営業力は想像力
「ご提案させて頂く範囲は理解できました。しかし、プロジェクトをスタートさせるにはさらに詳細な計画に落とし込まなければなりませんよね。その人材については、予算として考えられていますか?」
なかなか鋭いところをついてくる営業だ。
「その通りですが、まずはこれでトップの了解を得なければ先へすすみませんからね。」
不安をにじませながらの回答に彼は次のように答えた。
「ならばその先の工数も見越して見積を考えておきましょうか。」
営業の仕事には様々な能力が必要となるが、最も要となる能力は「想像力」だろう。
相手が何を期待しているのかといったことばかりでなく、相手が期待もしていなかったことを的確に指摘し、提案してくる能力だ。
与えられた情報の範囲で考えを留めるのではなく、与えられた情報から派生する様々なことを想像し、全ての情景を描く能力とも言える。そして、そこに気になることがあれば、相手に事実を確認する。仮説を組み立て検証する能力ともいえるだろう。その繰り返しが、物事の本質、つまり相手の真のニーズを明らかにする。
真のニーズは必ずしも相手が具体的に求めてくるとは限らない。むしろ求めてくるのは、サーバーの増設、クラウドの採用、ソフトウェアの選定などといった手段だ。しかし、ニーズはその手段を使用して結果として解決したいこと、つまりは、あるべき姿の実現だ。そのあるべき姿を見つけるためには、想像力を働かせ、「結果として、こうなりたいに違いない」といった仮設をたてて、それを相手に確認し検証しなければならない。この繰り返しが相手の真のニーズを明らかにする。
このような能力を養うには、常識としての知識を積み上げる努力が大切だ。経営のこと、技術のこと、経済のこと、組織のこと、相手の仕事のことなど幅広い知識が想像力の源泉となる。もうひとつは、「経験」だ。「体験」ではない。「体験」とは事実として感じたこと、その体験を考察し一般化することで、次に活かせる知恵として身体に組み込んだものを「経験」と言う。
体験の場数を踏めばいいというのではなく、その体験から規則や法則、方法論を身につけ、「経験」に昇華させてこそ、相手の言葉から想像が拡がるのだ。
そうやって身につけた想像力は「妄想」として自分の中でうやむやにするのではなく、相手にぶつけて確認することで、さらに鍛えられる。その積み重ねが、「営業としての鋭さ」に磨きをかける。
想像力は思い遣りでもある。相手状況や気持ちを理解しようと想像力を働かせることで生まれる。愛情と言ってもいいだろう。そのような気持ちを持ててこそ営業はお客様に信頼される。
「営業力は想像力」とは、仕事を要領よくすすめるために欠かすことができない能力であるととともに、相手の信頼を得るための人間力の源泉といってもいいだろう。
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- 「製造業のサービス化」を新規追加しました。p.31
- 「IoTで変わるビジネス価値」を新規追加し、解説を加えました。p.32
- 「ビジネス価値の進化」を新規追加しました。p.33
- 「機器のイノベーションとビジネス戦略」を新規追加しました。p.41
- 「CRMとトータル・エンジニアリング・サービス」を新規追加しました。p.55
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