書・特許・著作物など組織内に永年蓄積された知識やノウハウを有効活用することが当時のナレッジマネジメントの主目的であった。しかし近年、意思疎通や企業内人脈などといったより暗黙知的な分野に注目が集まるにつれて、コミュニケーションやコラボレーションといったフロー的な作業の見直しもナレッジマネジメントの範疇だと言われるように変化してきている。

 ナレッジマネジメントのカバー範囲の増大により扱うべきコンテンツが多種多様になっているが、このフロー系コンテンツとストック系コンテンツは特徴や性格がかなり異なるので注意が必要だ。そしてその特徴と性格にあったツールを使うことが成功の秘訣である。だから我々は最初の棚卸でコンテンツをフローとストックに分類した後にそれぞれのコンテンツにあわせたマネジメント手法を検討し、最期にそれにあったツールの選定を行う。

 コンテンツ側と同じようにツール側も分類できる。メールやメッセンジャーがフロー系の最も代表的なツール。ブログは気づきを時系列的にメモするのであるからフロー系、フォーラムやQ&A、最近だとSNSといった意見交換の場にあたるものもフロー系である。これに対してWikiは特定のワードに関連する情報を蓄積していくのでストック系のツールに分類される。昔からある文書管理システムもストック系。現時点ではECMといわれる製品はストック系のが多いように見受けられる。ポータルとサーチはこの分類に置くと若干微妙なポジションになるがあえて分類すると私はポータルをフロー系、サーチはストック系に置いている。

 ちなみにフロー系のツールでストックを扱おうとするといろんな問題が起きやすいし、その逆もまたそうである。だからできるだけコンテンツの特質に合わせて複数のツールを使い分けるのが現時点では最適なシステム構成だと考える。
 
 今回紹介したやり方は考え方のひとつである。上に挙げたようにポータルやサーチが上手くはまらないのは、企業内コンテンツ管理を考える場合は、他にもライフライクルといった別の切り口での分類も必要だからである。このことについてはいずれ別途触れたいと思うが、とりあえずフローとストックに分けるのはわりと簡単にできるので、もしコンテンツの棚卸しなどを行う機会があれば試していただきたい。

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