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アジャイルに行こう!

Agile Japan ありがとうございました

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Aj_banner_480_ 4/22(水) 「Agile Japan 2009」に参加してくださったみなさん、ありがとうございました。嬉しいことに、参加人数が増えすぎて(190満席のところ、230の申し込みでサイトをシャットダウン、パイプ椅子を準備)、とても運営が不安な当日でしたが、その不安を完全に乗り越えるくらい、パワーが出るイベントになりました。偶然参加されたみつるぅさんのブログにもあるよう、「セミナー」という感じではなく「ライブイベント」という雰囲気の会にできて、実行委員会としてもとても喜んでいます。

日本のソフトウェア開発を変えるために、エンジニアが上司やお客さんを誘って一緒に来て欲しい、そんな企画で始まったイベントです。「アジャイルは、人だ!」と言い切ったのも、そこから突破したいからです(西河さんの全体ブログ参照)。実際には、7割の方がペア割を使ってきてくれた、という狙い通りの結果になりました。(この企画はEMZEROで有名なマナスリンクの野口さんの案です、ブラボー)

記憶に残っていることを少し…

  • 「ソフトウェア開発現場に求められる新しいリーダーシップ
    ~アジャイルに見る大野耐一、デミングの影響~」
    メアリー・ポッペンディーク 氏(with 平鍋健児)

この講演は、ぼくが2007年に米国のAgile2007で聞いたもっともエキサイティングなセッションを、今回、同時通訳なしで、でも、日本語訳を平鍋が直接、日本語パワーポイントを差し込んでやる、というスタイルを試しました。 このプレゼンの見所は、Taylor, TWI, Deming, TPS という管理やリーダーシップの歴史的な流れ。そして、もう1つは、大野耐一の「標準」や「マネジメント」についての思想の引用。この引用は、日本語訳を原著から引きました。英語よりもずいぶんブロークンな日本語で、大野耐一の「語り口」も含めて味わってもらえたら嬉しいです。さらに、ものづくりの真髄というDVD、現在残っている大野耐一の肉声を聞くことができます。ぼくは、ちょっとこの声を意識して日本語訳を読んでみました。

  • 「ソフトウェア開発に活かす、トヨタ生産方式モノづくりヒトづくり」
    黒岩 惠 氏

とんでもなくいきいきとした、ライブセッションでした(矢沢永吉のような!^_^)。伝えたいことは、ただ一つ、「自分で考えなさい」。米国から入ってきたものをありがたくそのまま受け入れてはいけません。時間が押したり、話が余談に入って帰ってこなかったり、はらはらしましたが、それを補ってあまりある熱意でした。西河さんもブログに書いてましたが、説明や内容を書いてしまう意味がないくらい、ライブ間があるセッションでした。内容も、それ以上に、80年代から2000年代の歴史的な事実を追いながら、TPS, リーン, TQM, アジャイル、の流れをお話いただきました。

P1110251_2 その後、パネルディスカッション。用意したパネルの質問はすべてすっ飛ばして、会場からの質問オンリーで進めました。「プロトタイプとアジャイルの違いは?」という質問に、Tom Poppendieck が飛び入りで答えました。

「プロトタイプは何かを学ぶために作る。アジャイルは、学んだことを「テスト」として記憶し、プロトタイプを育てていく。」

ナイスな回答でした。

  • ランチ with ライトニングトークス

永和システムマネジメントのオブジェクト倶楽部提供、LT(ライトニングトークス)です。大阪のおばちゃんこそ、アジャイルだ、という発表に個人的に「ベストトーカー賞」を上げたい。永和システムマネジメントからは、角谷さんも参加。『鋼鉄の三角形から鋼鉄の一本線へ』について。

  • 「「スピードがすべてを駆逐する(株式会社良品計画事例)」
    山崎 裕詞 氏
    株式会社良品計画 情報システム担当システム企画課長
    當仲 寛哲 氏
    有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所 代表取締役所長
    モデレータ:前川 徹
    サイバー大学 IT総合学部 教授、社団法人コンピュータソフトウェア協会 専務理事

すごい事例でしたね。テキストファイル、シェルスクリプト、、、、技術者ならきっとなじみがあり、うなづけると思います。ただし、これを、本当に大企業の情報システムを構築しており、それをどんどん成長させていること。そして、「アジャイル」と呼んでいるわけではなく、そこに到達していること。まさに、「自分で考えている」ことがすごい。ユニケージは、IPAの「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー2009」に選ばれているのですね(去年JUDEも選ばれています)。

このあと、本間さんのアイスブレイク(お見事なお手前!)を挟んで、コミュニケーションタイムへ突入です。スキルセッションと事例セッションに分かれました。

【スキルセッション】

一番人気の参加型ワークショップです。90分間、みなさん笑顔で手を動かしていました。最優秀アジャイルロゴ、は、私が選ばせていただきました。

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ほかにも、羽生田さん安井さんの「体験アジャイル」、私の「プロジェクトファシリテーション相談室」、などがスキルセッションとして開催されました。

【事例セッション】

  • 「実例:ユーザー企業責任で25サイトをアジャイルに開発(株式会社リクルート事例)」
    スピーカー:前田 圭一郎 氏(株式会社リクルート)
    モデレータ: 倉貫 義人SonicGarden(TIS株式会社 社内カンパニー)リーダー
  • 「モチベーション駆動開発 ~パッケージ開発の現場から~(富士通株式会社事例)」
    スピーカー:中尾 保弘(富士通株式会社)
    モデレータ:安藤 寿之 (NECソフト株式会社)

リクルートの事例を前田さんと倉貫さんに、富士通の事例を中尾さんとNECの安藤さんにお願いしました。わざと企業の壁を超えて組んでもらいました。ぼくは、中尾さんの事例の中で、メンバー全員が「プロジェクトに参加してよかった」と答えたという話がとても好きです。日本では、外注先やいろんな企業が1つのプロジェクトに参加します。どうやって垣根を越えてゴールを作るか、これはリーダーに課せられた1つの課題じゃないかな、と思っています。また、リクルートの前田さんの事例でも、「アジャイル」と言う言葉から先にあるのではなく、自分たちから編み出してたどり着いた開発手法であることが、最も大事だと思います。

そして、最後に全員でクロージングセッションです。

開発者と管理者の「見えない壁」について、PF.ドラッカーやカマスのメタファをうまく使った、示唆に富むお話でした。同名の本の中身に基づく講演でしたが、それよりも、「開発者」と「管理者」という、現実の人間系のシステムの経験からの思いが「静かに」あふれていました。

全体として、仕組んだわけではないのに、「アジャイルというより、自分自身で考えよう」という裏メッセージが発表者全員から伝わり、とてもストーリー性のあるイベントに出来ました。

このイベントは、日本を変える力を持っている。そして、続けることでその可能性を未来方向に延長できるのだろう、と強く思った一日でした。仕事のやり方を、ぼくらの力で変えて行きましょう。

西河さんが、ブログ等のリンクをまとめて頂いています。http://b.hatena.ne.jp/mnishikawa/AgileJapan2009/

ITPro でも記事になっています。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090422/328946/

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