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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

ロジックの構成要素を離して書いてはいけない

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 こんにちは、「わかりやすく書く」力を向上させるための企業研修を手がける開米瑞浩です。

 昨日の「わかりやすく書く」ための地味~な習慣の続きです。

 まずは原文を再掲↓

例文:経営目標

【経営目標】
全社一体となって業務全般の徹底した効率化を進めるとともに、お客様満足の獲得を目指した営業活動を積極的に展開することで売上を拡大し、利益水準の維持・向上を計っています。
利益目標:連結経常利益 1200億円

それを短文に分解したものはこれ↓

S1:全社一体となって業務全般の徹底した効率化を進めます
S2:お客様満足の獲得を目指した営業活動を積極的に展開します
S3:それによって売上を拡大します
S4:また、利益水準の維持・向上を図っています

 でした。

 そしてビジネス常識から言って「売上」に直結するのは「営業活動」であろうということで、S2→S3の関連性(因果関係あるいは目的と手段の関係)を読み取れるということでした。

 こうして「どれとどれが関連づくか」を考えると、おおまかにこういう関係ではないかと思われます。

2013-0528-01.JPG

 S4の「利益水準の維持・向上」については、もちろん「S3 売上拡大 → S4 利益水準の維持・向上」というロジックも成り立つものの、この場合は「S1:業務効率化 → S4:利益水準の維持・向上」の結びつきのほうが強そうです。
 実際、ビジネス常識から言っても「売上拡大」は必ず「利益拡大」につながるとは限りませんが、業務効率化をすれば必ず利益は拡大します(売上が落ちなければ、ですが)。

 しかしこうしてみると、S1→S4とS2→S3というロジックが1つの文の中に存在したわけですね。問題はS1→S4が「離れている」ことです。

2013-0528-02.JPG

 どうしても、「離れているもの」は「関係があることが読み取りにくく」なるため、こういう書き方は基本的に避けたほうが無難です。

 そのための実用的に手っ取り早い方法は、「1つの文を短くする」ことですね。
 1文を短く書こうとすると、どうしてもロジックを直結する書き方になります。

S2+ S3:お客様満足の獲得を目指した営業活動を積極的に展開し、売上を拡大します
S1+S4:全社一体となって業務全般の徹底した効率化を進め、利益水準の維持・向上を図ります

 こういう書き方をすれば、何と何が関連づくのかについて誤解を与える余地はありません。 (欠点がないわけではありませんが、長くなるので略)

 ということで今回の結論は、

ロジックがつながる部分を離して書かない

 ということ。これが「わかりやすく」するための基本的な原則なのです。

 ★ ★ ★ 

 この例題、まだ続きます。次回はS3とS4に注目します。

2013-0528-03.JPG

 ↑こうしてS3とS4を比べてみると、微妙に違和感を感じませんか?
 S4もS3と同じように「利益拡大」と単純に書けそうな気がしますがどうして「利益水準の維持・向上」なんてまわりくどい書き方をしているんでしょうね?

 情報を分解・分類していくと、こういう「表現スタイルが揃っていない部分」が目立ち、気にかかるようになります。これも情報の理解を深めるための重要なポイントなので、次回はその話です。

        ・・・・続く

(注:この話題は、私の著書「最強のビジネス図解ワークブック」掲載の例題を当ブログ向けに再構成して書いています)
 


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