新刊紹介『アート・オブ・アジャイルデベロップメント』
『アート・オブ・アジャイルデベロップメント~組織を成功に導くエクストリームプログラミングの道』が発売になっています。
この本は、そう、XP(エクストリームプログラミング)の本です。アート、という言葉が題名に含まれていますが、これは、芸術と言う意味ではありません。サイエンス、に対することばで、人間が作り出した領域を指す広い言葉です。(例えば文系・理系という言い方をするときに、アート・サイエンスと言います)。技芸、というのがいいかもしれません。
- あなたはソフトウェア開発が好きですか?
- 現在のやり方を変え、自分が属する組織を成功に導くとともに、自分自身も開発を楽しみ、そして成功したいと思っていますか?
本書は、この両方の問いにYesと答えた方への、アイディアと示唆に満ち満ちた本です。
私自身、日本のソフトウェア開発の中でアジャイルを推進してきて、いくつもの壁にぶつかってきました。「日本でうまくいった例はあるの?」、「アジャイルはスキルの高い人しかできないよね」、「うちの開発は特殊だから」、「ぼくらの開発では使えない」、、、などなど。そして、その度に、気づいたのは、
「結局一番大切なのは、現実の文脈と人に照らして、どうやったら自分たちのソフトウェア開発を成功に導くのか、ということを自分たちで考えて行くことだ」
というごくごく当たり前のことです。既存の本に書かれている技法をそのまま現場で使っても、プラクティスとしてそのままうまくいくことはほとんどありません。プラクティスは、スタート地点としてはOKですが、それを自分たちで考えて、カスタマイズし、現場に適合させてはじめて定着するものです。
この「自分たちで考えること」が一番重要で、そのガイドになるのが本書なのです。本書には、著者たちがXPの理論を実践した経験から学んだことを、1つ1つ丁寧にまとめて、これからアジャイルを導入するみなさんが遭遇するであろう問題1つ1つへの「自分たちで考えるヒント」を提示しているのです。
ソフトウェア開発は、「科学」や「工学」の領域だけではカバーできず、経験をベースに学んだことをフィードバックしながら自分たちで知識を形づくっていく必要があります。そして、その領域の方がまだまだ大きいのです。
本書をヒントに、みなさんが自分の現場で考えながら適用を試し、そして考えながら、ソフトウェア開発をよりよい人生の場に変えていくことを願います。
正誤表をこちらにおきました。
木下さん、監訳お疲れまでした!この写真は、著者のJames Shore と、木下さん、平鍋でAgile2008で撮ったものです。