デジタル・トランスフォーメーション(3/5)デジタル・トランスフォーメーションの定義
■デジタル・トランスフォーメーションの定義
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」
2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したデジタル・トランスフォーメーションの概念です。彼は、デジタル・トランスフォーメーションに至る段階を3つのフェーズに分けて説明しています。
- 第1フェーズ:IT利用による業務プロセスの強化
- 第2フェーズ:ITによる業務の置き換え
- 第3フェーズ:業務がITへ、ITが業務へとシームレスに変換される状態
第1フェーズ:IT利用による業務プロセスの強化
業務の効率や品質を高め、それを維持してゆくために、業務の仕組みや手順、すなわち業務プロセスの標準化が行われてきました。そしてマニュアルを作り、現場で働く従業員にそのとおり守らせることで、標準化された業務プロセスを徹底させ、業務の効率や品質を維持してきたのです。しかし、人間がそこで働く以上、徹底した業務プロセスの遵守は難しく、ミスも犯します。そこで、標準化された業務プロセスを情報システムにして、現場で働く従業員にこれを使わせることで、業務の効率や品質を確実にしようというのです。言葉を換えれば、紙の伝票の受け渡しや伝言で成り立っていた仕事の流れを情報システムに置き換える段階です。
第2フェーズ:ITによる業務の置き換え
第1フェーズは、人間が働くことを前提に、標準化された業務プロセスを現場に徹底させるためにITを利用する段階でした。その業務プロセスを踏襲しつつも、ITに仕事を代替させ自動化するのがこの段階です。これにより、人間が働くことに伴う労働時間や安全管理、人的ミスなどの制約を減らし、効率や品質をさらに高めることができます。
第3フェーズ:業務がITへ、ITが業務へとシームレスに変換される状態
人間が働くことを前提に最適化された業務プロセスを、機械が働くことを前提に最適化された業務プロセスへと組み替え、さらなる効率と品質の向上を実現しようという段階です。さらに、業務の現場での「ものごと」をデータとして把握し、ITで最適解を見つけ出し、それを現場にフィードバックし、一層の改善を図ろうとします。言うなれば、ビジネスの現場とITが一体となって改善活動を繰り返しながら、ビジネスの価値基準、すなわち期間やコスト、品質などの常識を変革しようというわけです。デジタル・テクノロジーを駆使して、業務プロセスやビジネス・モデルを変革する段階と読み替えることもできるでしょう。
この第3フェーズになることで、デジタル・トランスフォーメーションが達成されるとしています。
■ デジタル・トランスフォーメーションを支えるテクノロジー
調査会社IDCは、ITプラットフォームには、第1のプラットフォームから第3のプラットフォームがあるとしています。
- 第1のプラットフォーム:集中処理型のコンピューターシステム
- 第2のプラットフォーム:クライアント/サーバーシステム
- 第3のプラットフォーム:クラウド・ビッグデータ/アナリティクス・ソーシャル技術・モビリティーなど
現在は、第2プラットフォームから第3のプラットフォームへのシフトが進んでいる段階だとしています。
IDCはデジタルトランスフォーメーションを「企業が第3のプラットフォーム技術を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義し、これに投資することが、今後の企業の成長にとって重要であるとしています。
また、デジタル・トランスフォーメーションは、「第3のプラットフォーム」を導入するだけで実現できるものではないとも述べています。これらテクノロジーはあくまでも手段であり、従来の業務プロセスやビジネス・モデルの変革が実現しなければ、デジタル・トランスフォーメーションにはなりません。ストルターマン教授が提唱する第3フェーズに至って、はじめて実現するのです。
この変革を促進するものとして「イノベーション・アクセラレーター」の存在をあげています。具体的にはIoTや人工知能(AI)、ロボティクス、3Dプリンティング、次世代セキュリティーなどです。これらテクノロジーの発達とともに、これまでにはできなかったことができるようになり、「人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」社会へと発展するとしています。
【出典・関連図書】
- INFORMATION TECHNOLOGY AND THE GOOD LIFE Erik Stolterman & Anna Croon Fors Umeå University /2004 (PDF)
- 国内デジタルトランスフォーメーション(DX)成熟度に関するユーザー調査結果を発表
SI事業者/ITベンダーのためのデジタル・トランスフォーメーションの教科書
デジタル・トランスフォーメーションとは何か、SI事業者やITベンダーはこの変化にどう向きあえばいいのかを1冊の書籍にまとめました。これが「SI事業者/ITベンダーのためのデジタル・トランスフォーメーションの教科書」です。PDF/A4版・109ページのデジタル出版です。紙の書籍にすると200ページくらいのボリュームにはなると思います。もちろん、前著同様に掲載したチャートは全てロイヤリティ・フリーでダウンロードできるようにしています。
