ノマドワークキングを導入する前にIT管理者が知っておきたい5つの罠
今回の震災が起きてからというもの、在宅ワークやノマドワーキングと言った場所を問わない仕事のスタイルが改めて見直されているように思います。災害が無くとも東京には通勤ラッシュがありますし、郊外からはるばる通っている方も割と多いでしょう。そう言った状況では特に、平常時と言えども場所に依存しない、もっとハッキリいうといちいち会社の事務所まできつい思いをして通わずに仕事が出来る環境を求めるのは自然なことではないでしょうか。
そんな状況で大いに活躍するであろう人種が社内SEという人々。
どこからでも仕事が出来る環境を作る為には社内のシステムで行おうと、クラウドコンピューティングを使おうと新しい仕組みを構築する必要が出てきます。
SEと呼ばれる人々にとっては、こういった新しい仕組みを導入する局面が大きな興奮とモチベーションをもたらすことでしょう。今世間で盛り上がっているクラウドコンピューティングや、インターネットを経由して社内のリソースを使うようなオシャレな仕組みに携われるということは、普段トラブルに追われる身からすればまさに天からの恵み。
言い過ぎ?
ただ、こんなにワンダフルな仕事でも当然気をつけなければいけないことがあるのですが、そのほとんどは社員の心象的要因だったりするんです。いや、これ本当の話。技術的なことを言えばノマドワーキングなんてすでに実績があって、色々な企業でその機能性や安全性が実証されています。
しかしながら、起きてもいない大惨事を例にだし、こうした仕組みに大反対する抵抗勢力も結構いたりして大変なんです。抵抗勢力の主な属性は、家に居場所がないかわいそうな夫、楽して働いても成果なんかでないと主張する筋脳党など。今までの自分の常識が覆されることに過剰に反応する人は多数いると思います。
そう言ったわけで今回は、ノマドワーキングを企業で導入する際の落とし穴を洗い出して、大いにリスクマネジメントをして行きましょうというテーマでお送りします。
なんでいつも導入部分が長くなるんだか。。。
SEを悩ませる5つの罠
それでは早速、ハッピーな仕組みの裏に潜む罠を見て行きましょう。全然「早速」じゃないことは気にしないでおきます。
5つの罠とはこんな感じです。
1.勤務時間へのノスタルジー
2.心寂しい一人仕事
3.見ざる言わざる聞かざる
4.コミュニケーションコンプレックス
5.対面サポートから電話サポートへ
勤務時間へのノスタルジー
まず真っ先に思いつくのは勤務時間に対する考え。事務所にこないってことはある意味開始も終わりもフリーダム。一応グループウェアなどでタイムカード的なものは用意できますが、目の届かない所で仕事している以上管理のしようがありません。抵抗勢力はここをついてきます。
目の見えない所で仕事してたらサボってたって注意できない、などと他の従業員への不信感丸出しで攻めてきますが一番仕事をしてないのはお前だろ。
この場合の対策としてはコスト対パフォーマンスを主体にして論戦しましょう。多少サボったり、休憩が多くなったとしても会社としては電気代や交通費の支給が大幅に削減出来ることを考えれば大した問題ではありません。そもそも、会社に集まったら暇な社員が忙しそうな社員に世間話を持ちかけて共倒れという危険性が非常に高まります。
ということで、自社の状況を冷静に見て、コストと仕事の効率向上を盾にこの戦況を乗り切ることが大事なのです。あくまでも冷静に客観的に。間違っても抵抗する社員に「お前なんか会社にいても寝てるかしゃべってるかしかしてないだろ」などと言ってはいけません。被害妄想に駆られた輩を刺激すると危険なことは某国を見ていればわかると思います。
心寂しい一人仕事
次に挙げるのは心の寂しさです。
いい大人が何を、と思う気持ちは十分によく分かりますが、人とはそんなに合理的にできていません。いつも一緒に働いていた仲間がいなくなると寂しいものです。世間話もできないし、人の邪魔をすることもできないのですから。こうした邪魔以外の何者でもない行為ですらコミュニケーションという都合のいい言葉にトランスレートして攻めてくるので注意が必要です。
しかし、こんなどうしようも無い相手でも冷静さを失ってはいけません。会社にいても周りが邪魔で仕事が進まないとかいったら相手の思うツボ。協調性がないやつだと罵られ、総スカンを食らってしまう可能性もあります。
そんな時も、あくまでも冷静に会社へのメリットを主張しましょう。交通費の支給が大幅に削減出来ることと、作業効率向上を盾にしてこの難局を乗り切るのです。
このあとの展開も見えてきましたか?
