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キングジムファイリング研究室の野原淳です。情報を収集し、蓄積し、検索し、作成し、活用する一連の流れを、便利に、楽しく、速やかにする整理のしかたや工夫、便利なツールなどについて私の考えを書いていきます。コンサルティングでは話さない、小さな改善や未完成のアイデアなども紹介したいと思います。

答えはすべてお客様の中にある!

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 皆さんこんにちは。キングジム、ファイリング研究室、コンサルタントの野原です。

 お客様から寄せられるファイリングに関する質問にお答えるしていると、良く思うのがこの「答えはすべてお客様の中にある」と言うことです。まずは十分そのことについて認識していただいたうえで、質問に答えていきたい、そういう前提みたいなものですね。今日はそのお話をいたしましょう。

 

【一問一答には限界あり】

 質問の内容は、やはりファイリングテクニックに関するものが多いです。具体的には「誰にでもわかる簡単なテクニックが知りたいです」「すぐに効果が出る方法を教えてください」と言ったものですね。

 ファイリングはお客様によって状況が違います。お客様にとって何が「いい」のかはすべて違いますし、やっている仕事も千差万別。意識レベルも違いますから、そこに打つべき施策はこれだけの情報で「これです」とはなかなか言えません。

 こういう質問をしてくるお客様が悪いと言いたいのではありません。質問をダラダラ書きたくないとか、お客さまもいろいろ考えてのことでしょうし、そもそも質問欄に細かく書くほどスペースがないとか、お客様以外の部分の問題もあると思うので、仕方ないと思います。

 ただ、これだと結局は「使ったものを元に戻してください」とか、そういうどこでもだれでも絶対に当てはまるアドバイスしかできないのは事実です。でもこれだと「そんなの知ってるよ」と、がっかりされてしまう。

 これ以上のアドバイスをさせていただくにはやはりヒアリングにお伺いする必要がありますね。お電話でお話させて頂くのでもだいぶ違うと思います。

 ただ、この先のアドバイスも「使ったものを元に戻す」「要らないものは捨てる」「文書は個人管理しない」などの大前提の延長上にあるもので、これを覆すようなものは当然ながら出て来ません。

 やはり、「しっている」から「している」へパラダイムシフトをしていただく必要があります。これは「すぐできるテクニックを教えてください」の真意を探る」にも書いてありますのでご参照ください。

 

【現場にあるのは山のような選択肢】

 「全てはこの質問から始まる- 何に困っていて、どうしたい?」にも書きましたように、まずはお客様の中にある問題点を探っていくことから始めます。

 まず、お客様が何に困っているのか?ですよね。この時点からすでにお客様ごとの違いが始まっています。

 困っていないのに改善などできません。ただ、明らかに非効率なのに、お客様自身それに気づいていないということもあります。そう言う所は指摘しなければいけません。ただ、その上でそこを修正しようとするかどうか。最後はお客様の判断です。

 「お困りごと」が挙がった時点で今度はどうしたいのかを決めて行きます。お客様によってかけられる時間は違います。完璧な状態をゴールとする必要は必ずしもありません。ある一定のリターンがある状態で良ければ、それ以上の施策は不要。ファイリングはここ一発ではありません。継続しなければいけないのです。とかく導入時は身の丈以上のゴールを設定しがちです。コンサルタントは一歩引いて、お客様が深入りしすぎないようにしたり、難しそうだったらそれはまずこの部分が定着してからにしましょう、とアドバイスしたりします。

 ゴールが決まれば、今度はどこから手を付けるか、優先順位を決めます。お客様が何を求めているか、セキュリティなのか、効率化なのか、見た目をきれいになのか、それに応じて求めるものを大きく妨げている要因は何か。短期に効果が出るものから手を付けるか、時間がかかっても目的に大きく近づけるものに手を付けるか。色々な要因から選定して、提案します。

 

【答えはすべてお客様の中にある!】

 ファイリングがとにかくお客様の数だけあって、それに合ったやり方もまた、お客様の数だけある、と言うのがご理解いただけたでしょうか。コンサルタントはテクニックという多くの引き出しを持っていますが、それはお客様にとって、まだ材料にすぎません。引き出しから出して、すぐ使うよりも、やっぱりお客様自身に合った方法にカスタマイズした方が、より効果を狙えます。

 そしてそれが本当にフィットしているかどうかの最終判断は、これはお客様にしかできません。コンサルタントには出来ないのです。理由はもうお分かりかと思いますが、お客様の業務に一番詳しいのは、お客様自身ですし、そのあと継続するのもまたお客様、それによってメリットを享受するのもお客様だからです。

 「捨てない」とか「元の場所に返したくない」とか、「すべて個人で持ちたい」とか、よほど大原則に反しているときや、どう考えてもそれは明らかに続かないでしょ、と思ったときでもなければ、お客様の判断が間違えているとは言い切れません。

 コンサルティングにはそれなりに時間をかけます。私もその間お客様の業務に少しでも詳しくなれるよう、色々努力します。しかし、それでも、十数年のプレイヤーの方と同レベルの知識を得るのは到底不可能です。お客様と同じ判断基準に立つことはできません。

 たくさんの引き出しにあるものから、「これとこれならいかがでしょうか」「これが合っているんじゃないですか」「この技のここをこう変えてみてはどうでしょう」と、アタリを付けることはできます。お客様と長くお付き合いすることで、この精度はかなり上がります。しかしながら、「うん、やっぱりこれだね」と言う判断を下せるのは、そのテクニックをこの先も使い続ける、お客様自身でしかないのです。

 そうしていくうちにお客さまも自身も、ファイリングの知識を身につけ、自分自身でどこにどういうテクニックをどの程度投下していけばいいかを自己判断できるようになります。

 このブログで繰り返し申し上げていますように、ファイリングテクニックは難しいものはほとんどなく、「何だそんなことか」と思うものの方が多い。コンサルタントがお客様の所に置いていくのはファイリングテクニックよりも、何を取って何を捨てるか、どこまで縛りどこまで許すか、テクニックを自分たち仕様にカスタマイズする方法といった、判断力や選別眼のようなものだと思います。

 それが身につかなかったら、いつまでもコンサルタントについて教えてもらわなければなりません。書類管理は仕事に欠かせない重要な一部分です。それが自分たちで完結できないのは、本来の姿ではありません。私はそう思います。

 

【何かを得れば、何かを失う】

 なぜ、そうした判断力が必要なのでしょうか。

 それは、「何かを得れば、何かを失う」からです。

 世の中のこと全てそうだと私は思います。良いと思った何かにも、必ずデメリットがセットになって付いて来きます。時系列に並べれば案件別で探すことはできません。用紙の上端に色分けの付箋を付けるなどの工夫をすれば、ある程度解決できますが、今度は手間がかかり、かけがえのない時間を失います。

 だから、この例でいけば、時系列で探すことがほとんどだから、案件別で探せなくても大して困らないと言う人にしかお勧めできないわけです。それは仕事の仕方によって違うわけで、誰にでも共通するものではありません。

 厚型ファイルを選ぶか、ボックスファイルか。
 紙か、電子か。

 どちらを選んでも全てメリットとデメリットがセットでやって来ます。最も得たい部分がメリットとなっていて、なくても大して困らない所にデメリットがあるものを正しく選択していくこと、それがファイリングテクニックです。

 だから自分の仕事を見通せないと良いファイリングは手に入りません。

 -答えはすべて、お客様の中にある-

 おそらく、ファイリングが出来る人は、仕事も見通せているはずです。おのずと仕事も上手く行く。私はそう思います。

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