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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

知識を構造化しよう-実際の場面をイメージしてみる

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 前回、知識を構造化するためにまずは「順番が適切かどうかを考える」ことが有効だと書きました。そこで、食中毒予防のポイントの順番を考えて、「お店で食材を買う」ところから「食べ残しを保管する」ところまで、時間軸に並べてみたのがこの案でした。

【時間軸に沿って並べ替えたバージョン】
E:食材を買うときも新鮮なものを選ぶ。家に着いたらすぐ適切に保管する
B:料理をする前に手を洗うこと
C:まな板や包丁やお鍋なんかもキレイに洗う
D:しっかり加熱する
A:(食事の前に)手を洗うこと
F:食べ残しを取っておく容器もキレイなものを使う
(原文の出現順に記号を振っているので、Aから始まっていません)

 でも、↑これも実は微妙におかしなところがあります。
 いったい何がおかしいのか?

 それを判断するには、文章を読むのではなく、その文章が表している実際の場面をイメージしてみることが大事です。

 たとえば上記の箇条書きでは「買う」とか「料理をする」といった行動について書かれていますが、こういった「文字として書かれた言葉」は、下図の中央、「文書」に該当します。



この「文書」を私たちは読んで考えようとしますが、

    「文書」というのはそれ自体に意味があるのではなく、
    「文書が表している大元の現実世界の出来事」のほうに意味がある


 ことを結構忘れがちです。文書を読むのではなく、「この文書が表している現実世界の出来事は何か?」と考えて、現実世界をイメージすることが大事なんですが、これが意外にできないものです。

 たとえば、下記3か条

B:料理をする前に手を洗うこと
C:まな板や包丁やお鍋なんかもキレイに洗う
D:しっかり加熱する

 についてです。手と調理器具をきれいに洗ってから料理をする、料理をするときはしっかり加熱する、という話ですから、一見すると特に問題なく、正しいことを言っているように見えます。実際、間違っているわけではありません。

 しかし、実際にこの通りの手順で自分が料理をするシーンを想像してみましょう。
 すると、不自然なことに気がつきます。

 何が不自然か、というと

    「調理器具を洗う」のは、
    普通は料理に使った「後」であって、「前」ではない

 ということです。
 料理に使ったまな板や包丁やお鍋を、次の料理をする直前まで洗わずに放っておくことは考えられませんよね? 100歩ゆずって「鍋」ならまだそれでも良いとしても、まな板や包丁はすぐに洗って乾燥させなければ、雑菌が増えたりさびたりと、まずいことが起こります。
 ということを考えると、このBCDの3か条は本当はこうあるべきだったのです。

B:料理をする前に手を洗うこと
C1:調理器具が清潔であることを確認する
D:しっかり加熱する(調理する)
C2:調理器具は使ったらすぐにキレイに洗っておく

 あらためて書きますが、文書になったものだけを読んでいてもこのことには気がつきません。文書上は論理的に矛盾がないように見えるんです。でも、それを現実世界で実行するシーンをイメージすると、不自然だということに気がつきます。

 こういうケースは非常に多いので、私たちは文書を読むときに、書かれている文言を単に読むのではなく「それが現実世界の何を意味しているのか」を連想しながら、イメージしながら読むことを習慣づけなければなりません。これをしないと、「論理的には矛盾がないように見えるが現実的でないもの」に気がつかず、非現実的なふわふわした文書がそこらじゅうにはびこってしまいます。

(続く)

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