プロジェクト現場の幼稚園化
アジャイル開発やプロジェクトファシリテーションを実践している現場は、幼稚園や小学校とよく似た光景ややり方を目にすることがある。たとえば、「ニコニコカレンダー」だったり、「バグレゴ」だったり、「朝会」だったり、「プロジェクトホームルーム」だったり、「あんどん」だったり。
このエントリは、そのような場面を見て、「いい大人が、何をやっているのか!プロフェッショナルは黙って自分の仕事をせよ!」というような仮想議論(この意見を実は直接聞いたことがない)に対する仮想回答である。
ソフトウェア開発は、「ナレッジ創造(Knowledge Creation)」活動なのだ。よく分かっていないものを、アイディアとコミュニケーションでつないで、ドキュメントにしたり、テストやコードにしたり、マニュアルにしたり、している。この「よく分からないこと」というのは、要求にしても基盤技術にしてもそうだ。顧客は要求を完全に分かっているわけではなく、システムの基盤技術も今回初めて使うものかもしれず、やりながら学んでいくこと、そしてそれを形式知化していくことがソフトウェア開発だ。そして、それは、文章だけでは伝わらない。
あなたの人生の中で、「一番多くのことを学んだ」のはいつだろう?そう、「砂場」のころなんだと思う。幼稚園や小学校だ。多くのことを学んでいくときには、それにふさわしい「場」というのがある。モチベーションが沸き、仲間がいて、目に見える範囲に、さまざまなものが張ってあった。「一番多くのことを学んだ」場所に、ソフトウェア開発現場が似るのは当然である。ソフトウェア開発は、知識創造、すなわち、「学習」と「フィードバック」の場である。
先日、幼稚園の学芸会に参加した。子供が数ヶ月をかけて練習したことを、親や兄弟、親戚に向けて発表するのである。子供の成長をうれしく思うと同時に、自分たち自身も、そこから多くを学ぶ。地域のこと、先生のこと、こういった場作りのやり方、感謝の意味、家族の意味。ぼくは多くの気づきを得た。このブログもそこから動機を得て書いています。
このようなイベントだって、ソフトウェア開発でも同じだ。ソフトウェア開発の組織では、もっと、若いメンバーがいるプロジェクトが「新しく学んだこと」を組織全体でシェアしたり、それを先輩技術者と一緒喜ぶ場が必要だと思う。そして、先輩技術者も、そこから新しい技術や手法の息吹、そして、ひょっとすると忘れてしまった勇気や涙、感謝の気持ちを思い出そう。
みなさんも、社内で気づきの発表の場をぜひ持ちましょう。大きな会社だって、中くらいの会社だって、小さな会社だって、始められます。以下に参考例を。
今回オブジェクト倶楽部のライトニングトークスで選にもれた、小島さんの社内活動http://blog.shos.info/archives/2007/10/big_jolt_2.html
2007年夏のオブジェクト倶楽部で和田さんが発表した、
『TPSコミュニティ・クロニクル~改善活動は人を変え、組織の壁を越える~』 http://www.objectclub.jp/download/files/event/2007summer/Noriaki_Wada.pdf