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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

知識を構造化しよう-まずは順番が適切かどうかを見る

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 自律的に考えて自分で動ける人材を育てるためには、「教える」のではなくことあるごとに「考える」ことを求めなければいけませんが、

 「考えろ、考えろ、考えろ!」 
 と連呼すれば考えられるようになるか、といえば、なりません。

 子供が泳げるようになるためにはたとえば「水に慣れる」とか「身体の力を抜く」とか、たどらなければならないステップがあります。一足飛びに水に放り込んで「死にたくなければ泳げるようになれ!!」なんて問答無用の教育をやっても、それで泳げるようになる子と、逆に水がトラウマになり苦手意識を持ってしまう子の両極に分かれるだけ。

 できない子をできるようにするためには、1つずつ段階を踏んで達成感を味わいながら「次のチャレンジ」ができるように、うまく補助線を引いていく必要があります。

 そんな「補助線」の鍵になるのが、「知識の構造化」です。

 「知識」は構造化しなければなりません。
 構造化したうえで一部を欠落させておいて質問する、と、「構造を手がかりにして欠落部分を推定する」という「思考」を引き出しやすくなります。つまり「構造化」は「考えるための補助線」になるんですね。

 というわけで実際やってみましょう。
 またしても「食中毒予防のポイント」を事例に出しますが、下記に掲載した「先生」の説明はまったく構造化されていません。これを構造化してみましょう。

 構造化を考える際にまず気をつけて欲しいのは、「順番」です。
 下記の先生の発言中、A~Fまで記号を振ったポイントについて、「最も適切な順番」を考えてみましょう。

【事例:食中毒予防のポイント】
先生:大事なのは、まずは、【A】手を洗うこと。忘れないでね。
生徒:そういえば、ご飯を食べる前に手を洗いなさいってよく母に怒られました。
先生:ご飯を食べる前だけじゃないですよ。【B】料理をするときもね
生徒:あ、はい
先生:【C】もちろん、まな板や包丁やお鍋なんかもきちんとキレイに洗って置かなきゃダメよ
生徒:はい!
先生:あと、火を通せる料理だったら【D】しっかり加熱することね。
生徒:はい!
先生:そもそもの話を始めたら、【E】お店で食料品を買ってくるときも新鮮なものを選ぶこと、家に着いたらすぐに冷蔵庫や冷凍庫で保管するのも忘れないで
生徒:はい!
先生:あと【F】食べ残したものを取っておく容器もちゃんとキレイなものを使う! いい? わかった?
生徒:わかりました!

 以上が原文ですが、とりあえずA~Fを抜き出してみましょう。

    A:手を洗うこと
    B:料理をするときも手を洗うこと
    C:まな板や包丁やお鍋なんかもキレイに洗う
    D:しっかり加熱する
    E:食材を買うときも新鮮なものを選ぶ。家に着いたらすぐ適切に保管する
    F:食べ残しを取っておく容器もキレイなものを使う

 これに順番つけるのか、うーん・・・・とうなって考えてもよくわからない、という場合、実際に自分がその仕事をしているシーンを思い浮かべてみるのは良い習慣です。
 そうすると、E→Fのつながりがおかしいことに気がつきますね。

 Eはお店で食材を買う話。Fは食べ残しを保管する話。
 おい、いつ料理作って食べるんだよ? ということです。どうも時間軸がおかしいですね。時間軸に沿って並べ替えてみましょう。

    【時間軸に沿って並べ替えたバージョン】
    E:食材を買うときも新鮮なものを選ぶ。家に着いたらすぐ適切に保管する
    B:料理をする前に手を洗うこと
    C:まな板や包丁やお鍋なんかもキレイに洗う
    D:しっかり加熱する
    A:(食事の前に)手を洗うこと
    F:食べ残しを取っておく容器もキレイなものを使う

 これでいいでしょうか? 何かおかしくないですか?

 ・・・という具合に、微妙におかしなものを見せて直させる、というのも、「考えさせるきっかけ」としては非常に効果的です。

(続く)

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