米国ベンチャー投資は回復の兆し！

米国経済情報誌「Wall Street Journal」の発行元で知られるDow Jones社が、2009年Q2（4月-6月）におけるベンチャーキャピタル投資のデータを公開した。

Q2のベンチャー投資状況は、525案件、$5.27B（約5,000億円）となっている。昨年同時期の726案件、$8.33B（約8,000億円）と比較すると見劣りするが、前期Q1（1月-3月）の483案件、$4B（約3,8000億円）からすると32％増と盛り返してきているといえる。

ロケーション別のシェアでは、やはりシリコンバレーを中心としたベイエリアが34％、南カリフォルニアが8％と全体の42％を占める。次いで、ボストンエリアを中心としたニューイングランドが12％を占めている。業界別に見てみるとITセクターは、$1.88Bと前期Q1との比較では若干回復している。2四半期連続でゼロであったIPO（新規株式公開）も、このQ2では5社が、合計$720.7M（約680億円）の資金調達に成功し、2007年Q4以来の高い水準となった。5社のうち4社がITセクターとなっている。（SolarWinds, OpenTable, MediData Solution, Bridgepoint Education）

また、サンフランシスコ大学（USF）のMark Cannice氏のレポートによれば、

Venture capitalists expect that the worst of the financial crisis is behind us.VCs also noted that the harsh economic environment has helped them identify the most resilient and creative entrepreneurs, and entrepreneurs have necessarily become more capital efficient.

「ベンチャーキャピタリストは金融危機の最悪の段階は過ぎたと期待している。そして、厳しい経済環境が、回復力に強く創造的な起業家を育てる助けとなった。」と述べている。

これは、経済・金融情報の配信事業を手掛けるBloombergが、四半期毎に発表している「Silicon Valley Venture Capitalist  Confidence Index」が、四半期連続で上昇していることから裏付けられている。この指数は、ベイエリアのベンチャーキャピタリスト42人に対して行われる継続調査を基に、起業環境についての市場の信頼度を評価するもの。

また、企業買収状況に関しては、OracleによるSun Microsystems（$7.4B）や仮想化ソフトVirtual Ironの買収に始まり、Cisco Systemsによる仮想化自動化ソフトTidal Software（$105M）の買収、ブレードサーバRackable SystemsのSGI買収（$25M）などなど、Q2の59案件中46案件がITセクターになっており市場が活発化していると言えるだろう。

特に、クラウドコンピューティングの進展に伴い、GoogleやAmazonなどのインターネット企業、HP、IBM、SAPなどのハードウェア、ソフトウェア大手ベンダー、Verizon、AT&Tなどの通信キャリアが入り乱れ、戦国時代の様子を呈している。ICT業界の再編が、加速されていることは否めないだろう。そして、このクラウド分野では、仮想化や分散コンピューティングにおける新たなテクノロジーとともにスタートアップ企業が台頭している。

さらに、かねてから噂のあった話ではあるが、Marc Andreessen氏が$300Mのエンジェル投資ファンドを立ち上げると発表した。$0.5Mのアーリーステージから、$50Mのレートステージに注力する模様。同氏は、Webブラウザの開発者で、SGIを創業したJames Clarkと共同でNetScape社を立ち上げ1995年にIPOを果たしている人物。

同氏のブログによると「引き続き巨大な機会があるので、IT分野への投資へ特化する。燃料や輸送などのグリーン系には投資ない。そして、世界中にアントレプレナーはいるが、シリコンバレーに特化する。何故ならシリコンバレーにはスペシャルな魔法があるから。」とのことで、今後のITセクターのベンチャー投資に大きな期待が持てることになるだろう。どんなスタートアップが出てくるのか、これからのシリコンバレーから目が離せない。