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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(74)電力需給の件その2

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 本業は文書化能力向上コンサルタント、余技で原子力論考を書いている開米瑞浩です。

 一昨日、こういうことを書いたわけですが

原子力論考(73)このところの電力需給が厳しい件について
 
 今日になって↓こういう記事を目にしましたので

"[緊急特集]大丈夫か?!東京電力の冬の供給力 - スマートジャパン"

 ↑この記事を読む上で関係がある情報をいくつか提供します。

 以下、[緊急特集]とある引用は同記事から。

[緊急特集]火力発電所のトラブルは珍しくなく、2基の運転停止で需給率が100%に近づくようなことは通常では考えられない。東京電力が供給力を抑えて余裕のない状態を継続していた可能性が大きい。

 「火力発電所のトラブルは珍しくない」のはその通りです。実際、この夏以降でも

富津火力第4系列第2、3軸、
千葉火力発電所第3-2号機

 なども故障しています。だから予備力に余裕が必要なのですが、原発停止がその余裕を奪っているわけです。


緊急特集]東京電力は昨年の12月から、毎日の電力需要のデータをウェブサイトで公開している。それを見ると12月1日(木)には4310万kW、続く2日(金)には4440万kWの需要があり、今年の11月28日を大きく上回っている(図4)。
 問題になった11月28日の需要は想定できる範囲にあったわけだ。にもかかわらず、供給力は昨年の12月初めと比べて300万kW以上も少ない状態だった。

 「昨年の12月初めと比べて供給力は300万kW以上も少ない状態だった」のはなぜか。

緊急特集]実際には十分な供給能力があるはずだが、発電と受電のコストを抑制するために、最低限の供給力を維持しようとしても不思議ではない。

 ・・・という書き方をしていますが、その理由の大半は、1年前にはまだ柏崎刈羽原発5,6号機の2機合計約246万kWが動いていたことです。

緊急特集]東京電力が11月初めに発表した今冬の見通しでは、1月と2月に5000万kWを超える需要が想定されている(図3)。今年の夏は8月30日(木)の14 時台に5078万kWを記録したのが最高で、この時の需給率は93%だった。冬の寒さが厳しくなると同程度の電力が使われるため、夏を上回る供給力を2月の ピークに合わせて準備する予定になっている。

 同記事中に書かれている通り、「冬の寒さが厳しくなると、(夏と)同程度の電力が使われ」ます。
 ということは、

夏と冬の電力供給力を維持するためには、その間に定期点検をやらなければいけない

 ということです。

 となると、8月と1月の間の9~12月の4ヶ月しかありません。
 4ヶ月もあるじゃないか、と思いたいところですが、前回も紹介したとおり、

「大型火力発電所ともなると点検箇所も膨大になり、同時に補修工事を行うため「約3~4ヶ月かかる場合もあります(by中部電力)」

 今止めて点検しなかったらいつやるの? という話です。ただでさえ、老朽火力の再稼働、定期点検の延期に加えて「増出力運転」という禁じ手まで使って夏のピーク電力を確保していたのに、この時期に止めて点検しなかったらどんな事故が起きることか・・・・・

 原発を止めておくことが火力発電所にギリギリの運用を強いることになり、その結果、電力会社が設備をメンテナンスする余力も失わせ、大停電の危機を招いているという現実を私たちはしっかりと認識するべきです。

 それでも、原発を止めておきますか?

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