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冬のフィンランドで

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Nokiaフィンランドと携帯電話といえば、かつて世界の携帯電話の4割近くを占めたNokiaが思い出される(写真はヘルシンキの郊外、エスポーにある”Nokiaハウス”ことNokia本社。すでに売却されており、Microsoftも一部このビルに入るはず)。モバイル業界を(米国ではなく)欧州と日本・韓国などが主導していた頃、最盛期にあったNokiaが人口550万人程度のフィンランドに及ぼした影響は経済的なものだけではない。決して便のよい立地とはいえないフィンランドの国際化が大きく進むきっかけにもなった。このように、国民の誇りだったNokiaだが、MicrosoftとNokiaが2013年秋に発表した端末事業買収により独立した端末メーカーとしてのNokiaはなくなる

「Nokiaの減退は、Nokiaを主な取引先としていた企業の倒産など、さまざまな影響を与えた。1社に頼りすぎていたという反省が生まれている」とフィンランドの貿易振興を行う政府系団体Finnfactsの職員は言う。若者の職業感にも変化を感じるとのことだ。

だが、新しい動きもあちこちに出てきている。その1つが、モバイルゲーム「Angry Birds」がヒットしたRovioの台頭。だがRovioだけではない。ソフトバンクが買収を発表したSupercell、Grand Cruなどゲームベンチャーが生まれており、ゲーム開発者が集まっている。「欧州ベンチャーはベルリンに集中しているが、ゲームとなるとフィンランド」と地元ベンチャーDreamDoの創業者でヘルシンキのベンチャーシーンに詳しい人物は言う。このようなベンチャーの動きには、1000社以上の起業につながったというNokia自身が進めたBridge Programも幾分寄与しているかもしれない(すべてが生き残っているのではないとしても)。昨年11月にヘルシンキで開催されたベンチャーイベント「Slush」には、DeNAの南場智子氏、ガンホーの孫泰蔵氏なども参加したようだ。

携帯電話では、NokiaがWindows Phone戦略に踏み切る直前まで進めていた「MeeGo」チームが集まって作ったベンチャーJollaがある(Jollaの記事はこちらこちらを参照)。Jollaは2013年11月末に発売となったが、Jollaに期待するフィンランド人は多いようだ。Jollaを取り扱う地元キャリアDNAのショップに行くとJollaは専用コーナーに飾られており、「反応は上々」と店のスタッフは言う。購入層は30〜40代の男性が多いとのこと。「Nokiaが好きな層だ」とこの店員。かつてのNokia信仰も年齢が下がるほど薄くなり、「若者はSamsungやiPhoneを好んでいる」という。それでも、Nokiaのスペースは他の国の携帯ショップよりも明らかに大きい。街を歩けばNokiaの着信音“Nokiaチューン”が聞こえるし、「Lumia」を見かける率も高い気がする。

Jollaが発売された後の12月、DNAの売上げランキングでJollaはiPhone 5s、iPhone 5cを上回る台数を記録した。「新製品発売時によくあるハイプだろう。今後が勝負」と先述の店員は言う。それでもDNAはフィンランドではシェア3位のキャリア、「市場に変化を起こせるかとなると疑問」と地元紙Helsingin Sonomatの記者は語る。「もちろんフィンランド人は心の中では皆、Jollaの成功を望んでいるが」と続けた。

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DNAのショップにて。店員の後ろにはJollaの広告。

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DNAの店内では、SamsungとNokiaが同じぐらいのスペースで展示されていた。

Rovio

Nokia本社と同じエスポーにあるRovioの本社1階には、Rovioショールームとして、ゲームからキャラクター事業に展開するAngry Birdsたちのさまざまなグッズを展示していた。雑居ビルながら、Rovioがビルを占拠しつつある。
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