8月度携帯電話契約数、前年対比で165%のUQコミュニケーションズ、Xi(LTE)の新規契約が支えるドコモ
高速モバイルインターネット(モバイルブロードバンド)がキャリア各社から出揃い、夏モデルも出揃い、そろそろ秋冬モデルの発表が近づいてきているということもあり、現在のキャリア契約状況についてチェックしてみました。
携帯電話の事業者別契約数が毎月発表されますが、新規契約から解約を引いた『純増』が、契約数の中でも注目されて毎月ニュースに取り上げられており、8月もソフトバンクモバイルが17ヶ月連続で純増トップということでニュースが流れましたが、ここでは少しだけ別な視点で、前月・前年と比較した数字を見て気になる点について。
年月 | 2011年8月 | 2011年7月 | 2011年6月 | 2010年8月 |
携帯電話総計事業者システム別純増数 | ||||
NTTドコモ【PDC】 | -75,900 | -73,000 | -92,600 | -146,400 |
au【cdmaOne】 | -10,200 | -7,000 | -8,500 | -7,400 |
NTTドコモ【W-CDMA】 | 167,400 | 184,200 | 197,800 | 271,900 |
ソフトバンク【W-CDMA】 | 239,000 | 245,000 | 191,700 | 288,900 |
EMOBILE【W-CDMA】 | 75,000 | 85,000 | 73,700 | 53,500 |
au【CDMA2000 1x】 | 83,300 | 115,100 | 110,700 | 64,100 |
NTTドコモ【LTE】 | 90,500 | 84,300 | 48,800 | - |
携帯電話総計 | 569,200 | 633,500 | 521,600 | 524,600 |
BWA(Broadband Wireless Access) | ||||
UQコミュニケーションズ株式会社 | 60,200 | 70,400 | 60,100 | 36,300 |
ソース:社団法人電気通信事業者協会 http://www.tca.or.jp/database/
1)前月対比と高速モバイルネットワーク対応ルーター(テザリング)商品の拡充
ドコモからXi対応のL-09C(下り37.5Mbps/LG・6月30日発売)、ソフトバンクからUltra Speed Wi-Fi 007Z(下り42Mbps/ZTE・7月8日発売開始)、イー・モバイルからPocketWi-Fi GP-02(下り42Mbps/Huawei・7月28日発売開始)、そして従前からのUQ WiMAX各種製品およびau HTC EVO WiMAXという高速モバイルネットワーク対応ルータ製品(EVOはテザリング対応フォンですが)が各社から出揃いました。
ドコモの場合は、USBタイプのXiデータ通信端末からスタートして、春以降は徐々に実績数値を上げてきましたが、このルータ製品の投入により、6月・48,800→7月・84,300→8月・90,500と着実に契約数を伸ばしています。
それも、ドコモのモバイルルータとして人気のBF-01Bの後継Xi対応機種BF-01Cの発売が遅れており、未だに発売されていない状況での実績です。更に、Xi対応タブレットの新商品2機種(富士通製F-01D・サムソン製SC-01D)が、10月以降のXi回線増加に寄与することが想定されます。
ソフトバンクモバイルおよびイー・モバイルは、回線種W-CDMAとなり、高速回線が統計数字として別れていないため、状況は掌握できませんが、GP02売り出し当初の品薄具合などから、両者ともに好調な実績を残していることが想定されます。
UQコミュニケーションズは、6月・60,100→7月・70,400→8月・60,200と他社の新製品に負けずに安定しており、エリア拡充の評判と販売各社のキャンペーンやプロモーションの持続的な効果がありそうです。
auに関しては、テザリング(Wi-Fiルータ機能)の使えるモバイルブロードバンドWiMAX対応端末が現時点ではhtc EVO WiMAXのみで、モバイルルータとしては、非高速のDATA06のみが新商品ということで、厳しい時期かもしれませんが、秋冬モデルでWiMAX対応フォン数機種をリリースすることでの伸びが期待されます。
新規契約数は、年々減少傾向にあるなかで、データ通信を中心とする新規契約獲得と、既存3G網を圧迫するスマートフォンによるデータ通信対策の両面で、今後の公衆無線LANサービスの活用など、モバイルキャリア各社の差が大きく開く可能性すら想定され、更にプラチナバンドの割り当てと併せて、ウォッチしなければいけないポイントになりそうです。
2)前年対比の伸び率
3ヶ月移動平均などは出さずに、ざっくりと比較可能な前年対比での伸び率チェックを行いましたが、以下のような結果に。
ドコモ:145%
KDDI:129%
ソフトバンクモバイル:83%
イー・モバイル:140%
UQコミュニケーションズ:165%
唯一、ソフトバンクモバイルが前年対比でマイナスという結果ですが、全てはiPhone5の販売がまだ開始されていない事が大きな理由でしょう。
未だにiPhone4がトップ10の上位に留まっていることが、純増No1を支えているポイントであり、また、モバイルルータも、貴重な回線増加のポイントになっていることが想定されます。
秋以降、iPhone5が市場に投入され、その他のAndroidスマートフォン数10機種が束になってシェアを争い、そこにMNP新規や複数台保有による買増し新規回線の純増対決が激化するはずです。
そして、前年対比No1は、UQコミュニケーションズです。前述の通り、エリア拡大は進み、販売施策も当たっているでしょうし、低額・高速のモバイルブロードバンドネットワークとして、ブルーのガチャピンとムックというキャラの採用など、CMによる認知度アップを継続的に図ってきていることも、この結果に繋がっているものと想定されます。
今後は、10月に入ると、冬春モデルを中心とする新製品が発表されます。 タブレット端末のラインナップ拡充と、Androidスマートフォンモデル数の大幅な増加が予想されており、徐々に差別化も厳しくなることが予想されます。
また、従前にも増して、新機種としての発売開始から非常に短期間で、MNPまたは新規での購入におけるユーザのベネフィット(キャッシュバックや大幅な割引)が散見されることから、高くても売れる人気機種と早々に値下げを余儀なくされる機種、いち早く新製品を手にしたい一部のユーザと、少し間をおいてでも安く手にしようというユーザに分かれ、早々に購入したユーザからは信頼を無くし、価格が下落しないと多くの端末が捌けないような流れが継続するとなると、キャリア・メーカーの収益を圧迫することにも繋がりそうです。
更に、Android端末は、Apple社などの訴訟により、海外での販売差し止めが実際に発生しているなどリスクが高まっており(NTTドコモの8日の新製品発表会における山田社長の楽観的な表現に裏付けがあるのか気になるところですが)、また、マイクロソフトのWindows Phoneは国内での担ぎ手が限定的な点も、踏まえて、今後の新製品・販売シェア・純増の動向に注目したいと思いますが、そのキーポイントは、iPhone5/iOS5・Ice Cream Sandwich・LTE/WiMAX・Andridタブレットといったところでしょうか。
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