見ざる言わざる聞かざる
3つ目の難点はウケを狙ってこんなタイトルにしましたが、正確に言いますと、見えない言えない聞けない、です。
上司からしたら社員が見えないと不安だということはあるでしょう。困った時にSEのあなたがいないと気軽に聞けないでしょう。ちょっと虫の居所が悪くても文句を言う相手がいないとストレスを発散できないでしょう。でもそんな不満にも優しく答えましょう。
お前ら文字が読めないのか、と。
仕事上のコミュニケーションはすでにメールが中心になっています。言葉のやりとりに比べてコミュニケーションがログとして残るのであとから振り返ることも容易です。言った言わないを争う不毛な議論とももうおさらば。無駄話を省いてスマートに仕事をしましょう。ログが残ると困る人も多々いるようですが。
このような場合にも仕事の効率と交通費支給のコストを削減、
もういいですか?
コミュニケーションコンプレックス
あえてコンプレックスと表現しましたが、とにかく対面での会話でなければ密なコミュニケーションが取れないと思っている方はまだまだご健在です。そんなに声が聞きたければSkypeがあるではないですか。そんなに顔が見たければSkypeがあるではないですか。
コミュニケーションとはそんなに陳腐なものなのですか?普段会議と称して無駄話をして、最終的に「じゃああとはみんな持ち帰って検討で」とかいうスカスカなスカスカ会議をしているくらいならメーリングリストでも作って整理された情報を元に建設的な議論をしましょうよ。
と、そうは言ってもいきなり全部ネット越しというのは難しいので、重要な会議の時は集まるとか、週一回集まって朝礼をしましょうといった相手が納得しそうな落としどころを見つけるといいかもしれません。
ここでもやはり、交通費削減と仕事の効率向上のことは忘れずに。
対面サポートから電話サポートへ
さあ、最後です。
SEにとってはここが最大の鬼門。おそらくこの理由だけであなた自身がノマドワーキングの導入をためらうことになりうる。それほどの破壊力を持っています。
これまではPC関係のサポートをする際、相手の操作している画面を見ながら、実際の操作を案内しながら、どうしようも無くなったらマウスとキーボードを奪って自分でオウンゴールするという荒技ができました。しかし、これからはこうしたサポートを電話とメールとメッセンジャーでやることになります。
運がよければSkypeを導入して画面を直接リモート操作できるかもしれませんが。
そんな時に備えて今から丁寧な説明と、相手を落ち着かせる声色を身につけましょう。個人的には柏木由紀の声だと精神の深い安息を得られるのですがそこまでは求めません。この辺の技術はNHKのアナウンサーを見習って日々鍛錬しておきましょう。
因みに元気を出したいときは菅野美穂ですね。
あと、相手への説明は極力、というか絶対に専門用語を使わない、というくらいの気合を持ちましょう。相手にとってわからない単語が出た瞬間に言葉の説目が必要になります。操作を説明しながら用語の説明をするのは非常に体力と精神力を消耗します。
池上彰先生のように、小学生に説明するようなつもりで臨んでください。
おわりに
さて、だいぶ長くなった今回のエントリーもめでたくエンディングを迎えることとなりました。会社帰りに気軽にタリーズで書き始めた記事ですが、思いのほか時間がかかりました。僕にとってもやっと終わったかと言った所です。ホットラテが冷めています。
今回取り上げたノマドワーキングは今後注目度が今までよりも数段高くなるでしょう。都内で勤務する方々には相当な恩恵をもたらすであろうこの働き方ですが、果たして経営層には受け入れられるのでしょうか。
インターネット時代に創業した会社であればこうしたことに理解があると思いますが、それよりも古い企業ではどうなのでしょうね。
出来るだけ早く、そして出来るだけ深く社会に浸透することを願って止まない今日この頃です。