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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(104) 東日本で奇形魚続出というデマについて

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こんにちは。本職は文書作成能力向上コンサルタントの開米です。たまにエネルギーや安全保障問題について書くのは趣味です。

さて、相変わらず、放射能影響デマがはびこってますね。

『東日本で相次ぐ奇形魚! 目が無い金魚や背びれが曲がった魚! 千葉県の漁師「奇形魚は線量が高く、回転寿司などへ」』

という情報(不愉快なのでリンクは載せませんが、ぐぐればすぐわかるはずです)を目にしましたが、こういうのは典型的な「恐怖煽りデマ」なので、騙されないでください。

奇形なんてのは自然状態でごく普通にあります。それを原発事故に関連づけて写真つきで見せると、一見、因果関係がありそうに見えるだけです。原発事故直後から何度も繰り返されてきた「放射能奇形デマ」の1パターンです。

広島、長崎の原爆被爆者の子孫にさえ、遺伝的影響は確認されていません。

原爆被爆者の子供における放射線の遺伝的影響 - 放射線影響研究所
「これまでのところ原爆被爆者の子供に臨床的または潜在的な影響を生じたという証拠は得られていない。両親の平均被曝線量が比較的低いこと(被曝線量の中央値は父親母親ともに約0.14 Gy)を考慮すれば、この結果は驚くべきことではない。」
↑この情報は原子力災害に関して本気で調べ始めるとすぐに見つかる基本情報のひとつなんですが、一般にはまだあまり知られていないようです。なぜ知られていないのでしょうか?

理由は簡単で、主要なマスコミがこの情報をきちんと流さないからですね。
「安全です」「平常運転中です」という情報はニュース価値がないからです。
報道機関はどうしても「異常」「危険」を報道したがります。

そういうバイアスがあるにもかかわらず、「東日本で奇形魚続出」なんて話を報じているのはあやしい個人ブログぐらいです。
漁協や県の水産課などの「奇形魚の増加データは出ていない」という公的機関を信用せずに、うさんくさい個人のブログを信用するのはなぜですか? 目立ちたいがためにおおぼらを吹く人はそこらじゅうにいます。この奇形魚続出という話もその手のガセネタです。

だいたいこの種の「隠された真実を暴く」系のサイト/個人は「大手メディアで報道されていないのは、国と結託して隠蔽しているからだ」といった主張をすることもよくありますが、こんな話が本当だったら恐怖煽り好きなマスコミが飛びつかないわけがないです。

もうひとつ、デマ情報を見抜くために実用的に役に立つ判断基準としてこういうものがあります。

うげえええと言うようなショッキングな写真がてんこ盛りのサイトは、それだけでデマ率99%
脳や身体にストレスを与えるのは、判断能力を低下させるための基本テクニックのひとつで、「ショッキングな写真」はそのためによく使われる材料のひとつなんです。ですので、そういうものを多用しているサイトはほぼデマのカタマリと思って間違いありません。


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