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貧乏暇あり?

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日本では、今週からお盆休みという人も多いと思いますが、この国では夏休みモードは7月に始まっており、8月終わりまで続きます。人々はこの間、2~4週間のまとまった休暇(バカンス)をとります。夏休みといえば、お盆の15日前後に長くて1週間という国からやってきた私にとって、“バカンス”というこの国の習慣は、当初は新鮮(というか、うらやましい!)に映ったのですが、最近はそうでもなくなりました。

082005_003_sたとえば今週初め、パリのお店をリサーチする必要があったのですが、驚いたことに、レストランや雑貨屋さんなど半分以上の店が閉まっていました。もちろん、“バカンス”です。ここで夏を迎えるのは3度目ですが、改めて“この国の人は本当に休暇をとっているのだ”、と実感しました。スーパーは通常通り回転していますが、人が少ないので昼に2時間ほど閉まるところもあります。生活必需品のパン屋さんの場合、近くにある2軒が同時に休むと困るので地区内で順番を決めて交代で休んでいます。

レストランやパン屋さんが夏の休暇で閉まっているのには、それほど困りません。が、困るものもあります。たとえば、お医者さん。今朝、近所の個人医のところに行こうと電話をしたところ、バカンスで留守。戻ってくるのは8月24日とのことでした。それなら、と病院に電話しても、当日のアポイントは取らせてくれません。どうしても今日ならば、「緊急セクションに来るように」といわれます。通常、緊急の場合は長期戦覚悟の根気比べ。朝行って受付で順番をとり、昼ごはんを食べに家に戻り、午後出直す、なんてことも(大げさではなく)考えられます。

実際、2年前のちょうど今頃、この国は40度近くの猛暑に襲われました。その結果1万人以上の人が亡くなったことは、日本でも報じられたと思います。暑さが最大の原因でしたが、それだけではありません。病院に十分な人がいなかったのも大きく影響しています。この時TVで、救急で運ばれてきた病人(多くはお年寄り)が横たわるベッドが診察順番待ちで廊下に並んでいる様子が映し出され、ショックを受けたのを覚えています。医者はもちろん、看護婦も圧倒的に不足していたようです。シラク大統領はもちろん、厚生大臣もバカンス中。自国の異常事態への対応が遅れました。(ちなみに今年は冷夏となったパリ。私が今朝お医者さんに行こうとしたのは、朝晩の冷え込みで体調を崩したためです。日本は暑いようですが、パリは夏らしくない8月です)。

また、仕事でも困ることがあります。問い合わせても担当者が留守。“2週間先に電話をして。本人じゃないとわからないから”なんてことは、夏なら当たり前です。

そんな感じで、ここでは日本のお盆のように休暇が集中していないので、7~8月は町全体、ビジネス全体が半分眠っているような中途半端な状態です。

ちなみに、この国の人たちは、自分のバカンス同様、他人がバカンスを取る必要性も十分に認めています。よって、「バカンスにいくお金もない」というのは、立派な生活苦として処理されるようです。私も、友人・知人はもちろん、バカンスから戻ってきたという近所の人にまで、「休まないとだめよ」などとアドバイスされます。フランス風に数週間まとめて休むスタイルがうらやましいとは思いつつ、慣れ親しんだ習慣から抜け出すのは難しく、どうしても休めません。うーん。

*写真は、近所のパン屋さん。パリ・パン職人組合(みたいなもの)指定の休み表示シールを付けている。この店の場合、7月31日から8月29日まで休み。

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