いまと未来を冷静に見つめ、SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーションにどう向きあえばいいのかを考えるきっかけになればと願っています。
内容は以下の通りです。
- デジタル・トランスフォーメーションとは何か
- デジタル・トランスフォーメーションの定義
- デジタル・トランスフォーメーションを支えるテクノロジー
- SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション
- デジタル・トランスフォーメーション時代に求められる人材
ITビジネスの未来は大いに開けています。ITは私たちの日常や社会活動にこれまでにも増して深く関わり、アンビエント(環境や周囲に溶け込む)になっていくでしょう。そこには新たなビジネスチャンスが待っています。しかし、そのチャンスを見つけるためには、視線を変えなければなりません。もはやこれまでのSIビジネスの視線の向こうには、新しいビジネスチャンスはないのです。
じゃあどうすれば良いのでしょうか。本書で、そのための戦略と施策を考えるきっかけを見つけていただければと願っています。
【募集開始】新入社員ための最新ITトレンド研修
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。デジタル・トランスフォーメーションの到来は、これからのITビジネスの未来を大きく変えてしまうでしょう。
しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることはありません。
そんな彼らに「ITトレンドの最新の常識」と「ITビジネスに関わることの意義や楽しさ」についてわかりやすく伝え、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと「新入社員ための最新ITトレンド研修」を昨年よりスタートさせました。今年も7月17日(火)と8月20日(月)に開催することにしました。
参加費も1日研修で1万円に設定しました。この金額ならば、会社が費用を出してくれなくても、志さえあれば自腹で支払えるだろうと考えたからです。
社会人として、あるいはIT業界人として、厳しいことや頑張らなくちゃいけないことも伝えなくてはなりません。でも「ITは楽しい」と思えてこそ、困難を乗り越える力が生まれてくるのではないでしょうか。
- ITって凄い
- ITの仕事はこんなにも可能性があるんだ
- この業界に入って本当に良かった
この研修を終えて、受講者にそう思ってもらえることが目標です。
よろしければ、御社の新入社員にもご参加いただければと願っております。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
LiBRA 5月度版リリース====================
- SI事業者/ITベンダーのための「デジタル・トランスフォーメーションの教科書」をリリース
- 「ITソリューション塾・第27期」の最新コンテンツ
- その他、コンテンツを追加
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【新規掲載】SI事業者/ITベンダーのためのデジタル・トランスフォーメーションの教科書
- 教科書 全109ページ
- PDF版
- プレゼンテーション 全38ページ ロイヤリティフリー
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「ITソリューション塾・第27期」の最新コンテンツを追加
メインテーマ
ITトレンドの読み解き方とクラウドの本質
ソフトウェア化するインフラと仮想化
クラウド時代のモバイルデバイスとクライアント
IoT(モノのインターネット)
AI(人工知能)
データベース
ストレージ
これからのアプリケーション開発と運用
これからのビジネス戦略【新規】
知っておきたいトレンド
ブロックチェーン
量子コンピュータ
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サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】伝統的なやり方とIoTの違い p.19
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】人間にしかできないコト・機械にもできること p.100
インフラ&プラットフォーム編
【新規】仮想化とは何か p.68
【新規】仮想化の役割 p.70
【新規】サイバー・セキュリティ対策とは何か p.125
【新規】脆弱性対策 p.127
クラウド・コンピューティング編
【新規】コンピューターの構成と種類 p.6
【新規】「クラウド・コンピューティング」という名前の由来 p.17
【新規】クラウドがもたらすビジネス価値 p.26