学校とIT、英国で学校を訪問する
1月に英国に行った際、ケンブリッジシャーというところにあるクロスホール小学校を見学させてもらった。ICTを教育に取り入れている模範校とのことで、Apple Computerに紹介してもらったのだ。
ITと教育という分野を良く知らない私は、学校とコンピュータと聞くと、表計算ソフトの使い方の授業などを想像したのだが、同校はこれまでの科目の学習過程にコンピュータを取り入れることで、内容に深みを持たせたり、子供達の創造性を引き出そうとしていた。
たとえばFoundationという一般教養のような授業。好きな国を決め、その国の天気をBBC(英国ですから)のWebサイトで調べ、音楽創作・録音ソフトを使ってお天気キャスターになりきってその国の天気予報を報じる。あるいは、シェークスピア(さすがは英国)の劇をアニメにしてみる。その時子供達はロミオの服装を考えるだろうし、どんなタイミングでこのセリフを言わせようかと考える。同じ『ロミオとジュリエット』をやるにも、奥行きがでてくるし、授業が一方方向ではなくなる、と先生は語る。校内は無線LAN完備。コミュニケーションチャネルとしてポッドキャスティングも取り入れている。
一緒に訪問したプレスのほとんどが(コンピュータではなく)教育関連の記者、コンピュータを教育に取り入れることに関してはいろいろと研究が進んでいるようだった。だが、数々の学校を訪問してきたというデンマーク、ノルウェイの記者さんたちも、同校には手放しで関心していた。
実は、私が一番感動したのは、コンピュータの取り入れではない。この学校に入ってすぐ、日本で公立教育を受けた私は、どこに立って見学すればよいか分からなかった。ーーというのも、学校には廊下があって、ドアと壁で明確に仕切られた教室が並んでいると思っていたから。
だが、この学校は、廊下らしきスペースを通っても、ドアらしいドアはほとんどない。あるスペースで生徒15~20名ぐらいが集まっていて、大人が立って何かを話している。壁のようなもので“一応”仕切られた横のスペースでは、また別のグループがiBookを使っている。後ろを見ると、また別のグループが、数式が書かれたスクリーンに見入っている。明確に先生の場所(日本なら教壇とか黒板の前)というのが存在しないし、子供達が全員同じ方向を向いていない(机に向かい合って座っていた)。しかも、ものすごくがやがやしている(授業中に立って移動する子も多い)。だから、間をうろうろしている大人が先生で、どうやらこれは授業中なのだとわかるのに少し時間がかかった。
自分の通った小学校に何一つ不満はなかったのだが、世界にはこういう学校もあるのか、と感動した。ただ、英国は学校や地域による教育レベルの差が激しいとも聞いた。こんな生き生きした学校ばかりではない、とAppleの英国人担当者。
校長にあたる女性の話によると、英国の学校は予算や方針にかなり自主性を持つようで、ビジネス界出身の彼女は、限られた予算をいかに効果的に利用するかに頭を使っているようだ。たとえば、ICTでは、パイロット事業を行いたい企業と組むことで、安価(もしくはゼロ)でICTを導入できる、と彼女は言う。さらには、ICT導入成功校として知られてきたことから、関係者の訪問が絶えないとか(ほぼ毎日だとか)。ここでも訪問料(?)を徴収しており、これも予算に貢献しているようです。