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マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

クルマ市場を眺めてみた。-消費者データから見るブランドポジション(7)-

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 日本カーオブザイヤー2012ー2013が発表されました。今年の受賞は「マツダ CX-5」。5ドア、5人乗りのクロスオーバータイプです。日本の新しいディーゼル時代の突破口を開いたところが高く評価されたようです。

 実行委員会特別賞は「トヨタ/スバル 86/BRZ」。環境やニーズに応えた新時代スポーツカーとして評価されたとのことでした。どちらかと言えば「走り」がよいクルマというイメージが強いのですが、一般に売れているクルマは何か?ということで、今回はクルマ市場を見てみました。


【軽自動車、コンパクトカー、ミニバン・・・】

 クラウド型消費者分析ツール「ぺるそね」でクルマ市場を見て見ましょう。回答者全31,444人中、所有しているクルマについて回答してくれた方は22,268人で、70.8%にあたります。ちなみに乗用車の世帯普及率は、内閣府の消費動向調査によると、平成24年3月現在で72.5%です。(一般世帯は84.2%、単身世帯は42.5%)所有しているクルマに回答してくれた方達は男性が52.2%、女性が47.8%と男性が若干多いですが、ほぼ半々です。

 「ぺるそね」回答者のランキングを見てみると「フィット」が4.7%でトップ。「プリウス」が4.1%、「ワゴンR」が3.7%でした。この3車種が御三家です。ベスト15位までを見てみると、コンパクトカー、軽自動車、ミニバンがほとんどで、セダンはプリウス以外一車種も入ってきませんでした。(この調査は現在所有しているクルマに関する調査なので、今年の新車販売台数のランキングではありません。)

 ぺるそねで見たクルマ市場
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【ブランドポジショニングを見てみる】

 それではブランドポジショニングを見てみましょう。最初は平均年齢×男女比です。ベスト15位までの車種をマッピングすると、一部の例外はあるものの、「軽自動車」「コンパクトカー」「ミニバン」「セダン(ハイブリッド)」に分かれました。

 平均年齢が低く、女性がやや多いエリアには「軽自動車」が集まり、平均年齢が低くやや男性が多いエリアには「ミニバン」が集まっています。やや平均年齢が高いエリアには「コンパクトカー」が集まり、平均年齢が一番高く、男性寄りに「セダン」(といってもプリウスだけですが...)がポジションされています。「プリウス」はこの層に、セダンだから売れている、という訳ではないと思います。どちらかと言うと、ハイブリッドだからこのポジションなのでしょうか。

 ポジショニング・マップ(平均年齢×男女比)
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 次に平均年齢×平均世帯年収の軸にマッピングしたものを見てみましょう。ここでももう少し鮮明に先ほどの4カテゴリーをグルーピングすることができます。年齢が低く、年収が高いエリアは「ミニバン」。年齢が低く、年収が低いエリアは「軽自動車」。年収が平均くらいで年齢が高いエリアには「コンパクトカー」。そして年齢が高く、年収も高いエリアには「セダン」(というよりもプリウス)。

 このポジショニング・マップを見ていると、デフレが続き、若年世代の年収が上がらなくなって、「ミニバン」を購入したい世代が軽自動車に流れているという仮説が成り立つかも知れません。

 ポジショニング・マップ(平均年齢×平均世帯年収)
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【ファッションのトレンドとクルマの流行】

 今年の乗用車販売のランキング(日本自動車販売協会連合会の公開データ:軽を除く)を見てみると、1〜9月期で、トップが「プリウス」。以下「アクア」「フィット」「フリード」「ヴィッツ」「セレナ」「カローラ」「ノート」「ステップワゴン」「デミオ」となっています。トップ3はハイブリッドモデルで圧倒的なボリュームを占めていますが、エコカー補助金が今年の9月で終了して、今後はどのような売れ行きになっていくのでしょうか。

 以前、ファッションの動向とクルマの流行がシンクロしているのではないかと考えたことがあります。サラリーマンのみんながスーツを着ていた頃、売れていたのは「セダン」だった。エディーバウアーやLLビーンなどのアウトドアファッションが流行った頃には、パジェロなどの「4WD」が売れた。ユニクロなどの低価格なカジュアルファッションが話題になった頃「コンパクトカー」に注目が集まった。などの話です。今は価格が安くておしゃれなファストファッションが、賢い消費をイメージさせていると考えると、スマートに燃料代を抑えられる、賢い低コスト車=「ハイブリッド」が売れているということでしょうか。

 2000年代の最初の頃、日本でコンパクトカー戦争が始まりました。TOYOTAの「ヴィッツ」が発売され、それを追いかけるようにHONDAが「フィット」を発売。同じ頃に日産から「キューブ」が発売され、「マーチ」が全面リニューアルされる。このあたりから質の高いコンパクトカーが続々登場し、女性ユーザーを巻き込みながら今の市場を作ったのではないかと思います。ということで、次回からコンパクトカーの女性ユーザーについて見ていきたいと思います。


*データは「ぺるそね」調べ。2012年6月 n=31,444
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