角川春樹氏事務所の売上30億円も純利益は3000万にとどまる:1分から読める注目の非上場企業の決算情報
角川春樹氏事務所の売上30億円も純利益は3000万にとどまるなど、2015年12月1日の1分から読める注目の非上場企業の決算情報です。
第20期決算公告 11月26日官報41頁より
売上高
3,080百万円
経常利益
100百万円
当期純利益
30百万円(前年は△355百万円、黒字転化)
利益剰余金
144百万円
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企業情報
企業概要
カドカワ商法を生み出した奇人
株式会社角川春樹事務所は、その名の通り1995年に角川春樹氏(当時コカイン密輸事件で保釈中)が自分の角川書店(現・カドカワ株式会社 KADOKAWA DWANGO CORPORATION)の全持ち株を弟の角川歴彦氏に譲った資金によって設立されました。この会社を取り上げる上で、当然角川春樹氏のことに触れないわけにはいかないとは思うのですが、なんせWikipedeaとアンサイクロペディアで記述がさほど変わらないw毀誉褒貶が激しいタイプの方なのでそこの評価は難しいところですし、あまり掘り下げると、どんどん会社から離れてしまいそうなので、今回はほどほどで。
しかし、同氏が70年代後半から80年代前半にかけて、国文学中心の中堅出版社だった角川書店を一気に現在の地位にまで押し上げたいわゆる「カドカワ商法」はビジネスモデルとして当時やはり画期的なものだったと思うので少し触れておきます。それはコンテンツを従来の書籍や映像といった一つの側面で捉えるのではなく多面的に捉えた上で、その後のトレンドと世界観の中心として映画を制作し、引きの強いキャッチコピーや有名アーティストによる印象的な主題歌を加えてから、TVCMや全国の書店を巻き込んだ大規模な広告宣伝により一気に拡散、大ヒットさせて主体的にトレンドを作り出す、そして更に原作作家の権利を買い取って、全作品を文庫化した上で今度は対象フェアとして二次売上も刈り取っていくというものでした。
こちらは今で言うところの「メディアミックス」の成功例だと言われることが多く、また実際にそれを当時企画実行してコンテンツの全体統合と個別最適を同時に行った手法は確かに鮮やかですが、当時考えられなかった映画の宣伝を高価なTVCMで行うやり方のインパクトは、最近結構マーケティング手法で耳にする「ブロックバスター戦略」と捉えることもできそうですね。
角川映画復活ならず。。
一方でその強引な手法に対して批判があるのも確かですが、「犬神家の一族」「人間の証明」「戦国自衛隊」「セーラー服と機関銃」「時をかける少女」等々の角川映画が作り出す独特の雰囲気自体も個人的には好きですし、それ以前は純文学や古典くらいしかなかった「文庫」というジャンルを今のメジャーなスタイルに押し上げた点も評価されても良いと思います。ただ、80年代後半になると、フジテレビが「角川三人娘」の原田知世を使ったホイチョイ3部作で角川のお株を奪うメディアミックス戦略を展開し始めたり、ハリウッド進出を狙った大作がコケたりした流れから、お家騒動、密輸事件と続き、角川映画自体は日本映画界で急速に存在感を失っていきました。
そして、角川春樹氏が服役出所後の2005年に「男たちの大和/YAMATO」を製作、興収50億の大ヒットとなり、角川映画の復活もあるかと思われましたが、続いて作った2007年の「蒼き狼」は大コケ、2009年に自らが監督となり「観客動員が150万人を超えなかったら映画を辞める」と宣言した「笑う警官」が動員10万人、興収3億円弱と惨憺たる結果に終わって以降は宣言通り映画製作から手を引いているようです。
Popteenはギャル向け雑誌では無かった?
そんな角川春樹事務所ですが、現在の主力事業は出版事業で『みをつくし料理帖』などの時代小説や、道警シリーズ、安積班シリーズといった警察小説を中心とした小説部門と、「Popteen」「美人百花」「BLENDA」といった雑誌部門が中心です。ちなみに現在の看板雑誌の「Popteen」は1980年に富士見書房によって創刊され、その後同誌の編集を手掛けていた飛鳥新社に2億円で譲渡され、さらに資金繰りに窮した同社から6億円で角川春樹事務所に譲渡されたもので、中身も90年代前半までは、ティーンエイジャーの過激なセックスの体験談やテクニック等の情報、またいじめ問題の人生相談等メインコンテンツとした雑誌でしたが、女子高生ブームの人気の訪れとともに、猥褻・バイオレンス要素を払拭したギャル向けファッション雑誌へとリニューアルした経緯があります。
また、角川春樹事務所になってからは、表紙に有名芸能人を多数起用するようになり、特に90年代後半はブレイクから全盛期に向かっていた浜崎あゆみ、00年代後半は「くみっきー」こと舟山久美子が19回で最多表紙登場回数を記録しています。その他にもレギュラーモデルとして、益若つばさ、ローラ、小森純、鈴木奈々、男性では忍成修吾、高岡蒼甫等も輩出しており、今年は武田玲奈をよくメディアで見かけますね。
奇人と天才の事務所に共通点?
業績に関しては、過去2年は結構な赤字を出していたようですが、今回の決算では黒字を回復しています。しかし一方で、経常利益ベースだと1億円ですが、特別損失を6000万計上して、純利益ベースだと3000万円の利益となり、特に30億円の売上高からすると利益水準がやや物足りなそうです。あと、少し面白いのが先日有名人の事務所として取り上げた東京糸井重里事務所の売上高も30億円(こちらは純利益3億円)で、トレンドの担い手として70年代後半から80年代前半にかけて絶頂期だった角川春樹氏と、80年代中盤以降絶頂期に入っていく糸井重里氏が、立場や経緯は違えど30年後に同じように個人事務所で売上30億円を計上している(年齢は角川春樹氏の方が6つ上)という、、そして角川春樹事務所は「男たちの大和/YAMATO」の制作費用確保のために2005年にフィールズから出資を受け関連会社になっているのですが、糸井重里氏もフィールズの社外役員だったりします。
その他企業情報
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決算数字の留意事項
基本的に、当期純利益はその期の最終的な損益を、利益剰余金はその期までの累積黒字額or赤字額を示しています。ただし、当期純利益だけでは広告や設備等への投資状況や突発的な損益発生等の個別状況までは把握できないことがあります。また、利益剰余金に関しても、資本金に組み入れることも可能なので、それが少ないorマイナス=良くない状況、とはならないケースもありますので、企業の経営状況の判断基準の一つとしてご利用下さい。
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