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守りに入った企業を爆速的に改革するには ~『爆速経営』を読んで

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これは2004年から直近までの検索エンジンのシェア推移を示したものですが、赤と青の折れ線がいずれの検索エンジンを示しているかお分かりでしょうか?

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出所)サーチエンジン シェアに基づいて作成
シェア値はhttp://www.accesssup.org/への訪問数ベースの統計によるとのこと。


答えは青がグーグルで、赤がヤフーです。

いっとき、ヤフーは2007年ぐらいまでは好調を維持して国内No1シェアにありましたが、2008年ぐらいからずるずるとシェアを落とし、2010年にはいっきにグーグルに抜かれてしまいました。

ところがここにきてヤフーがまた追い上げてきており、最近はグーグルと肩を並べるぐらいのところにまで来ています。


そういえば昨年2012年4月にヤフーがアスクルと提携したという発表があったとき、私はこの発表をアスクルの事件として受け取った印象が残っています。それが1番と2番の違いたる由縁かもしれませんが、失礼ながら私にとって、ヤフーが地味な企業に見えたからに他なりません。

他からの評価にしても、ヤフーはそれまで好業績を安定して続けていたものの、証券アナリストたちの間では「ネット業界のNHK」と言われるほど動きのない企業と評価されていたようです。



宮坂社長が「爆速経営」にシフト

ところがヤフーはこの1年で業績も大きく伸ばしました。2013年3月決算では売上が前年比14%も増えました。

ヤフーが勢いを取り戻したのは、しかしこのアスクルとの提携の頃(2012年4月)からなのです。そして一月前に、社長が井上雅博氏から宮坂学氏に交代する人事の発表がありました。

この宮坂社長がヤフーの経営を「爆速経営」に切り替えました。爆速(ばくそく)とは高速を超えたスピードを表す、宮坂氏の造語です。

爆速経営は他企業と提携を進めるスピード感に現れています。

例えばアスクルとの提携は、社長就任直後からなんと1ヶ月でアスクルへの330億円出資とEコマース業務の提携という形にまとまりました。


アスクル 27日(330億円の出資)
カルチュア・コンビニエンス・クラブ 約2ヶ月(ポイントサービスで共同会社を設立)
クックパッド 約1ヶ月(事業提携、サイトへの相互送客)
カカクコム 約2ヶ月(事業提携、サイトへの相互送客)
グリー 約1ヶ月(ソーシャルゲームの共同出資会社設立)
カカオジャパン 約3ヶ月(韓国ソフト開発会社カカオ日本法人への出資)
LINE(旧NHNジャパン) 約2ヶ月(事業提携、まとめ検索サービスで連携)
(出所)『爆速経営』(蛯谷・著)より



10倍挑戦、5倍失敗、2倍成功

またこうした企業間提携はトップの意思決定のスピードがものをいいますが、会社全体を爆速で動かしていくためには社員が自律的に新しい事業に挑戦できるようにしないといけません。

ですが新しい取り組みには失敗がつきものです。それまでの経営陣は「よく分からないものに投資して、どれだけ儲かるの」とすぐに数字を求めてくる態度だったようです。こうした態度が新しい事業への参入を遅らせ、ヤフーを「動きのない会社」にしてしまったのかもしれません。

宮坂社長は「10倍挑戦、5倍失敗、2倍成功だ」といって、何度失敗してもそれを許容し、次に挑戦できる環境を作ろうとしました。ヒットを打とうと気にするあまり、打席に立つことすら慎重に構えてしまうのではなく、何度も打席に立ってもらい、いつかヒット、いつかホームランを打てればよいという考え方に変えようとしたのです。

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ヤフーの使命を再定義

宮坂氏は社長就任にあたって幹部たちと何度も議論を繰り返したのは、ヤフーの使命についてでした。

「俺たち、なんで会社やってるんだろうね」と問題を提起して、ヤフーの使命を再定義したのです。

というのも、ヤフーの業績は決して深刻な状況でなく、危機意識の共有が難しかったからです。社員の意識を集めるのは、業績が好調に見える会社のほうが難しいものです。それだけに経営陣の意識が結束していないといけません。

たどり着いた答えは「課題解決エンジン」。新経営陣はよくカラオケボックスに集まって議論を繰り返したそうですが、この経験が今でも経営陣の意識あわせに役に立っているそうです。

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(ヤフーのHPから画面の一部を使用)



誰を向いてサービスするのか

当時もう一つ議論になったことは、「ヤフーは誰を向いてサービスをするのか」でした。

ヤフーの事業には大きくメディア事業(マーケティングソリューション事業)とEコマース事業(コンシューマ事業)があります。そして大きさでいえば、メディア事業が2300億円と全体売上げの7割近くを占めており、これが屋台骨になっています。実際にもその通り、ヤフーは一般的には「メディア企業」として認識されています。

しかしメディア企業としての側面が強いヤフーでは、ユーザーといった場合、それがヤフーが情報を提供している消費者(エンドユーザー)なのか、広告などのソリューションを提供している企業(クライアント)なのか、常に混乱が起きていました。

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この混乱を整理したのは、「ユーザーファースト」という考え方でした。

クライアントもエンドユーザーも重要な存在ですが、大事なことはクライアントを先に考えるか、エンドユーザーを先に考えるかという優先順位だったからです。

ユーザーファーストという考え方は、エンドユーザーを優先する考え方です。エンドユーザーは、クライアントにとっても重要な存在ですから、誰よりもまずエンドユーザーを優先して考えようというものです。

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以上は以下の書籍を参考に書かせていただきました。私自身の解釈が入っていることをどうかご了承ください。

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爆速経営―新生ヤフーの500日
蛯谷敏(著)
日経BP社(刊行)

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