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マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

「ちふれなママ」。メイク用化粧品市場を眺めてみる... -データから見るペルソナ図鑑(35)-

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 ここまで二回にわたって、メイク用化粧品ユーザーを見てきました。「マキアージュ」「シャネル」に続き、三番目は「ちふれ」です。ここ数年の日本経済の状況はデフレスパイラル状態で、実質的な可処分所得は減少の一途をたどって来ました。私たちの定点観測によると、平均世帯年収と平均おこづかいは、2007年から下がり続け、2013年にようやく下げ止まりを見せました。しかし、円安に伴う食品、日用品、エネルギーの値上げによって、今後、可処分所得自体はさらに圧迫される傾向になっています。その中で消費は二極化し、同じ価値なら安い方を選ぶという生活防衛型の消費傾向がマスボリュームとなってきています。「ちふれ化粧品」はそのデフレ環境下で存在感を増してきました。

 「ちふれ化粧品」は日本の消費者団体「全国地域婦人団体連絡協議会」と提携し生まれた化粧品メーカーです。「ちふれ」の名前の由来はこの「地婦連(ちふれん)」から来ています。高品質で適正価格の化粧品を提供することが、メーカーが誕生したときからの目指すところとなっています。

 という訳で今回は「ちふれ」を使用しているユーザーのペルソナ像を見てみたいと思います。


【メイク用化粧品のブランドポジション】

 これまでのおさらいになってしまいますが、シングルソース・消費者パネル「ぺるそね」でメイク用化粧品のブランドポジショニングを確認してみましょう。今回も前回と同様、平均年齢×おこづかいのポジショニングです。

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 図に示されているように「ちふれ」は最も可処分所得が少ない人達のグループで、4つに分けたセグメントの中、「お買い得ブランドグループ」の中心的なブランドです。年齢層は20代前半と40代に偏りがありますが、今回は40代の方たちの特徴を中心に見ていきたいと思います。この人達を「ちふれなママ」としました。


【「ちふれなママ」ってどんな人?】

 「ぺるそね」の女性回答者は15,345名。その中で「ちふれ」を購入し、お気に入りと答えている人は1,335名いらっしゃいます。これは女性全体の8.7%に当たります。メイク用化粧品のランキングでは、カネボウの「ケイト」に次いで第二位です。職業はパート・アルバイトが女性全体と比較し高く、主婦が中心と考えられますが、専業主婦の比率は若干低くなっています。世帯年収は300〜400万円が最頻値です。「ぺるそね」の女性全体の最頻値が400〜500万円となっており、平均世帯年収の比較でも57万円ほど低くなっていることから、やや、低所得の人達と言えます。

 厚生労働省の「国民生活基礎調査(平成24年調査)」を見てみると300〜400万円が最頻値となっており、400万未満の世帯が45.7%を占めているので、今の日本はこの層がかなりのボリュームを持っていると考えられます。

 趣味は「雑貨づくり」「テレビ・ラジオ」「読書」「音楽鑑賞」「街歩き、散歩」「料理・お菓子作り」「編み物・裁縫・手芸」などが女性全体と比較しやや高くなっています。興味・関心の分野では「エコロジー・環境」「ボランティア」などが目立つほか、「お菓子・食品」「家事・料理」「TV・番組・有名人」などがやや高くなっています。このあたりのデータから、手作り志向が高く、エコやボランティアに興味の高い、少し前の典型的な主婦的価値観を持った、保守的な人達という姿が浮かんできます。サマリーを掲載しますがあまり際だった特徴が出てきていません。

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【自分が気に入ればブランドや評判は気にならない人達】

 このセグメント、人数的にもかなり多く、なかなか特徴が掴みにくい人達です。モノ選びには価格のチェックが厳しく入り、同じ種類の商品であれば価格の低い方を選ぶ「生活防衛型」の消費傾向を持っています。大半の商品カテゴリーの購入決定要因として「価格」要素が強く現れているのもうなづけます。

 消費価値観は「自分が気に入ればブランドや評判は気にならない」という人達で、思われたいイメージも際だった特徴は少なく、唯一「あたりさわりのない」というのが女性全体と比較し対比倍率1.5倍の出現率で出てきます。

 果汁系飲料の購入率が高く、カゴメの「野菜一日これ一本」や「バヤリース」「アセロラドリンク」などの出現率が全体と比較し1.5〜1.8倍の対比倍率で出現しているのは健康志向の現れでしょうか。その他、このセグメントに人気が高いブランドとして、ファッション、雑貨・インテリア、文具、などに「無印良品」が出てくるのも特徴的です。

 居住地域的には首都圏や大都市圏のボリュームはそれなりに多いのですが、対比倍率で見ると、大都市圏は少なく、それ以外の地方が多くなっています。クルマは「ホンダライフ」などの軽自動車の出現率が高く、また、買い物の場所を聞くと「イオンモール」が飛び抜けて多くなっているのも特徴的です。

 好みのファッションは「GU」や「しまむら」などのお買い得ブランドが1.6〜1.8倍の対比倍率で出現するところから見て、こちらも低価格志向の強い人達を言えるでしょう。いつものようにペルソナ・イラストを掲載しますのでご確認ください。

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 なかなか特徴がつかみにくい「ちふれなママ」ですが、このセグメントの購入決定要因を見てみると、「価格」に加えて、「買いやすさ」が浮上してきます。ここまでのデータから「ちふれなママ」がどんな人か考えてみます。

 「ちふれなママ」は、地方在住の主婦が多く、パート、アルバイトで家計を支えています。買い物はクルマで「業務スーパー」や「イオンモール」などによく行きます。行動範囲はそれほど広くなく、日用品や化粧品なども、いつも行くお店で売っているものを中心に購入。当然売れ筋の、どこでも入手できる定番商品が多くなります。保守的で、エコやボランティアに興味が高く、子供のために料理は手作り。余暇には、趣味と実益を兼ねて「雑貨づくり」や「手芸」などを楽しんでいます。

 実は地方の均質化に対し、イオンモールが一役買っているという話があります。「ちふれなママ」も比較的全国に拡がっているものの、あまり地方の特色が出ていない消費行動の傾向を持った人達のようです。しかも、この層、ボリュームも多いわけで、意外と日本の平均的な暮らしぶりの人達なのかも知れません。

 さて、「ちふれなママ」をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?次回はメイク用化粧品シリーズ、最後の「マジョリカマジョルカ」のユーザーにスポットを当ててみたいと思います。

あわせてこちらもお読み下さい。

「マキアージュなレディー」について。メイク用化粧品市場を眺めてみる... -データから見るペルソナ図鑑(33)-

「シャネルなマダム」メイク用化粧品市場を眺めてみる... ーデータから見るペルソナ図鑑(34)ー


*データは「ぺるそね」調べ。2013年8月 n=30,473
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