リスクへの過大評価におけるウチの妻の判断 〜プロスペクト理論で見る〜
「めったに起きないが、起きてしまったら大変な被害をもたらすと考えられているリスク」をLPHC(Low Probability High Consequence)リスクと呼ぶらしい。大型旅客機の事故など統計的な観点からは自動車と比較しながら最も安全な乗り物の一つとされるが、その社会的影響から見ればLPHCリスクの典型例と言えるだろう。参考にしている事典(日本リスク研究学会編『【増補改訂版】リスク学事典』)にも触れられているが、これまでの専門家の言い分?として、LPHCリスクにおいては「低確率のリスクの発生確率を過大評価しがちである」としている。私見として解釈すれば、専門家なる方のご見解は「心配しすぎでしょ」というご見解が通性と言っても言い過ぎではないかもしれない。
消費者行動から見たとき、次のようにも考えることが出来るのではないだろうか。消費者は常に理性的な意思決定をしている分けではないとするプロスペクト理論である。
良く知られているお約束の思考実験ではあるが、多くの人がどちらを選ぶか考えてみる。
Q1.決して断れない状況下でどちらを選択しますか?
A.もれなく、7000円もらえる。
B.25%の確率で30000円もらえるが、75%の確率でもらえない。
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多くの人は、Aを選ぶ。もれなく確実に7000円をもらいたいのだ。経済・経営学的な視点でのリスクの議論とすれば確実にもらえるということは数学的には分散はないので、リスクはないと言える。しかし、同様に、期待値を計算すれば30000円が25%の確率でもらえるのであれば、期待値は7500円となりこちらのほうがお得といえる。理性的な選択をすれば、むしろBの選択が妥当だとも言える。しかし、多くの人はそれでも、Aを選ぶ。少なくとも、妻はA派である。
さらに・・・
Q2.決して断れない状況下でどちらを選択しますか?
A.問答無用で20000円支払う。
B.75%の確率で30000円支払うが、25%の確率で支払わなくてよい。
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こちらになると、多くの人はBを選ぶ。1/4の確率で支払わなくていいなら挑戦したいと思うだろう。しかし、こちらも同様に30000円を75%の確率で支払うほうが期待値が22500円となり、すんなり20000円を支払った方が割安なのである。Bの選択はAと比較すると数学的に分散が大きいので、リスクありと言える。ちなみに、当然、我が妻はBを選択した。
消費者は損失について、自らリスクを選択する。そして、利益を得たときの喜びより、同等の価値の損をしたときのショックのほうがより大きいのである。ようするに、損するかもしれないことには、非常に過敏であり、可能であれば結果的に損(数学的期待値としての最適解でなくとも)をしてもリスク(とりうる複数の選択肢)をとるという消費行動を取るものなのである。
つまり、専門家がリクス発生確率の過大評価傾向を指摘しようとも、大衆である我々の行動は理性的で算術的な損得での意思決定は行っていないのが現実も理解すべきであろう。