相手の気持ちは変わったのに、まだ過去にしがみついている貴方のために

» 2015/01/27

SI事業者はお客様の内製化を支援する

複合機メーカーはペーパーレス・ソリューションを提供する

アプリケーション・パッケージ・ベンダーはサービスを売る

一見すると自分で自分の首を絞めるようなビジネスにこそ、商機があると私は考えている。

SI事業者は、これまで品質やコスト効率を高めるためにシステム開発や構築のノウハウを蓄積してきた。それが、競争力の源泉だった。そして、ユーザー企業は、これら業務をSI事業者に依存してきた。しかし、この状況が今大きく変わり始めている。

経営スピードへの迅速な対応、内部にだぶつきはじめた情報システム要員の再活用、一層のコスト削減は、開発の内製化を促している。しかし、彼等にはそのスキルも要員も不足している。この状況を冷静に考えれば、SI事業者のノウハウこそ、是非とも手に入れたい。プロジェクト管理、業務分析、プログラミングとテストなど、内製化に必要なノウハウを提供するためのビジネスを立ち上げるというのはどうか。

開発の標準化やフレームワークの整備、業務分析やコンサルティング、開発スキルの研修などが考えられる。お客様を自分達の会社に出向させノウハウを定着させる。そういうやりかたもあるだろう。

受託開発が、無くなるとは思わない。しかし、オフショアや開発生産性の向上、SaaSの利用などが進めば、今後の利益率の向上は期待できない。また、SI事業者の淘汰も進むだろう。そういう来たるべき未来を考えたとき、どうすればお客様とより親密な関係を築くことができるのか、どうすれば他社を排除して自分たちは生き残ることができるのかを考えなければならない。

我が国ではITエンジニアの75%はSI事業者やITベンダー側にいる。例え内製化を支援してもお客様の需要を内製だけでまかなうことはできない。また、ノンコアな領域については、これまで以上に徹底したアウトソーシング需要が高まる。その受け皿の提供と共に内製化を支援すれば、お客様の需要は取り込める。これまで通りの受託・請負・派遣に頼るビジネスには、未来はない。だからこそ、お客様が今必要としていることを冷静に受け止め、それに応えてゆくという、当たり前に立ち戻って考えてはどうだろう。

複合機メーカーによるペーパーレス・ソリューションもまた、常識的に考えれば、利益相反だ。複合機メーカーの収益は、複合機の利用量に応じたトナーカートリッジの消費や保守に支えられている。ペーパーレスをすすめることは、この収益の柱を放棄することに他ならない。しかし、現実を冷静に見つめれば、タブレットやスマートフォンの普及により、紙の需要は、これまでにも増して減ってゆく。事実、打ち合わせ資料やカタログなどをタブレットに代替させることは難しくない。そこに手書きで追記することも、その資料を共有することもできる。

また、経費精算などの伝票処理もタブレットやスマホで入力し領収書などの証憑はスマホのカメラで写真撮影して添付し、原本は経理部門に郵送すれば、事足りる時代になった。

契約書を電子契約にすれば、印紙の貼付が不要になり、印紙税負担をなくすことができる。また、契約書類の膨大な紙の印刷や保管コストは不要となる。また、検索も監査も容易になる。

複合機メーカーはドキュメントの専門家だ。だからこそ、ドキュメントのフローを理解し、それを処理するノウハウを蓄積しているはずだ。その知識やノウハウを活かせば、どうすれば徹底したペーパーレスができるかを考えることができるのではないか。

いつまでもオセロゲームのように、何年か毎にメーカー同士の競争が行われ、入れ替えたり、入れ替えられたりでいいのだろうか。そのたびに、厳しい価格競争を強いられ、全体の需要も減少してゆく。体力勝負は、そう長続きするとは思えない。

ペーパーレス化を推し進めても完全に紙がなくなることはない。また、ペーパーレス化は、業務の仕組みとして一回作ってしまえば、他社に入れ替えることは容易ではない。結果として、お客様を囲い込み、長期安定的なストック・ビジネスを獲ることができる。

パッケージ・ソフトウェアとは、お客様の業務プロセスで予想される課題を解決する手段をプログラムにしたもの。そこには、高い業務に対する見識や業務ノウハウが埋め込まれている。

しかし、そういうパッケージ・ソフトウェアを販売する営業は、お客様の課題をろくに聞くこともなく、いかに自社製品が機能豊富であり、実績があり、優れているかを説明してくれるに過ぎない。お客様の現状や業務課題を聞くことには消極的だ。お客様は製品が欲しいわけではない。困っていることを解決したいのだ。

製品を売るのではなく、業務改善やそのためのプロジェクト運営を支援するサービスを用意し、それを売るというのはどうか。また、本番以降の業務改善や相談をサービスとしてメニュー化し、お客様の新しい業務を確実に定着させるお手伝いしてはどうか。付帯する人的な業務作業もセットにして受託するという方法もある。このようなサービスが提供できれば、結果として、プロダクトは売れる。

パッケージ・ソフトウェアの多くはSaaSに置き換えてゆく。そうなれば、一時的収益は望めない。しかし、サービスとしてお客様に受け入れられれば、長期安定的なストック・ビジネスとなる。

以上いずれの場合も、既に抱えている事業資産を否定することでもあり、抵抗感がある。一時的な収益の減少も覚悟すべきだろう。しかし、冷静にお客様のニーズを見据えれば、自ずと導かれる結論のようにも見える。

チェコの経済学者、シュンペーターは、近代イノベーション観を確立した人物と言われている。彼は「イノベーションは創造的破壊をもたらす」と述べている。つまり、イノベーションは、これまでの常識や既得権益を破壊し、経済の新陳代謝を促すと言う意味だ。産業革命は、生産手段のイノベーションだ。職人の手作業から機械による生産に置き換わった。また、輸送手段のイノベーションでもあり、馬車から鉄道に置き換わった。つまり、機械生産や鉄道というイノベーションが、これまでの既得権益やビジネスの常識が大きく変えてしまった。その結果、既得権益を持った人たちが、機械や鉄道を焼き討ちした、という事件も起きている。しかし、いずれもイノベーションの勝利だ。

改めて冷静に足下を見据えれば、このようなイノベーションの可能性は、いくらでもあるように思う。

お客様の真のニーズはどこにあるのか

そのニーズに応えるために何をすべきか

それを行うために自分たちが提供できる価値は何か

昔の相手のニーズが今のニーズであるとは限らない。当然求める期待も変わってゆく。その変化に目をつむり、変わろうとしなければ、見捨てられるだけのことだ。

イノベーションとは、決して新しい技術を創造することではない。これまでに無かった課題解決の方法を見つけ出すこと。シュンペーターはこれを「新結合」と呼んでいる。つまり、これまでの常識とはことなる課題解決のための新しい手段の組み合わせを創り出すこと説いている。

これまでの常識に疑問を持ち、どうすれば、これまでの仕事を創造的に破壊できるのかを考える。こういう考えの向こうに、これからのビジネスの可能性が見えてくる。

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