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デジタルとアナログの間を行ったり来たり

形見の日記

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 大人になってもまだ捨てていないマンガがある。「ポーの一族」だ。不本意にも不老不死となってしまった少年の歩んだ道のりをつづる、少女マンガの金字塔的な作品。

 その中で「グレン・スミスの日記」という短編がある。これはグレン・スミスが森で誤って主人公の妹を撃ってしまった経緯を描いた「ポーの村」の続編となっていて、グレン・スミスの死後に波乱の人生を送った娘のエリザベスを中心に話が進む。エリザベスは父が日記に残した不老不死の一族にさまざまな想いをめぐらせる。

 その冒頭でエリザベスが父の遺品を片付けているうちに日記を発見する場面がある。貴重なものを発見して心躍らせるエリザベス。その姿に一瞬自分が重なることが起きた。

 大みそか、大掃除の最中に祖母他界の知らせをうけた。数日前の葬式で、ふと祖母が毎日日記をつけていたという話を小耳に挟んだ。筆者は幼少のころ両親が共働きだったため、日中は祖父母の家で面倒を見てもらっていた。

 近年になって祖父母から歴史や人生について聞いてみたいと思うようになったが、やや間に合わなかった。だからその日記にはすごく興味がわいた。

 火葬場へのバスの中で考えた。ちょっとだけ祖母の日記を借りられないだろうか。その間にスキャンかデジカメで撮影して、データをUSBメモリに入れて形見にしよう。テキストにおこしたいが、それでは味気ないから画像でもいいかな。でも概要くらいは整理してコンテンツ管理は何を使おうか……。

 後で父に祖母の日記を目にしたいと申し出た。すると「日記?その話は(親族から弔問客への)アドリブじゃないのかな」。

 がーん。

 フィクションだったのか。肩を落とすと、「いやいや『毎日』がアドリブで、ちょっとしたものならあるのかも」と諸説入り交じった。

 いまのところ、日記の存在は謎のままである。

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