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AppleがiPad商標訴訟で敗訴した中国というアナザーワールド

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アップルといえば、iPhoneやiPadが代表的な製品ですが、「iPad」という商標を中国本土で使ってはいけない、という判決が12/5に中国国内の裁判所から示されたことが話題になっています。

中国メディアによると、米電子機器大手アップルなどが中国国内における多機能端末「iPad」の商標権所有の確認などを求めていた訴訟で、広東省深セン市の中級人民法院(地裁)は6日までに、同社の訴えを退ける判決を言い渡した。

 報道によると、被告となった深センのIT企業は2001年、中国国内で「iPad」を商標登録。アップル側は09年、各国で「iPad」を商標登録していた被告会社と同グループの台湾企業から、3・5万ポンド(約420万円)で全世界の商標権を譲り受けることで合意した。

 判決は、商標権の譲渡契約は所有者と結ばなければならないと指摘。台湾企業は被告会社の「代理者」には当たらず、訴えは法的根拠がないと判断した。
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011120601002216.html

 

訴訟を起こしたのは唯冠科技(深圳)公司という企業です。

2006年、アップルがiPadの販売を計画していた頃、当時の世界大手ディスプレイメーカーだった唯冠国際の台湾子会社が世界各地で「iPad」の商標権を獲得していたため、400万円程度で商標を買い上げたのですが、実はこれは中国本土でのiPadという商標権利が含まれていなかったのです。このため、前述のような訴訟が起こり、アップルは敗訴となったというわけです。

この結果、このまま何もしなければ、アップルは中国本土でiPadという名称を利用できなくなりますから、商標譲渡に向けた交渉を唯冠科技(深圳)公司とすることになるのでしょうけど、今回はすでにビッグネームとなったiPadについて、かなりの金額が要求されることになるでしょう。武闘派のアップルですから、これに控訴して徹底抗戦を仕掛ける可能性もあり、その場合は、中国本土でのiPad正式販売は遅れてしまいます。

アップルは見事に嵌められてしまいましたね。これは推測ですが、訴訟を起こした唯冠科技は、自分たちの中国本土におけるiPadの価値を理解した上で、ギリギリまで沈黙を保っていたのでしょう。そして、iPadの商標を最も高値で買い取ってもらえるタイミングを見極めていたのではないかと思います。さもなければ、この訴訟は不自然過ぎです。

この件については、以下のサイトで詳しく触れているので、そちらを御覧ください。
http://kinbricksnow.com/archives/51760501.html

中国における商標権のトラブルはこれまでもたくさんありました。少し調べてみただけでも色々と出てきましたが、きりがないので、その一部を列挙してみます。いずれの訴訟も、基本的には同義に即した結審となっていますが、決着までに数年経過しているものが多数あり、訴訟コストと労力は相当なモノであることは容易に想像できますね。

○マクドナルド (2011年)
2001年に赤い背景に黄色の『W』ロゴを記した「万代福(ワンダフルワンダフー)」という名の商標を中国企業が登録。マクドナルドはすぐに『W』のロゴは『M』と酷似しており、撤回するように求めたが、商標局はこれを棄却。その後、2010年に「食堂やカフェなどでの使用は禁止」との決定を下したが、現在も係争中。

○ランドローバー (2011年)
英自動車メーカー「LANDROVER」が、中国自動車メーカー吉利社が有する商標「路虎」(LANDROVERを中国語で表記したもの)の商標登録の取消を求めたが、訴えは却下された。その後、ランドローバー社は控訴し、「路虎」の商標登録を取り消す判決が出された。

○セコム (2010年)
セコムの登録商標である「SECOM」と類似するマークの使用中止を求めて、2007年に深圳世強電訊有限公司を提訴。2009年10月にセコムの主張を認め、8万元の損害賠償と「SECOM」と類似するマークの使用を直ちに停止するよう命じる判決を言い渡し、2010年9月に判決が確定した。

○クレヨンしんちゃん (2009年)
中国企業の「商標の登録行為に関しての悪意性を認めた」が、登録から無効請求までに5年以上が過ぎているとして双葉社の訴えを却下し、中国企業の商標登録を認めた。

○青森 (2008年)
2002年7月に広東省広州市のデザイン会社が「青森」の商標登録出願をしたところ、2003年4月に日本の青森県・青森市及び県内24団体が中国商標局に異議申し立てを行い、同年7月に受理された。約4年半経過した2008年2月、中国商標局が日本側の主張を認める裁定を出した。

○バイアグラ (2008年)
中国国内でのED治療薬バイアグラの商標登録をめぐる訴訟は約10年に渡って行われ、2008年4月に中国北京の裁判所で大手製薬会社ファイザー社と広州ウェルマン薬業公司など3社の間で争われた商標侵害の訴訟に関する最終審判決が下り、ファイザー製薬が敗訴した。

○ヤマハ (2007年)
自社商標の無断使用について、ヤマハ発動機が中国の二輪車メーカーなど計4社を相手取り、損害賠償などを求め、最高人民法院は中国メーカーなどに約830万元(約1億3000万円)の支払いを命じる判決を言い渡した。

○無印良品 (2006年)
JBIが中国における「無印良品」および「MUJI」の商標を不正に先行登録。2000年5月、JBIの商標登録の無効取消を求めて訴訟し、取消審決が2005年11月に下された。その後、JBIは出訴したものの、2006年8月に結審。

○トヨタエンブレム (2003年)
トヨタ自動車が、中国の自動車メーカーの吉利汽車(ギーリー)の使っているエンブレムが類似しているとして使用差し止めを求めた商標権訴訟で、北京市第2中級人民法院は、「双方のロゴは明らかに異なり、混乱を招かない」としてトヨタの訴えを棄却する判決を言い渡した。

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